保険金見込み勘違いの悲劇
今回のコラムは実際の事例をご紹介したいと思います。
弊社がどのようなサービスを提供しているか、どのような場合に弊社がお役に立てるかのイメージになれば幸いです。
60代男性からのご依頼でした。
交通事故で残念ながらお兄様がお亡くなりになり、相手の保険会社に保険請求する手続きの案件です。
お兄様は独身で、内縁の奥様(故人)とそのお子様がお二人いらっしゃいました。また、お兄様のご両親はすでに亡くなられており、弟様が2人いらっしゃいます。
その弟様のうち1人は行方不明であり、内縁の奥様のお子様とは養子縁組はしていなかったため、実質的な保険の請求権者は弟様お一人だけでした。
その方がご依頼をくださった60歳男性の方(Aさん)です。
Aさんは在日外国人の方で、日本語は当然ペラペラですが、手続き書類の作成はあまり得意ではなかったようです。
弊社と並行して弁護士事務所にも相談されていたようですが、最終的には弊社を選んでくださいました。
そのポイントとなったのは、「保険に詳しい」という点と、「フットワークが軽い」という点でした。フットワークが軽いというのは実際に依頼してからじゃないと分からないはずなのですが、僕との電話のやりとりを通じて、僕の方が話が早そうだとお感じになったようです。
正式にご依頼をいただき、報酬をご説明したうえで契約書を取り交わし、そこから本格的に手続きを進めることになりました。
今回の請求は自賠責保険への治療費、慰謝料、休業損害、文書料などお兄様がお亡くなりになったことで発生する損害についての保険請求でした。
ここで、気づかれた方がおられるかもしれません。「私も事故したことあるけど、自賠責保険の請求って自分でやるの?」と思われた方もいらっしゃるのではないかと思います。
そうなんです。自賠責保険の請求を自分でしないといけない場合というのは滅多にありません。
通常は自賠責保険の上乗せとしてかけている任意保険の保険会社が本人に代わって自賠責保険を請求してくれます。しかし、こちらが任意保険に入ってなかったり、任意保険には入っているけどこちらの過失割合が0%で任意保険の出番がない場合などには、自賠責保険は自分で請求しないといけなくなります。
保険会社の担当者が自賠責保険を請求する難易度と、一度もやっとことのない人が自賠責保険を請求する難易度は比べ物になりません。
しかも在日外国人であればなおさらです。
そこで弊社の出番となったわけです。
弊社の場合は、保険に詳しいことに加えてFP1級の幅広い知識を有しており、スムーズに保険を請求することができます。
の、はずでした。
しかし、この事例では、想像していなかった壁に直面することになりました。
(おかげでとてもいい勉強になりました)
在日外国人の場合は、保険請求に必要となる戸籍謄本が日本にはありません。そのため母国の戸籍謄本にあたる書類をまず取り寄せるために、何度も総領事館へ足を運びました。
それだけではそこまで難しくありませんが、それに加えてAさんが兄弟の証明となるためのお父様とお母様のお名前がなんと途中で変わっていたのです。母国の戸籍謄本にあたる書類(当然外国語なので日本語訳にしました)と、日本で管理していた外国人登録証の名前が違うのです。こんなことがあるのかと思いました。
さらには、行方不明の弟様に関する書類が、本人でないために何一つ取得できなかったのです。
ここからがとても時間と根気のいる仕事になりました。
これを全てお話すると夜が明けてしまいますので省略しますが、手続き書類がどうしても揃えられなくて途中であきらめかけたこともありました。ダメかもしれないと思ったこともありましたが、相続(保険金請求)権者の証明となりそうな書類を片っ端から集めました。保険会社とも何度も交渉しました。
結果としてめでたく無事に期待していたとおりの保険金を受け取ることができ、Aさんと内縁のお子様たちにも大変喜んでいただけました。