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コラム

髄膜炎・脳炎の症状-突然の発熱、頭痛、意識障害、けいれんなど

2019年6月2日 公開 / 2020年11月9日更新

テーマ:頭痛の基礎知識

コラムカテゴリ:医療・病院

コラムキーワード: 頭痛 原因頭痛 対策

芒種(ぼうしゅ)の季節になろうとしております。
本日は惜しくも負けましたが、広島カープの応援は気持ちのいいものです。

広島が大好きな(カープだけでなく)いのうえ内科脳神経クリニックの院長の井上です。



本日は髄膜炎・脳炎の症状についてです。
頭痛の基礎知識としての13回目のコラム。
【概要】
髄膜炎は頭蓋骨内側にある髄膜や脊髄を覆う膜の炎症
脳炎は脳実質が炎症をおこしている疾患です。
ともに頭痛や嘔吐、けいれん、意識障害などの症状を伴います。
それぞれの疾患について、発症する原因や症状、治療法などを紹介します。

症状が似た髄膜炎と脳炎 違いは何?

髄膜炎も脳炎も、病原となる微生物に感染して発症する「感染症」です。
炎症を起こした場所によって、髄膜炎や脳炎と呼ばれています。

髄膜炎は脳を覆う軟膜、くも膜、硬膜、くも膜と硬膜の間のくも膜下腔が炎症を起こします。
それに対し
脳炎は脳実質が炎症を起こします。

髄膜炎や脳炎は、その始まりが風邪と似ております。
どちらも最初は発熱や全身倦怠感、食欲の低下がおこります。
そして髄膜に炎症が出れば、頭痛や発熱、嘔吐などの症状が出始めます。

さらに炎症が脳の実質まで広がると、意識障害やけいれん、記憶障害、不可解な行動など、次第に「風邪とは違う、何か変だ」と思うような症状が出始めます。

髄膜炎も脳炎も感染源の種類によっては、症状が悪化するスピードがとても早く、適切な処置をしないと、後遺症を残すだけでなく生命の危険にも及ぶことがあります。
早めに医療機関で診断を受け治療を開始することが大切です。

髄膜炎・脳炎の検査

髄膜炎か脳炎を見分けるには、背骨にむかって針を刺す「髄液検査」を行います。
髄膜炎や脳炎にかかると、通常は透明な髄液が濁り、重症になるとドロドロとした膿となって出てきます。

髄液中の炎症細胞の数、蛋白や糖の成分を調べて、炎症が起こっているかどうか、採取した髄液の細菌培養やウイルスDNA検査を通じて、感染原因の特定をします。
また頭部CT、MRIで髄膜炎か脳炎かを鑑別し、脳波検査で意識障害の程度を客観的にチェックします。

髄膜炎の種類や症状
髄膜炎を発症した感染原因によって分類すると次のようになります。

ウイルス性髄膜炎

病原微生物の種類が多く、もっとも症例が多い疾患です。
ウイルスの種類は、エンテロウイルス、コクサッキーウイルス、ムンプスウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、単純ヘルペスウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルス、肺炎球菌、インフルエンザ桿菌(かんきん)、髄膜炎菌、大腸菌、抗酸菌、クリプトコックス、カンジタなどがあります。

細菌性髄膜炎

頭痛、発熱、意識障害、首の硬直が主な症状です。
炎症が脳に広がれば、意識がぼんやりとなり、けいれんが起こることもあります。

細菌には、肺炎球菌やインフルエンザ菌がありますが、高齢者では、溶血性連鎖球菌B型、腸内細菌や緑膿菌感染による発症もみられます。

結核性髄膜炎

頭痛、発熱、嘔吐、意識障害、物が二重に見えます。
HIV感染症や抗がん剤治療、ステロイド治療などで免疫機能が低下していると発症しやすい特徴があります。

真菌性髄膜炎

クリプトコックスやカンジタ感染源で発症することがもっとも多く、症状は細菌性と似ていますが、細菌性髄膜炎より軽いことが多くなります。

脳炎の種類や症状

脳炎になると、初期の頭痛や嘔吐の症状が悪化して、意識障害、けいれん、記憶障害、精神症状などが出始めます。

ウイルス性脳炎

ウイルス性髄膜炎が脳炎を併発したものです。
「単純ヘルペス脳炎」(急性脳炎と呼ばれることもあります)が最も多く、急性で重篤、致死率が30%近くあるため、ヘルペスウイルスの抗ウイルス薬を早急に投与しなければなりません。

ヘルペス脳炎は頭痛、発熱、嘔吐、首の硬直、意識障害、けいれん、記憶障害、言語障害、人格変化、異常行動などの症状がみられます。年間400症例ほどみられます。

この他に脳炎を起こす原因ウイルスには日本脳炎、コクサッキーウイルス、エコウイルスがあります。

その他の脳炎

インフルエンザ、風疹、麻疹から急性脳炎(二次性脳炎)を発症することがあります。
麻疹ウイルスによる脳炎は、感染から5~10年後に発病し、予後も悪い病気です。

自己免疫性脳炎

免疫機能が自分の脳の神経細胞を攻撃することで発症します。
原因には、感染症に伴って発症するものや、体内にできた腫瘍に関連するもの、膠原病の合併症があります。

発熱や頭痛といった髄膜炎・脳炎の特徴に加えて、言動・行動異常や記憶障害が急に見られたりすることもあれば、数カ月後に記憶障害や意識がぼんやりするといった症状が出ることもあります。

髄膜炎・脳炎の治療

髄膜炎や脳炎は、基本的には原因となるそれぞれの病原菌に対する抗菌薬投与を行います。

髄膜炎では、病原菌の種類によって、抗菌薬だけでなくステロイドホルモン剤を使用することもあります。
結核性髄膜炎だと、治癒するのに1年以上かかることもあります。

ウイルス性脳炎でヘルペス脳炎以外の脳炎では、脳圧を下げる治療を行い、自然軽快を待ちます。
ウイルス性脳炎は、数日から2週間以内に症状はおさまります。

自己免疫性脳炎では、脳炎に関連する自己抗体を特定し、免疫抑制剤(ステロイドホルモン)による治療や、血漿交換療法(血液から病気の原因物質を取り除き、健常な血漿と入れ替える方法)、腫瘍関連であれば、腫瘍の治療を行っていきます。

髄膜炎や脳炎の中には、急激に症状が悪化するものもあり、原因を特定する前に抗菌薬投与を開始することもあります。

そのため
最初は「風邪かな」と思っていても、急に意識がなくなるといった症状が出れば、かかりつけ医から紹介してもらうなどして、髄液検査、頭部CT、MRI検査、脳波検査、病原検査といった専門の検査が、すぐにできる急性期病院で診察を受けてください。

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