相続登記の申請義務化について-part 3
今回のポイント:正当な理由がないのに相続登記の申請義務を怠ったときは10万円以下の過料の適用対象となります。ただし、過料の制裁による取り扱いがなされる場面はかなり限定的になることが想定されています。とはいえ、これを理由に相続登記申請手続を先送りすることはお勧めしません。
この「過料」については、ややもすると「罰金」と称されがちです。公のペナルティという点は同じですが、相続登記の申請義務を怠ったことが罪になるわけではありませんので、罰金という言い方は正しくありません。
過料が科される場合の流れは次のとおりです
登記官が義務違反を確認した場合、義務違反者に登記をするよう催告書を送付します。
催告書に記載された期限内に登記がされない場合、登記官は裁判所に対してその申請義務違反を通知します。ただし、催告を受けた相続人から説明を受けて、登記申請を行わないことにつき、登記官において正当な理由があると認めた場合にはこの通知は行いません。
上記の通知を受けた裁判所において要件に該当するか否かを判断し、過料を科する旨の裁判が行われます。
「正当な理由」とは
相続登記の義務の履行期間内において以下の事情が認められる場合には、一般に正当な理由があると認められます。
(1)相続登記の義務にかかる相続について、相続人が極めて多数に上り、かつ、戸籍関係書類等の収集や他の相続人の把握等に多くの時間を要する場合。
(2)相続登記の義務にかかる相続について、遺言の有効性や遺産の範囲等が相続人等の間で争われているために相続不動産の帰属主体が明らかにならない場合。
(3)相続登記の義務を負う者自身に重病その他これに準ずる事情がある場合。
(4)相続登記の義務を負う者がDV防止法(配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律)第1条第2項に規定する被害者その他これに準ずる者であり、その生命・心身に危害が及ぶおそれがある状態にあって避難を余儀なくされている場合。
(5)相続登記の義務を負う者が経済的に困窮しているために、登記の申請を行うために要する費用を負担する能力がない場合。
これらに該当しない場合においても、個別の事案における具体的な事情に応じ、登記をしないことについて理由があり、その理由に正当性が認められる場合には「正当な理由」があると認められます。
大事なことは
法律の規定により“3年以内に登記をすればよい”と考えたり、“過料の通知が来なければOK”と考えたりするのではなく、登記ができる状態のときに早めに手続をすることが必要です。
相続登記手続につきましては司法書士にご相談ください。
<参考リンク>
法務省ホームページ内
「相続登記の申請義務化について」