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相続登記の申請義務化について-part 4

宅間孝

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テーマ:不動産登記

今回のポイント:2024年4月1日に相続登記の申請義務化がスタートしました。相続人申告登記は、法律が定める期限までに相続登記の申請をすることがむずかしい場合に、簡易に相続登記の申請義務を履行することができるようにする仕組みとして設けられました。

2024年4月1日から相続登記が義務化されました。2024年3月31日以前に開始した相続であっても、相続登記がされていない不動産は義務化の対象です。もっとも、相続人間に争いがあるなどの理由で遺産分割がまとまりそうにない場合や、登記上の所有者の相続人が非常に多いため相続登記に必要な戸籍関係書類の収集に時間を要する場合など、事情により期限内に相続登記をすることが困難な場合もありえます。このような場合でも簡易に義務を履行していただけるよう設けられた制度が「相続人申告登記」です。この登記は権利変動について対抗力を生じさせる終局的な登記とは異なります。

相続人申告登記には次のような特徴があります。

1.自らが登記上の所有者の相続人であること等を期限内に申し出ることで、相続登記の義務を履行したことになります。具体的には、所定の期限内に相続登記を申請しなかった場合の過料のペナルティを免れることができます。
終局的な相続手続を完了していなくても、申告をした相続人の住所と氏名が登記されることで、所有者不明状態を回避することができたと考えられます。
2.特定の相続人が単独で申出をすることができます。他の相続人の分も含めた代理申出をすることも可能です。
3.法定相続人全員を把握して、その法定相続分の割合を確定させる必要はありません。このため、必要な戸籍は申出人が登記上の所有者の相続人の一人であることがわかるものを添付することで足ります。
4.この登記には登録免許税がかかりません。
5.「かんたん登記申請」という、Web ブラウザ上での手続用ホームページから申請を行うことができます。
https://www.touki-kyoutaku-online.moj.go.jp/mtouki/

ただし、相続人申告登記は以下の点にも注意する必要があります。
1.これにより権利関係を公示するものではないため、相続した不動産を売却したり、抵当権の設定をしたりするような場合には、別途相続登記を行う必要があります。
2.遺産分割に基づく相続登記の義務の履行に関する効果を生じさせるものではありません。
このため、直ちに遺産分割や相続登記をすることが困難な場合などに、相続登記の義務を果たすための利用が想定されます。

相続人申告登記と法定単純承認との関係

民法921条1号は「相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき」は相続を単純承認したものとみなすとしています。「処分」には法律上の処分だけでなく、事実上の処分も含まれると解されていますが、相続人申告登記をしたことは法定単純承認に該当しないものと解されています。この登記は所有権の登記名義人に相続が発生したことと、自らが法定相続人である旨を申し出てこれを公示する報告的な登記にとどまるものであることが理由です。
相続人申告登記に関する法務省民事局の通達においても、相続人申告名義人が相続の放棄をした場合は相続人申告登記の抹消の申出をすることができるものとされています。


相続登記手続につきましては司法書士にご相談をお願いいたします。

<参考リンク>
法務省ホームページ内「相続人申告登記について」
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00602.html
相続人申告登記手続のご案内(登記手続ハンドブック)
https://www.moj.go.jp/content/001424097.pdf

<参考文献>
「Q&A 令和3年民法・不動産登記法 改正の要点と実務への影響」日本加除出版

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宅間孝
専門家

宅間孝(司法書士)

宅間孝司法書士事務所

身内に法律家がいるように、不動産や会社の登記をはじめ、相続、遺言、成年後見など幅広い司法書士業務に取り組み、空き家対策にも精通しているので、ほんの些細なことでも気軽にご相談ください。

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