ファミリービジネスの事業承継が複雑な理由と対策|一般企業と何が違うのか?

「会社で生じていることを、誰に相談すればよいかわからない」
ファミリービジネス(同族経営)の経営者と話していると、こうした声を耳にすることがあります。経営コンサルタントには相談したことがある。税理士とは定期的に会っている。弁護士に契約書のことは頼んでいる。それでも、何か根本的なことが解決されていない感覚が残る——この「解消されない感覚」の正体は何でしょうか。
私は友鉄エナジー株式会社の代表取締役であり、60年以上の歴史を持つ鋳造メーカーグループ・友鉄ホールディングスの取締役会長として、現役経営者を続けています。と同時に、ファミリービジネスアドバイザーとして、同族経営ならではの課題に直面する経営者の支援も行っています。今日は、ファミリービジネスの問題がなぜ複雑になるのか、その構造についてお話しします。
目次
日本企業の大部分を占める経営形態、ファミリービジネス
ファミリービジネスとは、創業者一族が経営に関わる企業のことです。中小企業を中心に、日本企業の大部分はこの形態に該当するといわれています。
「ファミリービジネス」という言葉から、小規模な家族経営をイメージされる方もいますが、実際には世界の著名な大企業にもファミリービジネスは多くあります。家族の絆と長期的な視点で経営できることは、ファミリービジネスの強みでもあります。一方で、独特の難しさを生む構造的な特性もあります。
ファミリービジネスには「ビジネス(事業)」「ファミリー(家族)」「オーナーシップ(所有)」という3つの要素が重なり合っています。一般企業では分離されているこの3つが、ファミリービジネスでは一体化または密接に絡み合っています。この「3つの重なり」こそが、ファミリービジネス特有の強みを生む一方で、問題が複雑になる根本原因でもあります。
「経営の問題」と「家族の問題」が分離できない難しさ
一般企業でも経営陣の意見対立は起きます。しかしファミリービジネスでは、そこに家族関係が重なります。生い立ちや幼少期からの関係性、配偶者を含めた背景、相続をめぐる思惑。こうした要素が絡み合い、純粋に経営判断として議論することが難しくなります。
私自身、このことを身をもって経験しました。父の体調を機に家業に入社し、事業を継続・発展させようと改革を試みるたびに、先代と衝突しました。「なぜわかってもらえないのか」「なぜ変えようとしないのか」、双方に言い分がありそれぞれが正しいと信じているからこそ、話し合いは感情的になりやすい。
会社の方向性や戦略をめぐる家族間の意見対立は、ファミリービジネスで最も多い悩みの一つです。これは単純な「意見の相違」ではなく、長年の関係性の中で積み重なった感情や価値観の違いが表れているものです。だからこそ、通常の経営コンサルティングのアプローチでは解決しにくいのです。
「誰にも相談できない」のは、専門家が縦割りになっているから
ファミリービジネスの経営者が相談できる専門家として、税理士・弁護士・経営コンサルタント・銀行などがいます。しかし、それぞれの専門家は自分の専門領域に特化しています。
税理士は税務・会計が専門で、家族間の感情的な対立には関与しにくい。弁護士は法律的な問題には対応できるが、経営戦略の議論はできない。経営コンサルタントは戦略や業務改善には強いが、オーナー家族の個人的な関係性には踏み込みにくい。こうした「縦割り」の専門家体制では、事業と家族が密接に絡み合ったファミリービジネスの問題全体を見渡す視点が欠けてしまいます。
私が「誰に相談すればよいかわからない」という声を多く聞くのは、このためだと思っています。会社で生じている問題が、実は家族・親族間の関係性と深く結びついていることに、当事者自身が気づいていないケースも少なくありません。
第三者が入ると見えてくるもの、「絡まった糸」を解きほぐす
ファミリービジネスの問題解決において、第三者の存在が重要な理由はここにあります。当事者だけの話し合いでは感情が先立ち、解決が停滞しやすい。そこに中立的な立場の第三者が入ることで、それぞれの言い分を整理し、問題の本質を見えやすくします。
私がアドバイザーとして行うことの一つが、創業から現在に至るまでの関係図を書き、ヒアリングを重ねることです。この作業を通じて、親族間の不和や過去のわだかまり、隠れた不満や期待が浮き彫りになることがあります。「家族関係をひもとくことが、改善のヒントになる」——これは私の実体験から来ています。
家族だからこそ複雑になりやすい問題を、同じく同族経営を歩んできた者として、第三者の立場から整理する。これが私のファミリービジネスアドバイザーとしての核心的な役割です。「事業と家族の両面を踏まえ、踏み込んで相談できる存在として活用していただきたい」というのが、私の想いです。
ファミリービジネスの経営課題や、後継者問題・家族間の対立に悩まれている方は、まずは話を聞かせてください。


