朝、ベッドから起き上がろうとした瞬間に、腰が痛い。
夕方になると腰が重くなって、立っているのがつらい。
顔を洗ったり、掃除をしたりするときに前かがみになると痛む。
長時間座ったあと、椅子から立ち上がる瞬間がつらい。
腰痛があると、何気ない日常の動作がつらくなりますよね。
腰は、寝る・起きる・座る・立つ・歩くといった、僕たちが普段行っているほとんどすべての動作に関わっています。
だからこそ、腰を痛めてしまうと、運動する時だけではなく日常生活そのものに影響してしまうんです。
実はスポーツトレーナーである僕も、過去に深刻な腰痛を経験しています。
しかも一度ではありません。自衛隊時代に、腰を痛めて2度入院しました。
今回は、そんな僕自身の経験も交えながら、
・そもそも腰痛はなぜ起こるのか?
・腰痛とどう向き合えばいいのか?
・自分でできる運動には何があるのか?
についてお話ししていきます。
腰痛は「腰だけの問題」ではありません
「腰が痛いんだから、腰に原因があるんじゃないの?」そう思われる方も多いかもしれません。
でも僕は、腰痛を「腰だけの問題」とは考えていません。
腰痛には、「長時間同じ姿勢でいること」や「身体を動かす機会が少ないこと」「前かがみの姿勢」「疲れ」「睡眠不足」「ストレス」など、さまざまな要因が関係します。
腰は、上半身と下半身をつないでいる、まさに身体の「要(かなめ)」です。
・呼吸が浅くなっている
・お腹にうまく力が入らない
・背中が硬くなっている
・股関節が動きにくくなっている
例えばこうしたことが重なると、本来は身体全体で分担するはずだった仕事を、腰が頑張って引き受けることになります。
身体は「チームプレイ」で動いています。
腰だけ、背中だけ、お腹だけが単独で働いているわけではありません。
だから腰痛について考えるときも、腰だけを見るのではなく「呼吸」「お腹」「背中」「股関節」そして「心の疲れ」まで含めて、身体全体を見ることが大切だと考えています。
腰痛で入院!?僕が20代に経験した痛み
僕の腰痛の始まりを振り返ってみると、高校生の頃までさかのぼります。
当時は陸上部で中距離を走っていました。
今思えば、その頃から少し股関節に違和感がありました。
その後、自衛隊に入り、駅伝の強化選手になります。
身体を鍛え、走ることが仕事のような毎日でした。
時期によっては、一日に50km走ることもありました。
選手を続けるためには結果を出さなければならない。
だから多少身体が痛くても、「まだ走れる」「これくらい大丈夫」と無理をしていました。
そのうち、腰全体、特に骨盤のあたりに違和感が出るようになります。
厳密には「仙腸関節」と呼ばれる場所です。
朝起きると、そのあたりがつらくて身体を起こすのもしんどい。
でも朝のジョギングを始めて、少しずつ身体を慣らしていくと、腰の張りや骨盤の違和感が少し楽になる……そんな状態でした。
当時は身体についての知識もほとんどありません。
「腹筋と背筋をバランスよく鍛えれば腰は良くなるだろう」
そう考えて、昔ながらの腹筋運動や背筋運動を繰り返していました。
ところが走る距離が増えるにつれて、骨盤周辺の痛みは強くなっていきました。
そして最終的には、ベッドから起き上がることすらできない状態に。
同僚に運ばれ、そのまま自衛隊病院へ2度入院しました。
一番つらいのは、痛みよりも「動きたいのに動けない」こと
腰が痛いこと自体も、もちろんつらかったです。
でも僕にとって一番苦しかったのは、「走りたいのに走れない」ということでした。
駅伝選手として結果を出したい。もっと走りたい。
でも身体が動かない。
そのストレスがさらに身体にも影響していきます。
結局、腰痛は僕の人生そのものを見直すきっかけになました。
最終的には自衛隊を辞めて、身体について学ぶ道へ進むことになります。
僕にとって腰痛は、大きな挫折でした。でも同時に、今につながる「原点」でもあります。
あの腰痛がなかったら、「あへあほ体操」は存在していなかったかもしれません。
試行錯誤の先で出会った「ドローイン」というエクササイズ
腰痛になってから、いろいろなことを試しました。
整形外科ではリハビリテーションやブロック注射。
そのほかにも、カイロプラクティック、整体、気功、鍼灸、マッサージなど
さまざまな治療を受けました。
同時に、身体そのものについて勉強し始めました。
カイロプラクティックの夜間専門学校に通い、整骨院や整形外科のリハビリ室でアシスタントとして働きながら、身体について学んでいきました。
そこで僕が知ったのが、「腹横筋」という筋肉です。
腹横筋は、お腹の深いところにあるインナーマッスルです。
イメージとしては、身体の内側にある「天然のコルセット」のような筋肉。
この筋肉が身体を内側から支えてくれることが、とても大切だとわかりました。
そして勉強を続ける中で、もう一つ大切だと感じたのが「呼吸」でした。
息を吐きながらお腹をへこませる「ドローイン」というエクササイズに出会ったのです。
ここから試行錯誤を重ねていった先に、「あへあほ体操」の体幹プログラムがあります。
腰痛対策で大切な3つのポイント
腰が痛いと、「なるべく動かさないほうがいい」と思ってしまうかもしれません。
しかし、大切なのは「痛いからといって必要以上に身体を動かさなくなることを避ける」ことです。
