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記憶につながる?

坂部智子

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髪をバッサリ切った。
訪問先で、出迎えて下さった娘さんが、あらあら涼しそうで・・・とほめてくださるので照れて、「いや~、チョンチョンに切ってと頼んだらこうなりました」などと話していると、92歳のAさん(要介護5)が、声を出して笑いはった。
調子に乗って、「チョンチョンです~」とお顔を覗き込むと、またケラケラと笑った。
最近ではもうこんな風に声を出したり表情が和むことはめっきり減っていたそうで、
とても娘さんは喜んではった。
「チョンチョン」という音の響きに、何かなじみがあったのかもしれない。

認知症がすすんでいるウチの母(要介護5)も、比較的反応がいいのは、よく使い慣れた擬態語や擬音語だ。
歩くときの「ヨイヨイ」、歯磨きの時の「ピヨピヨ」(口を横に開けてもらうため)、
着替えるときの「チャッチャカチャツチャカ」(私の動作が遅いのをまぎらわせるため)、
食べる時の「モグモグ」などなど。
特に歩くときの「ヨイヨイ」は、手を引くと母も自分で「ヨーイヨイ」と言う。
(リズム感があまりよくないと、足元があぶなくなる)
一緒に「ヨイヨイ」と言いながら、手を上下にふり動かして歩く。

高齢者に対して、小さい子供にするように接してはイケマセン・・・とはよくいわれる。
人としての「尊敬」、「尊厳」etc・・・

そんな、形にだけこだわるようなコトではないと思う。
はた目には、認知症の母の手をひく娘・・・と映っても、
母の目に映るのは、もしかしたら自分が手を引いた子供(小さいころの兄や私)や孫、
あるいは、遠い記憶の、自分が親に手をひかれていた光景かもしれない。
「ヨイヨイ」という響きと、「手を引いて歩く」という動作が母の中ではちゃんとつながっていて、何か「シアワセナ記憶」と結びついて、笑顔になるのだろうなと思う。
なじんだ言葉、音の響き、しぐさ、ふれあい・・・子供じみてても、単純でも、そこに生まれるなんだかほんわかとしたモノが、瞬間的にその人の「人生」につながる。
奇跡のようなその瞬間をもっと大切にしてほしいと思うのだ。

ある施設、
ふらふらと出ていこうとする高齢男性に、スタッフが、
「いかがされましたか?」とたずねたけれど、反応なし。
向こうから、機転をきかせたスタッフが「○○さん、どこいくん??」と呼びかけたら、
「○×のとこまでちょっと・・・」と答えはった。
ちょっと行ってもらったら困るし、○×も定かかはわからないけれど、
この、ちゃんと話がかみ合った一瞬、ご本人も、周りも笑顔になっていた。

うれしくなった。

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