令和7年明けましておめでとうございます。
とことん相手の話を聞き続ける
その男は、交通機関の現場で管理職をしていました。
ある夏の日、部下が乗客らしき中年の男を連れて事務所に入ってきま
した。
中年の男は部屋に入ってくるなり、大きな声で怒鳴り散らしました。
その声にはその場に居合わせた女性の事務員が萎縮してしまうほど迫力がありました。
管理職の男も一緒に同席して、応接セットで話を伺うことになりました。
「車内の冷房が効いていない」「何回もお前らの会社に忠告しとる
のに、一向に改善されへんやないか」
中年の男は、たいそう立腹の様子で一気にまくしたてました。
「他のお客様もいらっしゃることなので、お客さまお一人の
ご意見だけを聞くことはできません」
部下が、もっともなことを説明しました。
その言葉が火に油を注ぐ結果になりました。
中年の男はますますエスカレートして、冷房の他にもいたらぬ点を
挙げて、さらに大声でわめき散らしました。
管理職の男は、感情は言葉では抑えられないことに気付きました。
そこで、
管理職の男とその部下は、ただひたすら中年男のいうことを聞くこ
とに徹しました。
時々、相槌をうちながら「そうですか。申し訳ございません」
というだけで、一切何もいいませんでした。
中年の男は、それから1時間くらい一人で話し続けましたが、話した
いことを全て話してしまったようで、だんだん、声も小さくなって
きました。
そして、ついに
「俺のいうことが分かってくれたんか、あんたらは会社員やから自分
一人の意見で、そう簡単には変えれんわな」
「まあ、できるときでええからやってえな」
といって席を立ちました。
おまけに、部屋を出ていくときに
「ありがとう」
そう言いながら管理職の男とその部下に向かって手をあげました。
──────────────────────────────
とことん相手の話を聞き続ける
──────────────────────────────
何か気にいらないことがあって、苦情をいってくる相手に対して、同
じように反論しても、まったく相手は聞き入れてくれません。
それどころか、もっと興奮します。
自分が興奮しているときのことを思い出してください。
これは、理屈ではなく、感情の問題だからです。
相手は、自分の思いが伝わらないことに、怒りを感じているのです。
ひょっとして、結果はどうでもいいかも知れないのです。
ですから、こんなときには、反論せずにただひたすら相手の言うこと
を聞くことです。
決して、話の時間が長いとか、面倒くさいと思ってはなりません。
その心は、相手に伝わります。
ですから、真剣にそして素直に相手のいうことを聞くようにしてくだ
さい。
必ず、最初よりはいい結果がでます。
だって、相手は少なくとも自分を受け入れてもらったと感じることが
できるのですから。



