空き家のままの実家を放置するリスク
家を相続したものの、そこに住むことはできず、空き家になっている。その処理をどうすればいいか、現在の「空き家問題」も含めお話ししたいとおもいます。
家を相続したけれど・・・
Aさんは1年前、故郷の実家を相続しました。亡くなったお父さんが一人で暮らしていた家です。しかし、Aさんは故郷を離れており、現在、家族と住んでいる家、仕事があります。そのため、実家は空き家のままになっています。
「いつまでも空き家のままにしておけない」と思いながら、どうすればいいのか具体的な結論が出ていません。
総務省統計局は5年ごとに「住宅・土地統計調査」を行っています。平成25年の調査では日本の空き家数は820万戸、5年前にくらべ63万戸増加し、空き家率は13.5%と過去最高を記録しました。
空き家が増えている原因としては、人口の減少や働き口が都市部に集中していることなどがあげられますが、空き家になっても家が解体されないままになっていることも原因の一つです。
国土交通省の調査では、空き家を所有者している人の7割が、何もせず放置しているという結果が出ています。
空き家がそのまま放置される理由はさまざまです。
Aさんにも両親と過ごした家には懐かしい思い出があり、その家を壊したくない、という想いがあります。家の売却や解体に踏む切れない理由の一つです。
一方、経済的な理由もあります。
家を解体するには解体費用が必要です。しかし、家を解体し土地だけにすると固定資産税が最大で4.2倍に増えてしまいます。お金を払って家を解体したのに税金が増える、こういったことが背景にあるため、空き家のまま放置されてしまうことが多いのです。
Aさんが悩んでいるのもまさにこの点です。
相続不動産を売却するメリット
しかし、Aさんは相続した家を売ることにしました。
平成28年4月に施行された「空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例」を知ったからです。
譲渡所得とは、家や土地を売って得た所得(売却益)のことで、その所得には譲渡所得税がかかります。
この税金のために、不動産の売却が進まないという状況を懸念して、国は「3000万円の特別控除」という特例を設けていました。この特例が使えれば、家の売却金が3000万円以内であれば課税されることがありません。
ただ、これまでこの特例には「所有者がそこに住んでいた家や土地を売る場合」という条件がついていました。Aさんが所有している空き家にはこの特例は適用されなかったのです。
しかし、増加する空き家問題への対処として、空き家であっても適用条件を満たせば「3000万円の特別控除」を受けられるようになりました。
この特別控除の適用条件はさまざまありますが、主なものを簡単に示せば、
・1981年(昭和56年)5月31日以前に建築された家(旧耐震基準で建てられた家をさします)
・相続する前、亡くなった人が一人で住んでいた家
・相続した時から譲渡(売却)まで賃貸などに使われていないこと
・新耐震基準に適合する家にして売却するか、家を解体して土地だけ売却する場合
・譲渡(売却)期間は2016年(平成28年)4月1日から2019年(平成31年)12月31日まで
・相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までの間に譲渡(売却)したもの
この条件のなかの「新耐震基準に適合する家にして売却するか、家を解体して土地だけ売却する場合」という項目を満たすには、家の改修や解体が必要になり費用がかかります。
しかし、この特例は「空き家の発生を抑制するための措置」ですから、改修・解体に国や自治体の助成金を利用できる場合もあります。
空き家を売却したほうがいい良いケース
空き家を持っていることは、デメリットが多いと言えます。
「休暇の時に使えるセカンドハウスにしよう」と考える方もいらっしゃるかもしれませんが、家は何もせずに放置しておけば傷んでしまいます。家には定期的なメンテナンスが必要で、その費用は高くうえ、固定資産税もかかります。
空き家を売却したほうが良いケースとして、相続トラブルの回避ということがあります。
たとえば、Aさんに兄弟があり、相続した家は「兄弟みんなのもの」として、共有名義にしたとしましょう。これがトラブルを招くもとになるのです。一時は相続人全員が納得したとしても、遺産相続はいっときの感情ですむものではありません。時が経つにつれ何かしら問題が生じ、争いになることが予測されます。誰も利用しない空き家であれば売却し、その代金を相続人で分けるのも良い方法のひとつです。
また、空き家の増加によって「3000万円の特別控除」などの措置がとられる一方、倒壊の危険性や衛生上の問題がある空き家に対しては、各自治体が所有者に対して罰則を設けています。この点も考えれば、誰も住む予定がない家を相続した場合は、売却を考えたほうがいいと言えるでしょう。