特定技能制度と育成就労制度 ― 最新動向まとめ
外国人の新しい就労制度である「育成就労」において、宿泊や物流分野では1年で転職可能に、外食分野では2年で転職可能となる見通しであることが報じられました。これまでの技能実習制度とは異なり、一定期間が過ぎればより自由に職場を変えられる仕組みが導入されます。これは「人材の囲い込み」から「人材の流動性」を重視する方向への転換を意味しています。
しかし、一部の経営者からは「せっかく育てても転職されてしまうのでは意味がない」「これでは事業の安定が損なわれる」といった懸念の声が上がっています。技能実習制度下では転職がほぼ不可能だったため、労働力を確保する側にとっては安定的に働き手を確保できる仕組みでした。その感覚からすると、転職の自由度が高まることは「制度が使いにくくなる」と映るのかもしれません。
しかし、これは本来「働き手の人権」を無視した発想ではないでしょうか。日本人であれば自由に転職できるのに、外国人にだけ「我慢して同じ職場にいなければならない」と強いるのは、平等な取り扱いとは言えません。むしろ健全な労働市場においては、職場を変える自由が担保されることで、労働条件や職場環境の改善が進むはずです。
大切なのは、外国人が「辞められないから残る」仕組みに依存するのではなく、「ここで働き続けたい」と思ってもらえる職場をつくることです。
- 公正な給与や待遇
- 安全で健康的な労働環境
- キャリアアップや学びの機会
- 差別や排除のない人間関係
こうした取り組みこそが、多文化共生社会にふさわしい職場づくりの本質です。
外国人材はこれからの日本社会に欠かせない存在です。だからこそ「辞められない仕組み」で縛り付ける発想から、「働きやすく、長く続けたい」と思ってもらえる職場づくりへの転換こそが、企業の生き残り戦略につながります。
多文化共生やグローバル化を掲げるなら、まずは足元の職場から。「選ばれる職場」づくりこそが、これからの日本に必要な姿勢なのではないでしょうか。



