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コラム

カスタマーハラスメントから従業員を守るために(その1)

2024年1月19日

テーマ:ハラスメント セミナー 社会保険労務士

コラムカテゴリ:ビジネス

残念ながら、最近は「●●ハラスメント」という単語が非常に増えてきましたが、
その中でも特に社会的な問題としてカスタマーハラスメント(以下、カスハラ)がニュースで取り上げられるようになりました。
2023年9月には、精神疾患の労災認定基準にカスタマーハラスメントが追加されたことなどからも被害が深刻であることが伺えますが、
その一方で、認知度は高まってきているものの、十分な対策があまりできていない企業も多いようです。
そこで、今回は、カスハラの具体的な内容や企業が対応すべきことについてお伝えいたします。

そもそもカスハラとはなにか


カスハラとは、顧客や取引先がその立場を利用して、相手先企業やその従業員に理不尽な要求をする行為を言います。
ただし、クレームのすべてがカスハラとなるわけではありません。
そして、クレームの中には、商品やサービスの改善などの正当なものもあります。
カスハラは、不当な言いがかりや過剰な要求を行う悪質なクレームなど、「社会通念上不相当なもの」を指します。

厚生労働省が公表した企業および従業員への調査によると、過去3年間にハラスメントを受けた従業員の割合ではカスハラが2番目に多く、
そして企業への相談件数はカスハラが3番目に多いという結果となりました。

参考|令和2年度 厚生労働省委託事業『職場のハラスメントに関する実態調査報告書(概要版)』
https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/000783140.pdf

なお、カスハラは、個人客によるハラスメントといったイメージを持たれがちですが、実は取引先も対象となります。
そのため、企業は業種を問わずカスハラの被害にあう可能性がある一方、逆にカスハラの加害者となる可能性もあるのです。

カスハラの判断基準


実は、カスハラの判断基準は法令等では定められていません。
そのため、企業は自社の判断基準を明確化し、その考え方や対応を十分に社内周知しておく必要がありますが、判断基準を設定することはなかなか難しさもあります。
そこで、考え方の例として、以下の①②による観点で判断基準を決めることもできます。

①顧客や取引先の要求内容に「妥当性」はあるか
自社サービスの過失や商品の欠陥などがあれば、改善を求めるクレームや苦情は妥当です。
一方で、顧客の主張と事実を確認したとき、自社サービスや商品に過失が認められないなどの事実無根の要求には妥当性がないと判断します。

②要求する手段などが「社会通念上相当な範囲」か
クレームの妥当性があったとしても、行き過ぎた要求や従業員の就業環境を害するものなど、社会通念上不相当なものはカスハラとなります。たとえば、暴言や脅迫、長時間または執拗に繰り返されるクレームなどです。状況次第では、傷害罪、暴行罪、脅迫罪、恐喝罪など、法令等に抵触する可能性もあります。

では、具体的にどういう行為が対象となるか、見て参りましょう。

【カスハラとなる可能性のある行為例】

カスハラに類する行為
(出典)厚生労働省『カスタマーハラスメント対策 企業マニュアル』P9

このような事例があった場合、企業にはどのような被害がもたらされるのか、そしてもし企業が適切な対応をとらなかった場合はどうなってしまうのか、
次回その続きをお伝えいたします。

この記事を書いたプロ

鈴木慎太郎

明るく働ける職場づくりと労務管理のプロ

鈴木慎太郎(浜通り社会保険労務士法人)

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