【総括・提言コラム】誰も“加害者”にも“被害者”にもならない社会をつくるために
子どもの問題行動は「性格」ではなく 発達の途中で生じた“空白”から始まっているかもしれません
子どもの
・すぐキレる
・落ち着きがない
・集中が続かない
こうした行動を前にすると、
「性格の問題なのでは」
「育て方が悪かったのでは」
と悩まれる保護者の方は少なくありません。
しかし、現場で多くの子どもたちと向き合ってきた中で、
私は別の視点を持つようになりました。
それは、
問題行動は“心”の問題として現れる前に、
身体と脳の使われ方の段階で起きていることが多い
という視点です。
実際に観察してみると、
問題行動が見られる子どもたちに共通しているのは、
ある特定の脳の働きが十分に使われていない状態です。
そして興味深いことに、
ボールを投げる・避ける・当てるといった
身体を使った体験によって活性化する脳の部位は、
問題行動が見られるときに
機能が低下している部位と重なっているケースが多く見られます。
これは決して新しい理論ではありません。
人類は太古の昔から、
生きるために必要な能力を
「投げる」
という行為を通して獲得してきました。
走るよりも前に、
距離を測り、判断し、影響を与える。
その経験が、
行動や感情をコントロールする力の土台になってきたのです。
現代の子どもたちは、
便利で安全な環境の中で育つ一方で、
こうした発達体験を十分に積む機会が
少なくなっているのかもしれません。
私はこれを
**「発達の空白化」
**と呼んでいます。
これは診断名ではありません。
誰にでも起こり得る、
発達の途中で生じる“つまずき”の状態です。
実際に、
ボールを使ったシンプルな体験を通して、
表情や行動が落ち着いていく子どもたちを
数多く見てきました。
信じるかどうかは、
無理に決める必要はありません。
ただ、
「叱る」「直す」前に、
発達の土台を見直すという視点がある
ということを、
一度知っていただけたらと思います。
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参考図書
① 脳・発達・行動の基礎理解(中核)
• 『脳を鍛えるには運動しかない!』
ジョン・J・レイティ(NHK出版)
→ 運動が前頭前野・感情制御に与える影響
• 『スマホ脳』
アンデシュ・ハンセン(新潮新書)
→ 現代環境と脳機能低下の背景説明
• 『子どもの脳はどのように発達するのか』
エリック・H・エリクソン(ミネルヴァ書房)
→ 発達段階・順序性の理論的土台
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② 感覚統合・身体と脳の関係
• 『感覚統合の発達と支援』
A. ジーン・エアーズ(協同医書出版社)
→ 身体経験と行動・情緒の関係
• 『からだが変わると心も変わる』
成田奈緒子(講談社)
→ 身体アプローチによる情緒・行動の変化
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③ 運動・遊び・発達の本質
• 『遊びが子どもをつくる』
佐伯胖(岩波新書)
→ 遊びが発達の基盤になるという視点
• 『子どもは動きながら考える』
明和政子(PHP研究所)
→ 動作と認知の同時発達
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④ 人類史・本能・進化的視点
• 『サピエンス全史』
ユヴァル・ノア・ハラリ(河出書房新社)
→ 人類が獲得してきた能力の順序
• 『ヒトはなぜ投げられるのか』
デイビッド・エプスタイン(早川書房)
→ 投擲能力の進化的意義
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