相続登記義務化!遺産分割協議が期限に間に合わない場合
誰も住む予定のない空き家や放置されてきた山林、農地などが相続財産に含まれていた場合、相続登記してもその後の処分に困るかもしれません。そのようなとき、相続放棄することによって土地の所有権を手放すことができます。ここでは、相続登記義務化に伴う土地の相続放棄とその他の選択肢について説明していきます。
土地を相続放棄する場合
令和6年(2024年)をもって相続登記は義務化されます。今後は、相続で土地の所有権を得たことを知った日から3年以内に登記手続きを行わなければいけません。
しかし、相続財産としての土地を引き継ぎたくないケースもあるでしょう。たとえば次のような相続土地である場合は相続をためらってしまうかもしれません。
- ほとんど行くことのない地方の山林
- 誰も住まない空き家
- 買い手が付きそうにない土地 など
相続してもその後の活用予定がない、管理が大変であることから、取りうる選択肢は相続放棄か相続土地国庫帰属制度の利用ということになりそうです。
土地を相続放棄するときの要件
土地の相続を放棄するケースについて考えてみましょう。正しい手続きさえ行えば、相続放棄は決して難しくありません。自分が相続する財産(負の財産を含む)があることを知ってから3ヶ月以内に、家庭裁判所に対して必要書類を提出し、裁判所がその申述を受理することにより相続放棄が完了します。
【必要書類】
- 申述書
- 相続放棄する本人(申述人)の戸籍謄本
- 被相続人の除籍の附票または住民票の除票
※相続人の順位によって提出すべき書類は変わってきます。被相続人との関係性によって除籍や改製原戸籍が筆余蘊人数分求められる場合もあります。
正規の手続きを経て土地を相続放棄することは可能ですが、当該土地の次の所有者が決定するまでの間は、相続放棄した人物が土地の保存責任を負いますので覚えておきましょう。
土地国庫帰属制度を利用する場合
相続登記されないまま放置される土地を減らすために、相続土地国庫帰属制度が始まりました。同制度を利用することで、相続放棄したい土地を国庫に帰属させることができます。まずは対象となる土地の相続登記を行い、所有者となってから法務局に手続きします。
制度利用できる土地の要件
法律では、「引き取ることのできない土地の要件」が定められていますので、これに該当しなければ原則として土地を国に引き渡すことができます。引き取ることのできない土地の要件について確認しておきましょう。要件に該当しないことがわかり制度の利用申請を行った場合、次は国による審査を経て承認を受けることになります。
「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」
(承認申請)
第二条
3 承認申請は、その土地が次の各号のいずれかに該当するものであるときは、することができない。
一 建物の存する土地
二 担保権又は使用及び収益を目的とする権利が設定されている土地
三 通路その他の他人による使用が予定される土地として政令で定めるものが含まれる土地
四 土壌汚染対策法(平成十四年法律第五十三号)第二条第一項に規定する特定有害物質(法務省令で定める基準を超えるものに限る。)により汚染されている土地
五 境界が明らかでない土地その他の所有権の存否、帰属又は範囲について争いがある土地
※e-Govより抜粋
(承認)
第五条 法務大臣は、承認申請に係る土地が次の各号のいずれにも該当しないと認めるときは、その土地の所有権の国庫への帰属についての承認をしなければならない。
一 崖(勾配、高さその他の事項について政令で定める基準に該当するものに限る。)がある土地のうち、その通常の管理に当たり過分の費用又は労力を要するもの
二 土地の通常の管理又は処分を阻害する工作物、車両又は樹木その他の有体物が地上に存する土地
三 除去しなければ土地の通常の管理又は処分をすることができない有体物が地下に存する土地
四 隣接する土地の所有者その他の者との争訟によらなければ通常の管理又は処分をすることができない土地として政令で定めるもの
五 前各号に掲げる土地のほか、通常の管理又は処分をするに当たり過分の費用又は労力を要する土地として政令で定めるもの
※e-Govより抜粋
審査手数料は1筆あたり14,000円です。また、申請が承認された場合、国に対して負担金を納める必要があります。負担金とは対象となる土地について10年分の管理費用を算出したもので、相当額を納付しなければなりません。
まとめ
土地を相続放棄する場合、土地だけではなく預貯金や有価証券といったプラスの財産から借金などのマイナスの財産まで、すべてを手放すことになります。欲しい財産だけ相続することはできませんので、手続きを行う前にしっかりと現状および近い将来について理解把握する必要があるでしょう。
相続放棄する場合も相続土地国庫帰属制度を利用する場合も、正しい手続きや要件該当の確認などさまざまな手続きが必要になりますので、早い段階で専門家に相談することをおすすめします。
当事務所では相続問題のご相談・ご依頼を承っているほか、司法書士との提携により相続登記にも対応することが可能です。無料相談をご用意しておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。