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「事例から学ぶ 意匠制度活用ガイド」(3)について

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こんにちは。弁理士の福島です。

特許庁で公開されている「事例から学ぶ 意匠制度活用ガイド」(3)について、お話したいと思います。

https://www.jpo.go.jp/system/design/gaiyo/info/document/2907_jirei_katsuyou/jirei_katsuyou.pdf

三つ目の事例は、TOA株式会社さんになります。

ここの会社さんは、「マイクロホンやアンプ、スピーカーといった音響機器、拡声器などの拡声放送機器の製造・販売を手掛けている専門メーカー」ですが、
この記事では、BtoBからBtoCへの変更に伴って、意匠戦略が組み立てられたように見えます。

この記事では、「TOAは、もともとB toB製品を中心に扱ってきたため、デザイナーを積極的に活用する機会は限られていましたが、当製品を社外と連携して開発したことを契機に、デザイン開発への考えが大きく変化しました。連携先であるスポーツ用品メーカーからの要望もあり、製品のユーザビリティを最も重視し、体へのフィット感、スピーカー放音面の位置、両利き腕に対応した操作性などを追求したのです。これは従来のB toB製品では想定していなかった開発方針でした。TOAはこれ以降、ユーザーにとって魅力的なデザインの開発に注力するようになりました。」とあります。

元々、BtoB製品は、お客さんが法人であるため、機能重視の面がありますが、お客さんが一般消費者のBtoC製品では、機能面というよりも、使いやすさとかファッショナブル等のデザイン面が重視されます。今回のケースも、そのような特徴がビジネスに出てきたように思います。

この記事では、「TOAでは、意匠出願の基本方針として、製品を販売する国、または販売する可能性がある国では、出願を検討することにしています。「VOICEWALKER」はB toC製品であり、当初から中国での販売を視野に入れていたため、中国においても日本への出願に基づき優先権主張出願し、意匠権を取得することにしました。」とあります。

BtoC製品の特徴のデザイン面を意匠で保護していくという点では、他のビジネスでも活用出来る知財戦略と思います。
ここで指摘のあるように、全ての国に対して意匠出願を申請すれば、膨大な金額が掛かります。
そのため、販売国をターゲットにして、費用対効果が出るように意匠出願を進めていることが分かります。

この記事では、「訴訟の準備として、まず模倣業者を特定し、その製造・販売方法を把握して、対象となる模倣品を入手しました。このとき、特定した模倣業者に対して提訴前の警告はあえてしませんでした。警告をして模倣業者に気付かれると、模倣業者は会社そのものを放棄して逃げる恐れがあるため、全てを水面下で
進めていったのです。」とあります。

一般的に、模倣者が分かった場合は、弁護士を通じて、模倣者に警告を行い、模倣者の対応に応じて、訴訟へ踏み切るか検討します。
模倣者の属性が分からない、模倣品が確実に権利侵害かどうか分からないなど、不確かな情報の場合に、警告レベルで進めることが多いです。
今回のケースでは、警告を行わないということは、模倣者の情報がある程度確かなものがあったと考えることも出来ます。
そういった意味で、相手の情報が確実であると、有効な次の手が打ち易いということは実務的にあります。

意匠は、特許や実用新案と比べて権利侵害かどうかが分かりやすいので、
そういった意味では、保険代わりに意匠権を取得してもどうかと思います。

----アシスタントの質問----

警告をあえてせず、水面下で訴訟準備をするという判断に驚きました。
放っておけば、被害が拡大する恐れもあり、日ごろの準備や対策が重要だということが
分かりました。

このケースの場合、優先権を主張したとありますが、優先権主張で注意すべき点はありますか。

模倣品を手に入れて準備を進めたようですが、模倣品を手に入れることが難しい場合、
どのように証拠集めをするのでしょうか。

----私の回答----

日本で意匠出願した後に、海外へ意匠出願する場合、優先権主張を行うことで、
海外の意匠出願の審査を日本の意匠出願日を基準に行わせることが出来ます。
その場合、日本の意匠出願日よりも後に公開されたデザインなどで、海外の意匠出願が拒絶になることを回避でき、
確実な権利化を図ることが出来ます。

ただ、意匠の優先権主要の期間は、日本の意匠出願日から6カ月以内にする必要があるので、
時期的な要件は注意が必要です。

模倣品や模倣者の証拠収集は、自身で情報収集したり、調査会社に依頼したりすることが一般的です。
上述のように、模倣品や模倣者の情報は、有効な攻撃が出来るかどうかを左右する要素がありますので、
時間を掛けて行う必要はあるでしょうね。

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