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隣が火事

坂部智子

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テーマ:エピソード集

先日訪問したAさん(86歳女性、要支援2、夫と二人暮らし)
2月末のある夜、玄関扉をガンガン叩かれて、びっくりして出たら、
「隣が火事で燃えとるのに、何しとるんじゃ~」と、消防の人に怒鳴られたらしい・・・
(ご主人がおっしゃった「セリフ」そのまんま書いてマス・・・)
(実際は、きちんと紳士的だったかもしれませんが・・・)

あわてて着の身着のままで飛び出したけど、Aさんは歩行がおぼつかないので、
ご主人が「歩行器がないと歩かれへん」・・・と言うと、
「こんだけホースやらあるとこで、どないして歩行器使うんじゃ~」とまた怒鳴られ・・・
背負ってもらって、なんとか移動。

しかし、あまりの寒さで震えがとまらない。二人とも、風邪の病み上がり。
みると、救急車がカラでとまっている。
火事の家の住人(一人暮らしのオジイサン)は、無事保護されており、一人でも歩けている。
「ちょっとあの車の中でも入れてもらえへんか・・・」と、聞くと、「!!!」また叱られ、
ようやく普通の消防署の車に乗せてもらって避難したらしい・・・

この火事、最初に気づいたのは西隣の家。
煙とにおいで気がつき、すぐに消防車を呼んだらしい。
火元の家では、オジイサンが一人で全く気付かずに3階で寝ていて、
駆け付けた消防の人に救出されたそう。

Aさんご夫婦は東隣。
二人とも安定剤をのんで寝るので、特に寝入ってすぐは爆睡中。
消防車や救急車のサイレンも全く気づかなかったという。
玄関のブザーも扉も、相当たたいて鳴らした・・・といわれたらしい。
たまたま風向きで、西隣の人が気づいてくれたからよかったけど、
逆風やったら、Aさん夫婦は気づけないので、エライコトになっていたかもしれない。
二人とも、「ほんま よかったわ~」とおっしゃる。

一人暮らしでも、夫婦二人でも、(老人世帯だけでもないけれど)
Aさんたちのように安定剤やら睡眠剤など、薬を飲んで眠るケースは多い。
当然気が付くであろう・・・と思われるような事態(火事でも災害でも犯罪でも)に
対応できないのだということを、生々しく聞かせてもらった。

「運がよかっただけ」でしか、助からないのだろうか・・・

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