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片頭痛治療にモノクローナル抗体がやってくる 難治性片頭痛患者さんには光明

井上健

井上健

テーマ:広島の頭痛外来

おはようございます。
昨日は私ごと、広島大学脳神経内科の新年会に出席。
朝の起床はいつもより少し遅いです。



夢を見ました
片頭痛の患者さんの頭痛発作がなくなる

日本人で840万人のかたが罹患しているだろうと推定されるのが片頭痛。
頭痛による生産性の低下のため、毎年2,880億円の経済的損失をもたらしているのが片頭痛。

2005年10月に京都で第12回国際頭痛学会(坂井文彦会長)というのが開催されました。
そこで 頭痛による苦しみからの解放ということで 「京都頭痛宣言」が発表されました。

片頭痛をはじめとする頭痛疾患にたいして、医療が十分にほどこされていない。
つまりトリプタン製剤などの有効な頭痛薬が片頭痛患者さんに提供されていない。
まだまだ医療者としてがんばるべきところ、患者さんに啓蒙すべきとことがあることなどがあることを宣言されました。

京都頭痛宣言から13年の月日が経ちました。
昨年は本庶佑(ほんじょたすく)先生がノーベル生理学賞を受賞。
モノクローナル抗体を使用したがPD-1抗体の作成です(ニボルマブ)。
実は、片頭痛の分野でもモノクローナル抗体はどんどん開発されてます。
なかには医療費が高額になるだけだとおっしゃられるかたもいらっしゃいますが、片頭痛で悩まれているかたにとって現在の医療ではまだまだ日常生活に支障をきたしているかたが多くいるのも現状です。
米国ではすでに保険適応になって使用されているのも現状。気が気でない
日本でも治験段階の最終段階になったおくすりもあります。
月に一回の皮下注射や三か月に一回の治療などですが、かなり効果あるようです。完全ヒト
私の夢のように頭痛がなくなるまではいきませんが、いままでの頭痛が半減される以上の効果は期待できそうです。
現在我が国で進行中のモノクローナル抗体を使用した治験。

ヒト化抗CGRPモノクローナル抗体

TEV-48125
ガルカネズマブ 第三相試験(HALO試験)が進行中
エプチネズマブ 第三相試験開始予定
フレマネズマブ 第三相試験(HALO試験)が進行中
ガルカネズマブ(米イーライリー)・エプチネズマブ
(米アルダーバイオファーマシューティカルズ)
フレマネズマブ(大塚製薬)

完全ヒト抗CGRP抗体モノクローナル抗体

エレヌマブ(AMG334) 第三相試験開始予定
*第三相試験とはおくすりが市販になる前に行われる最後の大規模調査です。

片頭痛治療のモノクローナル抗体

片頭痛の原因物質であるカルシトニン遺伝子関連ペプチド (calcitonin gene-related peptide:CGRP)と、その受容体に対する抗体を使用。
CGRPは中枢神経と末梢神経にあるタンパク質です。
神経の末端から放出されて血管をひろげたり炎症を惹起させます。
現在のトリプタンという片頭痛の特効薬がこの血管拡張や炎症をふせぐ作用があります。
モノクローナル抗体はそのもととなるCGRPに対して作用。
だから効果あり!
【参考文献】
Bigal ME, et al. Safety, tolerability, and efficacy of TEV-48125 for preventive treatment of chronic migraine: a multi-centre, randomized, double-blind, placebo-controlled, phase 2b study. Lancet Neurol 2015
Silberstein SD, et al. Fremanezumab for the preventive treatment of chronic migraine. N Engl J Med 2017;377:2123-2122.
Tepper S, et al. Safety and efficacy of erenumab for preventive treatment of chronic migraine: a randomised, double-blind, placebo-controlled phase 2 trial. Lancet Neurol 2017;16:425-434.

医療経済効果

モノクローナル抗体はおそらく高額な治療になると思います。
安くても月に一万円くらいの薬価が予想されます。
したがって
現状の治療の効果が不十分なかた、薬剤の使用過多による頭痛になりそうなかたなど選択的に用いられるべき。そうすることによって医療経済的にも有用なおくすりになると思います。

まとめ

2005年に京都頭痛宣言が公布されてから13年
ついにモノクローナル抗体が片頭痛の治療に
現状の頭痛薬などの治療で最善をつくしたあとに用いられるべき薬剤

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井上健
専門家

井上健(内科医)

いのうえ内科脳神経クリニック

あらゆる頭痛の原因を診断するためには脳だけの専門でなく全身を診ることが必要になることもあります。

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