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本当に預けて安心?法務局の自筆証書遺言保管制度-part 3

宅間孝

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ポイントその3:自筆証書遺言は、自書能力さえ備わっていれば遺言者にとって手軽かつ自由度の高い制度です。しかし、その内容を実現するためのコストは、多くが相続財産を譲り受ける側の負担となります。例えるならば、“遺産を着払いで贈る”ようなものといえます。

今回は、遺言者がお亡くなりになった後の手続についてご紹介します

法務局に遺言書が保管されているか確認

死亡した方の遺言書が法務局(遺言書保管所)に保管されているか否かの確認は、「遺言書保管事実証明書」という書面の交付を請求することによって行うことができます。この請求は、遺言者の死亡後であれば誰でも行うことができます。また、遺言書保管所となっている法務局であれば、どの法務局に対しても請求できます。この証明書の交付を受けることによって明らかになるのは、請求者が遺言者の相続人等として関係する遺言書が法務局に保管されているか否かという内容です。

自身が相続人等として関係する遺言書が保管されている場合は

遺言者の死亡後において、遺言者の相続人等の一定の関係者(以下、「関係相続人等」といいます)は、法務局に保管されている遺言書について「遺言書情報証明書」の交付を請求して、遺言書の内容を確認することができます。「遺言書情報証明書」には、以下の内容が記載されています。
(1)遺言書の画像情報
(2)遺言書の作成年月日と遺言者の氏名、生年月日、住所、本籍
(3)受遺者、遺言執行者がいるときはその氏名、住所
(4)遺言書の保管を開始した年月日と遺言書保管所の名称および保管番号
また、関係相続人等は、以下の方法でその遺言書を閲覧することもできます。
(1)遺言書が保管されている法務局で原本を閲覧する(持ち出すことはできません)
(2)全国の遺言書保管所となっている法務局で遺言書保管ファイルの記録を画面上で閲覧する

家庭裁判所の検認が不要とはいえ、相続人には負担が

自筆証書遺言保管制度(以下、「本制度」といいます)を利用して法務局に保管されている遺言書については、保管開始以降に偽造や変造等のおそれがなくその保管が確実なため、検認手続が不要とされています。
ただし、「遺言書情報証明書」の交付請求をするには、さまざまな書類が必要です。法務省令で詳細に定められていますが、要は「被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍を含む、相続人全員の住所と氏名がわかる戸籍や除籍の謄本と住民票の写しが必要」ということになります。これらの書類は、検認を申し立てる場合の添付書類でもありますので、本制度を利用した場合でも、関係相続人等の負担が大幅に軽減されるとは言い難いと思います(戸籍等の提出先が裁判所から法務局に変わっただけといえるかもしれません)。
兄弟姉妹が相続人で代襲相続が発生している場合などは、必要な戸籍謄本等が多くなりがちですので、関係相続人等の負担もそれだけ多くなることが見込まれます。

相続人の負担を考慮することも思いやりでは?

これまでご説明したとおり、自筆証書遺言は作成時に特別の費用がかからないこともあり、遺言者が手軽に作成することができます。しかし、その遺言内容を実現するためのコストは、その多くが相続人や受遺者といった相続財産を譲り受ける側の負担となる点に注意が必要です。この点は、本制度を利用した場合でも大きく変わるものではないと考えます。
もちろん、相続による不動産所有権移転等登記のように,公正証書遺言による場合でも相続人が費用を負担すべき手続があることは事実です。それでも、相続人の負担を考慮することも、思いやりとしては大切な要素といえるのではないでしょうか。

次回は総まとめとして、公正証書遺言との比較についてご紹介する予定です。


<参考文献等>
『一問一答 新しい相続法[第2版]-平成30年民法等(相続法)改正、遺言書保管法の解説』 商事法務発行

本制度に関する法務省のパンフレット 
 http://www.moj.go.jp/content/001322593.pdf

<参考リンク>
法務省ホームページ内 法務局における自筆証書遺言書保管制度について
 http://www.moj.go.jp/MINJI/minji03_00051.html

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宅間孝
専門家

宅間孝(司法書士)

宅間孝司法書士事務所

身内に法律家がいるように、不動産や会社の登記をはじめ、相続、遺言、成年後見など幅広い司法書士業務に取り組み、空き家対策にも精通しているので、ほんの些細なことでも気軽にご相談ください。

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