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失敗したときはすぐにあやまる

岩崎吉男

岩崎吉男

テーマ:こころの栄養

失敗したときはすぐにあやまる

 ある建設会社に新米現場責任者の男がいました。
 その現場がある地区には自治会がありました。

 そして、そこの自治会長はとても厳しく、その地区内で工事を
 するには、絶対に地元説明会が必要でした。

 男は、そのことを知っていましたが、小さな工事だから地元説
 明会は不要だと勝手に判断して、工事に着手しました。
 すると、工事開始後2日ほどたって、その自治会長から男の会社
 に電話がありました。

 電話の内容は
 「なぜ、説明もなしに工事をやっているのか。説明に来い」
 ということでした。

 そのとき、男は自分に非があることは分かっていましたので、
 「すぐに工事を中止します。」
  といってしまいました。

 すると、これを聞いた自治会長は激怒しました。
 「すぐに中止できるような工事やったら、止めてしまえ。今後一
 切、工事はさせん」
 「もう、お前の話は聞かん」
 自治会長は、そういって一方的に電話を切ってしまったのです。
 
 その様子を心配していた男の上司が、近寄ってきて理由を聞きました。
 男は
 「 「今後一切工事をさせん。お前では話にならん」といわれて
 しまいました」
  
 と上司に報告しました。
 それを聞いた上司はすぐに、その自治会長のところへ飛んで
 いきました。

 しかし、男に結果は知らされませんでした。

 その日の終業後、男は親子ほど年の離れた先輩と一杯ひっかけに行
 きました。
 酔いがまわってきた頃、いつもは朗らかな先輩は、厳しい口調で男
 にいいました。
 
 「なぜ、お前では話にならんといわれたからと、課長にふったんや。
 自分の責任を放棄したらあかん。あんたをみそこなった」
 
 その翌日は土曜日で男の会社は休みでした。
 
 男は、どうしても昨日のことが、気になってしかたがありません。
 月曜日に出社してから、自治会長に謝りにいけばいいのですが、
 それまでは、ずっと気になるままだからです。

 そこで、男は今から謝りにいこうと決めました。
 途中日本酒を1本買って、自治会長宅に向かいました。
 男が玄関のベルを押して、緊張して待っていると、中から自治会長
 が現れました。

 男は、会長の姿を見るなり
 「申し訳ありませんでした」
 と深々と頭を下げて謝まりました。

 しばらくして男が顔を上げると、会長は、ニッコリとしていいま
 した。
「分かってくれたか」
 
 そして、
「君では相手にならんといったけど、もし本当に君がこのまま謝
 りにこなければ、工事を中止させるつもりやったんや」
「今日は、休みの日やのにご苦労さんやったな。これで君の人間
 性が分かった。もう説明会はいらんから。月曜から工事を再開し
 てええで」
「業者も泣いとるやろ」

 男は、その場で深々と頭を下げました。
 
 
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 失敗したときはすぐにあやまる
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 どうも、人間の弱さで失敗しとときは他人のせいにして逃げたく
 なったり、謝罪を先延ばしにしたくなったりします。

 でも、実際には先延ばしにしても、いつもそのことが気になって
 落ち着きません。
それに、相手にしてみればすぐに謝罪に来ないということは、軽
 く受けとめられている。誠意がない。と取ります。
 この感情は、遅くなれば遅くなるほど、大きくなります。
 そしてついに「今頃何しに来たんや。」
 と相手にされなくなります。

 このことは、私が今更いうまでもなく、皆さんもご存知なのです
 が、実行するのが難しいのです。
 
 でも、間違いなく、早く謝罪にいって悪いことはありません。
 勇気を持って、すぐにあやまりましょう。
 そして、すっきりとした気分で一杯やる。
 これが最高です。

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岩崎吉男
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岩崎吉男(弁理士)

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