本当に預けて安心?法務局の自筆証書遺言保管制度-part 4
今回のポイント:2020年4月に施行された現在の民法では、賃借物の一部が使用収益できなくなった場合に、それが賃借人の責任によらないときは、使用収益ができなくなった部分の割合に応じて賃料が当然に減額されます。
公益財団法人日本賃貸住宅管理協会が、2020年4月1日に施行された新しい民法第611条(賃借物の一部滅失等による賃料の減額等)に対応するため、「貸室・設備等の不具合による賃料減額ガイドライン」を作成しています。
1.背景
昨今の新型コロナウイルス感染拡大や、それに端を発した半導体の供給不足などの影響により、故障した給湯器の交換や修理に長い時間がかかることがあるようです。住宅の場合は自宅でお湯が使えない、お風呂に入ることができないなど、日常生活にも少なからず支障が生じるでしょう。その住宅が賃貸物件の場合に、こうした不具合がありながら従来どおりの賃料を支払わなければならないのは不合理といえます。
従来(2020年3月まで)の民法第611条では、賃料の減額が認められるのは「賃借物の一部が賃借人の過失によらないで滅失したとき」と規定されていました。しかし、現行法では「その他の事由」が加わり一部滅失に限定されません、さらには、賃料減額のために賃借人による請求を必要としない点が実質的な変更といえます。
とはいえ、どの程度賃料が減額されるかについて、現行民法は明確な基準を定めていません。この点について適切に対処していくことが求められることから、公益財団法人日本賃貸住宅管理協会が減額割合の目安となる「貸室・設備等の不具合による賃料減額ガイドライン」を作成しています。
https://www.jpm.jp/pdf/gengakuguide2.3.19.pdf
2.ガイドラインの使用方法については
こちらのページもご参照ください。
https://www.jpm.jp/topics/2553
ここでは、月額賃料100,000円の物件でガスが6日間使えなかった場合の計算例が示されています
⇒月額賃料100,000 円×賃料減額割合10%×(6日-免責日数3日)/月30日
=1,000円の賃料減額(1日あたり約333円)
※減額の算出方法は日割り計算で行います。
※免責日数とは、物理的に代替物の準備や業務の準備にかかる時間を一般的に算出して、賃料減額割合の計算日数に含まない日数を指します。
3.主な注意事項
(1)台風や震災等の天災で賃貸人・賃借人の双方に責任がない場合も、賃料の減額が認められます。
(2)電気・ガス・水道等の停止が貸室設備の不具合でなく、供給元に原因がある場合は対象外です。
(3)建物が全壊するなどの理由により使用収益ができなくなった場合は、賃貸借契約が当然に終了しますので、対象外です。
4.このガイドラインは目安を示しています
このため、必ず使用しなくてはならないものではありませんが、ご参考にされてはいかがでしょうか。
賃貸住宅に関するご相談も承りますので、お気軽にご連絡をお願いいたします。
<参考文献>
『条文からわかる民法改正の要点と企業法務への影響』 中央経済社発行