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遠い空の下

坂部智子

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テーマ:旅から

自転車に乗って、見上げた空が青いとうれしい。
あの青空を思いだす。
地面と空がつながっていたあのミシシッピの空。
自分でも不思議だけれど、懐かしくて、恋しいのだ。
そして、あの風景の中に居た人たちは、元気かな~なんて、思う。
知り合いでもなんでもないけど。
アメリカ ミシシッピ州のあちこちの街で出会った、見かけた人たち。
遠い空の下。
トイレを借りたお店で出会ったオジサン(60代ぐらい)に
どこから来たかときかれ(おそらく)、「ジャパン」と答えた。
発音が悪くて、理解されなかったのかは不明だけど、
「ジャパン」という国を知らないようで、「そこはアジアか?」などときかれた。
びっくりした。
いや、日本がそんな世界的に有名だといううぬぼれがあるわけではない。
けれど、第二次世界大戦では戦い、真珠湾や沖縄戦、原爆投下から今に至る様々な歴史的事実で絡まっているアメリカと日本だと思っていたから。
そんなことを知っていても知らなくても、
ただ、目の前で、トイレをガマンして困っている人間に、
自分の店のトイレを使えと案内してくれて、紙を差し出してくれたのだ。
うれしかった。
借りたトイレから出て、「サンキュー」と伝えた。
(精一杯の感謝を伝えたいけど、サンキューとしか言えない・・・)
ぶっきらぼうに片手をあげて、顔の端でニッと笑ってくれた。
本当にうれしかった。

短い旅で、アメリカを、ミシシッピをわかることなんてもちろんできない。
生まれ育った日本でも、知っている、わかっているなんて言えないのに。
見た目や言葉、生まれ、育ち、環境がちがう。
でも、そこを理解しないと分かり合えないというようなコトではないのだと思った。
誰でも、世界中の人と、こんなふうにささやかに交流することはできるんじゃないかな。

目の前の相手と、一対一なら自然にできることが、
国と国になると、どうしてややこしくなるのだろう・・・

日々のニュースが、
哀しい。

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