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マンションの防火区画とトイレ

森本薫樹

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今日はマンションでもよくあるトイレのリフォームについて、防火区画の視点から見てみます。
トイレのリフォームといえば便器の交換がメインですが、マンションの間取りによっては注意が必要です。


こちらは築年数の経過したマンションに多い間取りですが、トイレの裏側が「P.S」になっています。

これはパイプスペースの略で、この中にメインの給水や排水の竪管が通っています。
ここは火災時に住戸や上階への延焼を防ぐため、耐火構造の壁によって防火区画されています。


トイレの排水管をP.S内の竪排水管に接続するには、当然この防火区画を貫通することになります。

そして配管が防火区画を貫通する場合には、防火区画の両側1mは不燃材料を用いなければいけません。
ということはP.Sとトイレが背中合わせになっているケースでは、便器も1mの範囲に入ってしまいます。

そうなると便器も不燃材で造られたものでなければいけないのか…?


そこで最近シェアを伸ばしているパナソニック製のトイレ「アラウーノ」について。

この製品はTOTOやINAXのような昔からある「陶器」ではなく、「有機ガラス系素材」で出来ています。
カタログには「設置の場合は消防法関連法令及び告示等に基づき設置してください」とだけ書かれています。

「ガラス」は消防法上の特定不燃材料には該当しないようですので、厳密にはクリアできていません。


この点について他社の対応は…

INAXのマンションリフォーム用のトイレカタログには「耐火仕様」の排水ソケットなるものが用意されており、「これを使用すれば防火区画貫通部の周囲1m以内に便器の設置が可能」と記されています。


TOTOからは「便器を防火区画貫通部より1m以内に設置される場合は、事前に所轄消防署にご確認ください」というただし書き付きで、防火区画対応の「大便器背面カバー」という部品が販売されています。

ところが肝心のパナソニックのカタログには防火区画貫通に対応した部品は掲載されていません。
ということはやはりこのケースではパナソニックのトイレは採用できないのか…?


調べてみると…貫通部に「消防共住区画評定工法」を使用すれば、便器は不燃材でなくても良いとのこと。
セキスイの耐火VPパイプなど、いくつかのメーカーから認定工法の製品が出ています。

この材料で貫通部を処理すればパナソニックのトイレは使えるのか…?

しかし貫通部の外(P.S内)は共用部にあたりますので、勝手に配管を取り替えることはできません。


しかもリフォームの場合、水廻りの配置を変えない限り基本的には新築時の間取りのままです。
ということは最初に消防法はクリアしている筈なので、やはり便器そのものと接続部の問題では?

念のため消防署に確認してみると、「共同住宅の消防特例基準の有無や接続部の仕様などマンション毎に確認が必要ですが、該当する場合は不燃材でない機器の使用は認められないことがあります」とのこと。

う~ん… やっぱりそうか…

所有者の委任状があれば消防署でも調べることができるそうですので、機器の選定にこだわる場合は事前に確認した方が良いようです。

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森本薫樹
専門家

森本薫樹(一級建築士)

株式会社リフォーム計画室

間取りや内装リフォームの他、住まいの耐震性や耐久性、断熱性など建物の基本的な性能を高めることで耐久年数を上げたり資産価値向上にも尽力。既存住宅の活用していくために依頼主の声から問題の解決を目指します。

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