もちろん、強い痛みがあるときに無理をする必要はありません。
それでも、動ける範囲で身体を動かしたり、声を出したりすることはできます。
「腰が痛いから何もできない」ではなく、「今の自分にできることは何だろう?」という視点を持つことが、腰痛と向き合う第一歩です。
そのうえで、僕が腰痛対策として特に大切だと考えているのが、次の3つです。
1.お腹の奥にある「腹横筋」を使う
皆さんのお腹には、「天然のコルセット」があります。それが腹横筋です。
表面の腹筋をガンガン鍛えるだけではなく、身体を内側から支えている筋肉を使うことが重要です。
僕自身、腰痛を経験して身体について学ぶ中で、このインナーマッスルの大切さに気づきました。
2.腰だけではなく、全身を動かす
身体は、チームプレイで動いています。
上半身も、下半身も、その間にある腰も、全部つながっています。
だから「腰が痛いから腰だけ」という考え方ではなく、身体全体をできる範囲で動かしていくことが大切です。
3.ストレスも「吐き出す」
もう一つ、僕が大切だと考えているのがストレスです。
ストレスがたまり続けると、身体も緊張しやすくなります。
息でいえば、ずっと「吸っている」ような状態。
だから僕は、「もっと吐き出そう!」とよくお伝えしています。
息を吐く、友達に話を聞いてもらう、カラオケで歌う。
そして、「あーへーあーほー!」と声を出す。
方法はなんでもいいんです。
身体だけではなく、心もためっぱなしにしないこと。
これも身体と向き合ううえで大切なことだと思っています。
まずは1日1分から!腰痛対策に「あへあほ体操」をやってみよう
ここで僕がおすすめしたいのが、「あへあほ体操」の基本動作です。
やり方はとてもシンプル。
「あー・へー・あー・ほー」と声を出します。
そして「へ」と「ほ」のタイミングで、お腹をへこませます。
「あ」のときは普通に「あー」と声を出すだけ。
大事なのは「へ」と「ほ」で、お腹をへこませることです。
あへあほ体操は、息を吐きながらお腹をへこませる「ドローイン」を応用した体幹エクササイズです。発声することで自然に息を吐きながら、お腹の深い部分を使っていきます。
実際に「あへあほ体操」の基本動作について行われた研究では、実施後に内腹斜筋・腹横筋と外腹斜筋の筋活動量が有意に増加し、努力肺活量(FVC)にも有意な増加が確認されました。研究は健常成人を対象とした即時効果の検討であり、「腰痛が治る」ことを直接証明した研究ではありませんが、あへあほ体操によって体幹筋群や呼吸機能に変化が生じることが確認されています。
シンプルに説明すると、あへあほ体操をすると「呼吸が深くなりますよ」「腹横筋などの体幹筋群が働きますよ」ということになります。
この研究結果は、日本予防理学療法学会に続き、2026年には米国整形外科基礎学会でも発表されました。
あへあほ体操の特徴は「頑張りすぎなくていいこと」です。
まずは、一日1〜3分程度からで構いません。
回数よりも、楽しく毎日少しずつ続けることが大切です!
あへあほ体操と一緒に!腰痛対策のトレーニング
あへあほ体操の基本動作と一緒に、以下のトレーニングも腰痛対策におすすめです。
モモ裏のストレッチ
- 椅子に浅く腰かけ、片足を前に伸ばします。かかとを床につけ、つま先は天井に向けるように起こします。
- 伸ばした足の膝と背筋をできるだけ伸ばしたまま、上半身をゆっくり前に倒します。
- モモの裏側が気持ちよく伸びる位置で止まり、その姿勢を1分間キープします。
- 1分たったら足を入れ替え、反対側も同じように1分間伸ばします。
ポイント:無理に深く前屈する必要はありません。背中を丸めるのではなく、股関節から身体を前に倒すイメージで行いましょう。
軸を整えるトレーニング
- まっすぐ立ち、右足を左足のすぐ前に置きます。両足が一本の線の上に並ぶようにセットします。
- 目線をまっすぐ前に向け、体重が左右どちらかに偏らないよう意識します。
- その姿勢のまま、30秒間キープします。
- 足を前後入れ替え、反対側も同じように30秒間キープします。
ポイント:身体がふらついても大丈夫です。足元ではなく正面を見ること、左右均等に体重をかけることを意識してみてください。
どのくらいやれば、効果が出るのか?
「何回やればいいんですか?」
「何日続ければ効果が出ますか?」
これはよく聞かれる質問です。
僕がお伝えしたいのは、まず「頑張りすぎなくていい」ということ。
一日1〜3分程度からで構いません。
大切なのは、一度だけたくさんやることよりも、毎日少しずつ身体を動かすことです。
僕自身の場合、腰痛で入院したあと、強い痛みが落ち着くまでには10日ほど、不安なく身体を動かせるようになるまでには約1か月かかりました。
でも、「身体の使い方を見直して、腰痛を繰り返しにくい身体をつくる」という意味では、僕自身は2〜3年ほどかけて身体と向き合いました。いまでも腰痛はゼロではありません。
腰痛の状態や原因は人によって違います。
ですから「○日やれば必ず良くなる」とは言えません。
まずは一日1〜3分。楽しく、できる範囲で。
毎日少しずつ続けてみてください!
※強い痛みが続く場合、脚のしびれや力の入りにくさなどがある場合、急激に症状が悪化した場合などは、自己判断で運動を続けず、医療機関に相談してください。


