身寄りのない人に勧めたい生前対策「死後事務委任契約」
認知症対策や相続対策として注目度が高まっている家族信託ですが、「どの財産を信託できる?」「信託が難しい財産とは?」といった疑問を持つ方は少なくありません。
ここでは、家族信託で扱える財産・扱いにくい財産の具体例や、信託する財産を選ぶ際の注意点について説明していきます。
家族信託で「信託できる財産」とは?
家族信託で扱えるのは金銭的価値が認められる財産が基本です。以下のようなものが代表例として挙げられます。
- 現金:受託者が信託専用口座(信託口口座)で管理し、医療費や介護費用の支出に充てやすい
- 不動産(土地・建物):収益不動産を信託しておけば、受託者が賃貸管理や売却を代理できる。自宅を信託しておき、将来の施設入所費をまかなうために売却する選択肢も
- 有価証券(非上場株式、国債など):会社オーナーが事業承継対策として株式を信託するケースも多い
- 動産・知的財産権:宝石、骨董品、絵画、車、著作権、特許権など
上場株式は要注意
上場株式も本来は金銭的価値があるため、信託対象にできるのですが、証券会社の対応が追いついていない場合があり、受託者名義の口座(信託口口座)が作れないことがあります。最近は対応が進んでいる証券会社も増えていますが、手続きが複雑になりやすいため、専門家に相談して早めに準備することをおすすめします。
家族信託で「信託できない(しにくい)財産」とは?
信託できない(しにくい)財産も複数あるので、それぞれ確認していきましょう。
借金・ローン
借金やローン残高などの“マイナスの財産”は、基本的に家族信託の対象には含められません。ただし、「債務引受」という方法で、受託者にローン返済義務を移すこと自体は可能です。その場合は以下の点に留意する必要があります。
- 債権者(金融機関)の同意が必須
- 併存的債務引受もしくは免責的債務引受(どちらを選ぶかで返済義務を負う範囲が変わる)
- 信託財産責任負担債務の設定(受託者が信託財産からローン返済できるよう明記する)
この手続きは高度な法的知識と金融機関との交渉が必要となるため、専門家への相談が必要になってくるでしょう。
預金債権
預金口座にあるお金は「預金債権」という形で、金融機関の規約上、第三者に譲渡できないケースが多いです。そのため、口座自体を信託するのは困難といえます。
対策としては、委託者名義の預金を一度引き出して現金化し、その現金を受託者に手渡して受託者名義の信託口口座へ入金する方法が考えられます。これで実質的に“現金”として信託することが可能です。
農地
農地法の規定により、信託を理由とする農地の所有権移転は不許可とされています。もし農地をどうしても信託したい場合は、農地転用許可を得て宅地などに変更する方法が考えられますが、ハードルが非常に高いのが現状です。
特に信託を検討すべき財産の例
以下に挙げる財産については、積極的に信託を検討してみてもいいかもしれません。
自宅不動産
親が認知症になるリスクに備えて自宅を信託しておけば、親の介護施設入所などで資金が必要になったときに、受託者の判断で自宅売却し金銭を確保することができます。また、親が亡くなった後、空き家となった自宅をスムーズに処分することも可能です。
収益不動産
賃貸アパート・マンションを信託すると、受託者が家賃管理を代行したり収益を受益者(委託者)の生活費に充当したりできます。
事業承継目的の非上場株式
経営者の高齢化に備え、子ども(後継者)を受託者に指名して株式を信託しておきます。後継者が会社運営をスムーズに引き継げるようにしておく方法です。
信託財産を選ぶ際の注意点
どのような目的を持っているかによって、信託すべき財産は変わってくるでしょう。
- 認知症リスク対策:自宅や収益不動産を信託して処分や管理を受託者に任せる
- 相続対策:事業承継や財産分与を明確化する
- 節税効果:ときには信託と贈与を組み合わせるケースも(税理士要相談)
「信託できるけど難しい」財産も
上場株式や農地など、実務的に手続きが煩雑になるものもあります。口座開設や農地転用手続きを要するため、事前に専門家や関連機関へ確認が必須です。
契約書の内容を正確に定める重要性
家族信託は、「どの財産を信託財産にするか」を契約書でしっかり明記しなければ効力が及びません。債務を含める場合は、債務引受や信託財産責任負担といった追加規定も必要になるなど、専門的な法知識が欠かせません。
専門家(行政書士・司法書士・弁護士・税理士)のサポートを得て、円滑な契約書作成と金融機関への説明・調整を依頼するのも1つの方法です。
まとめ
家族信託を成功させるには、どんな財産を信託できるかを把握し、かつ実務上のハードルや目的に応じた最適な選択をすることが大切です。
もし「どれを信託すべきかわからない…」「農地や借金の扱いは?」と悩まれたら、ぜひ早めに専門家へご相談ください。
当行政書士法人では、200件以上の家族信託契約サポート実績があり、個々の事情を丁寧にヒアリングしたうえで、税理士とも連携しながら最適なスキームをご提案いたします。無料相談もご利用いただけますので、どうぞお気軽にご連絡ください。



