他人はコントールできないが、自分はコントールできる
一人の30過ぎのサラリーマンがいました。
その男は、幸いにも大学をでていましたので、若輩の身でありなが
ら、現場担当の係長の身分でした。
男の担当する現場には、定年前の熟練工が数人いました。
あるとき、男はその現場の新入社員と話す機会がありました。
いろいろと話をしていると、
「先輩が仕事を教えてくれない」という事実が分かりました。
そこで、男は現場に出向き、熟練の先輩に「後輩に仕事を教えてほし
い」と頼みこみました。
すると、先輩から返ってきた答えは
「何で、俺が苦労して得たものを教えなあかんのや」
でした。
よくあることです。
男はそのとき熟練の先輩にいいました。
「先輩が努力を続ける限り、教えたからといって追い越されることは
ないはずです。スタート地点が違うのですから」
「まさか先輩は、今のところに立ち止まっているつもりではないです
よね」
「どうか、若者を育ててやってください」
と。
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自分がこれ以上伸びないと思うから、人に教えない
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人に教えるということは、自分を伸ばすためにもいいことなのです。
でも、自分がこれ以上伸びないと思っている人は、他人に仕事を教
えません。
教えると、自分が追い越されると思うからです。
他人に物事を教えようとすると、一度自分の知っていることをまと
め直さなければなりません。
全て完全に理解できてこそ、人に教えることができるからです。
「君の得意分野だから皆に教えてやってほしい」と講義を頼まれた
ことのある人は分かると思いますが、必ず自分の知識を再確認して、
完全に理解できていないことは、もう一度勉強します。
このことだけでも、以前より伸びているのです。
そして、相手は今から、教えられたことを吸収していくのです。
努力を続ける限り、自分はもっと先に進むのですから、追い越され
ることはありません。
おまけに、若い人の役にたちます。
でも、現状で満足している人はやがて、追い越されます。
ですからそのような人は、他人に教えません。
人に教えるということは、自分を伸ばすエネルギーなのです。