多彩な表現で「書くこと」の豊かさを伝えるカリグラフィーのプロ
山田淳子
Mybestpro Interview
多彩な表現で「書くこと」の豊かさを伝えるカリグラフィーのプロ
山田淳子
#chapter1
山田淳子さんとカリグラフィーとの出会いは今から約30年前のこと。ある小冊子に掲載されていたクリスマスカードの「Merry Christmas」の手書き文字の美しさに見惚れ、カリグラフィーと呼ばれるヨーロッパ発祥の文字の技法があることを知りました。当時、北海道でカリグラフィーを教えている教室が見つからず、通信教育でカリグラフィーの基礎を学び始めた山田さん。
「始めはメッセージカードが書けるようになればいいと思っていたのに、一つの書体が書けるようになると、『もっと、もっと』と好奇心を刺激され、新しい書体や技法を学び続けました」
「気がつけば30年になります」。そう言って顔をほころばせた山田さんは、これまでの期間、国内はもちろん、カリグラフィーの本場であるヨーロッパやアメリカに赴き、著名なカリグラファーの講義を受けながら技法を学び、約20種類の書体を習得してきました。
バリエーションを含め、数え切れないほどたくさんの書体があるというカリグラフィーの世界には、アーティストそれぞれに得意な専門分野があるそうです。山田さんの得意とするジャンルは、アルファベットを重ねて作るデザイン技法。多色使いの美しい作品は、一枚の絵画のようですが、じっくり見てみるとアルファベットで描かれているという事実に驚かされます。この技法を用いた作品は国内外でも珍しく、2009年に開催された「日本・ベルギーレターアーツ展」で高く評価されました。
山田さんの作品は、書体と背景デザイン、色彩の調和が美しく、こちらに語りかけてくるような、生き生きとした活気を感じることができます。
#chapter2
国内外で活躍するカリグラファーたちの多彩な作品を目にしてきた山田さんに「カリグラフィーの魅力」を問うと、「自分の個性を文字という表現で発揮できること」と答えてくれました。
「カリグラフィーを習い始めたばかりの生徒さんの多くが、書体の幅、大きさなどすべてお手本通りに書く人が多いです。昔の私も同様で、基本の書体をそのまま書けるようになることがゴールだと思っていました」
当時の日本では、この「個性の演出」について教えてくれる講座内容はまだ一般的ではありませんでした。そんな山田さんの転機になったのが、海外で開催されたカリグラフィー講座を受講したとき、外国人講師に言われた「日本人はみんな同じような文字を書くよね」という言葉。
「その言葉で初めて、私が書く文字が『自分の作品』になっていないことに気づかされました。函館で初めての個展開催を控えていた時期だったので、自分の個性を文字に込めるため、これまでの概念を取り払うのにかなり苦労しました」
2015年からスタートした「スタジオUMI」でのカリグラフィーレッスンでは、生徒一人一人の「個性」を尊重して教えていると言います。
「まずはベーシックな書体からしっかり基礎を学んでいただきますが、他の生徒さんと比較しすぎないよう、“自分の文字”の魅力を発揮できるようにアドバイスしています」
#chapter3
2017年の山形県での個展開催をきっかけに、月に一度、山形でもグループレッスンを担当していた山田さんですが、当時から「遠方の方にも気軽に教えられる環境があれば」とオンラインでの講座の実現に思いを巡らせていたそうです。
そして2020年8月、コロナ禍で山形に赴くことが難しくなったのをきっかけに「オンライン」での通信講座をスタート。Web会議ツール「Zoom」を活用したリアルタイムの指導と、YouTubeによる動画配信を活用した添削を行うユニークな内容です。
「30年前に私が学んだ通信講座は、教科書も添削もすべて“紙”でのやりとり。赤が入れられた添削用紙を見ても、具体的にどこを直せば良くなるのかがわからず、修正にも一苦労でした」
添削をする山田さんの手元を撮影した動画を見ながら、自身の修正点を確認できるこのシステムに、生徒さんにも「離れていてもわかりやすい!」と好評とのこと。
自身の経験を生かし、遠方でも学べる仕組みを一から築き上げた山田さんの姿勢からは、「どんな環境下でも、カリグラフィーを楽しんでもらいたい」という意志の強さを感じます。オンラインレッスンの特典として、函館にある「スタジオUMI」での2時間半の対面講座を無料でつけているそうです。
「カリグラフィーは私の世界を広げ、人生を豊かにしてくれました。文字を美しく書くことの楽しさももちろん、カリグラフィーを通して出会った講師や生徒さんとの出会いは私にとってかけがえのない財産です」
知人に送るメッセージカードや、インテリアなど、多彩な活用方法を楽しめるカリグラフィー。パソコンやスマートフォンでの文字打ちが当たり前になってきた今だからこそ、カリグラフィーを通して「書く楽しみ」が見つかるかもしれません。
(取材年月:2020年9月)
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Profile
多彩な表現で「書くこと」の豊かさを伝えるカリグラフィーのプロ
山田淳子プロ
カリグラフィーアーティスト
スタジオUMI
30年の経歴で磨いた技法と表現力で、カリグラフィーの魅力を函館の「スタジオUMI」から発信。対面レッスンに加え、2020年にはオンライン通信講座をスタート。Web会議ツールと動画配信による指導を行う。
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