相続放棄申述書の添付書類とその注意事項
相続が開始したときに、相続人は以下の3つのうちからいずれかを選択することができます。
⑴単純承認・・被相続人の権利と義務をすべて受け継ぐ
⑵限定承認・・被相続人のプラス財産の限度内で被相続人の債務負担を引き継ぐ
⑶相続放棄・・被相続人の権利と義務を一切受け継がない
今回は、⑶相続放棄についてです。
相続放棄の手続き
相続人が相続の放棄を家庭裁判所に申述した場合、亡くなった被相続人の権利や義務を、その申述をした相続人は一切引き継ぎません。
1.相続放棄の申述
⑴申述人
相続人が「単独」で相続放棄の申述をすることができます。
相続人が未成年者または成年被後見人の場合には、親権者や成年後見人などの法定代理人が、これらの者を代理して申述することになります。
⑵特別代理人の選任
以下の場合には、当該未成年の子について特別代理人を選任しなければなりません。
①被相続人がX、相続人はXの妻Y、未成年の子Aのケースで、Aのみが相続放棄の申述をする場合、Aについて
②被相続人がX、相続人はXの妻Y、未成年の子A、未成年の子Bのケースで、Yが先に相続放棄をし、Aを代理して相続放棄の申述をする場合、Bについて
⑶申述期間
熟慮期間である、「相続人が自分のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内」です。
⑷申述先
亡くなった方(被相続人)の最後の住所地の家庭裁判所です。
⑸申述に必要な費用
申述人一人につき、収入印紙800円分
連絡用の郵便切手
※福岡家庭裁判所の場合470円分
(82円×5枚、10円×5枚、5円×1枚、1円×5枚)
⑹申述申立の添付書類(福岡家庭裁判所の場合)
①共通
・被相続人の住民票の除票の写し(本籍あり、マイナンバー記載なし)または戸籍の附票
・相続放棄する人の現在の戸籍(3か月以内のもの)
②放棄する人が被相続人の配偶者
・被相続人の「死亡」の記載のある戸籍
③放棄する人が第1順位(子またはその代襲者)
・被相続人の「死亡」の記載のある戸籍
・被相続人の戸籍と放棄する人の同籍時の戸籍
・放棄する人が代襲者(孫、ひ孫)であるときは、被代襲者(子)の「死亡」の記載のある戸籍
④放棄する人が第2順位(直系尊属)
・被相続人の出生から死亡までの戸籍
・被相続人の子およびその代襲者で死亡している方があるときは、その方の出生から死亡までの戸籍
⑤放棄する人が第3順位(兄弟姉妹またはその代襲者)
・被相続人の出生から死亡までの戸籍
・被相続人の子およびその代襲者で死亡している方があるときは、その方の出生から死亡までの戸籍
・被相続人の父母・祖父母で死亡している方があるときは、その方の「死亡」の記載のある戸籍
(ただし、父または母の誕生日が大正14年以前のときは、その方の先代の戸籍は省略可)
・放棄する人が代襲者(甥・姪)であるときは、被代襲者(兄弟姉妹)の「死亡」の記載のある戸籍
相続放棄の申述期間の「知った時から」
相続放棄の申述期間は、」相続人が自分のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内」とされていますが、この「知った時から」について、判例は「相続人が相続財産の存在を認識した時または通常これを認識できる時から起算すべき」としています。
相続放棄の効果
相続放棄をした者は、初めから相続人でなかったものとみなされますので、相続欠格者や廃除者と異なり、放棄者の子は代襲相続をすることはできません。
相続放棄をしたときの「みなし相続財産」の取得
死亡保険金は、民法上は相続人の固有財産とされていますので、保険金の受取人が相続放棄をしていても、死亡保険金を受け取ることができます。
しかし、税法上は相続放棄をした場合には遺贈によって取得したものとみなされることから、非課税の適用を受けるとこができません。
相続開始前の相続放棄
相続が開始する前に相続放棄の意思表示はできません。
したがって、相続開始前に推定相続人の間で相続放棄をする旨の合意をしても無効です。
なお、遺留分については相続開始前であっても、これを放棄することができます。
相続放棄のサポートは、こちら