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外国人受け入れの先にある選択 ― 育成就労・特定技能が日本に問いかけるもの(第3回/全3回)

平山裕康

平山裕康

テーマ:多文化共生

育成就労と特定技能は、日本が「移民国家ではない」という立場を維持しながら、外国人材を受け入れるために設計された制度です。人手不足が深刻化する中、これらの制度は多くの現場を支えてきました。一方で、制度が広がるほど、日本社会が抱える課題もより鮮明になってきています。

それは、日本は外国人をどこまで受け入れ、どこまで責任を持つ社会なのか、という問いです。

現在の制度は、定住を原則として想定していません。家族帯同は限定的で、社会の基本構造は大きく変えない。その一方で、育成就労から特定技能へと移行し、結果として長期間日本で生活する外国人が増えているのも事実です。制度上の前提と、現場の実態との間にズレが生じています。

重要なのは、「移民国家になるか、ならないか」という極端な議論ではありません。日本にとって現実的なのは、非移民国家という枠組みを維持しつつ、受け入れた外国人に対してどこまで社会的責任を引き受けるのかを明確にすることです。

例えば、日本語教育や生活支援です。現在、これらの多くは受け入れ企業や教育機関、地域の努力に委ねられています。しかし、長期滞在が常態化しつつある以上、最低限の共通ルールや支援の枠組みを制度として位置づける必要があるのではないでしょうか。

また、すべての外国人が日本に定住する必要はありません。むしろ、日本で身につけた技能や日本語能力を、母国や第三国で生かす「循環型人材モデル」を本気で構築することも、日本にとって重要な選択肢です。そのためには、日本での就労経験が正当に評価されるキャリアの出口設計が欠かせません。

受け入れ企業の姿勢も問われます。育成就労や特定技能は、安価な労働力を確保するための制度ではありません。本来は、人材を育て、共に働き、一定の責任を分かち合う仕組みです。短期的なコストだけを基準にすれば、制度そのものへの信頼を損なうことになりかねません。

日本は、ヨーロッパ諸国のような移民国家になる必要はありません。しかし、「社会は変えず、人手だけ必要だ」という姿勢を続けることも、もはや現実的ではありません。

外国人受け入れ政策とは、人数や制度の問題ではなく、責任の範囲をどう定義するかという問題です。
育成就労と特定技能の先にあるのは、「移民か否か」という抽象論ではありません。日本がどのような関係性で外国人と向き合い、どこまで関わる社会でありたいのかという、極めて実務的で現実的な選択なのです。

その選択を先送りすることこそが、最大のリスクではないでしょうか。

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