あなたの保険の常識を疑ってみませんか?

久保逸郎

久保逸郎

テーマ:保険

ファイナンシャルプランナー(FP)の久保逸郎です。

「社会人になったから保険に入らないと」
「結婚したら家族のために保険に入るのが当たり前」

あなたはこのように思い込んでいませんか?
私自身も新卒の入社式の直後に、会社で説明会を聞いて生命保険に加入しましたし、以前はとくに疑いもしないで、このようなことを当たり前だと思っていました。

しかし、海外の資産構成を分析したり、海外に出掛けて多くの外国人と話しているうちに、「日本人の保険の常識はおかしいのでは?」と考えるようになりました。
以前ベトナムに行って10日間滞在した時には、ベトナム人が「死んだ後のことまでそんなに心配するなんて、日本人はおかしい」と笑っていました。
ベトナム人に限らず、それがむしろ世界の人々の一般的な感覚です。

日本人は世界一の保険好き

あなたは日本が「世界一の保険好き」の国であることをご存じですか?
生命保険協会によれば平成30年度の保険会社の営業職員が約23万人、代理店所属の募集人が約100万人で、両方合わせて約120万人もの方々が生命保険の募集に従事しているそうです。(データ出所:生命保険協会「2019年版生命保険の動向」)
つまり国民の約100人に1人が、生命保険の販売に従事しているわけです。
GHQによる戦後の寡婦対策で保険レディが広まったそうですが、それにしても保険販売に従事している人が多過ぎますよね。

生命保険の世帯加入率に至っては88.7%(生命保険文化センター、平成30年度)で、世界で最も高い水準です。
ちなみに死亡保険の加入率は、米国は約20%、英国は約40%程度しかありません。
この数字の違いを見れば、日本の加入率が極めて異常であることがわかりますよね?



日本は長寿国で、社会保障も整っているのに

この事実はとても不思議です。
なぜなら日本は世界一を争うような長寿国だからです。
また、長寿国であるだけでなく、北欧ほどではないものの社会保障制度はしっかりと整っています。

以前ある外資系生命保険会社のCEOが「日本は世界一利益率が高い」と言っていましたけど、日本人はなかなか死なないのに、みんなが生命保険に加入して、そして「世界一高い」といわれるくらい高水準の保険料を払ってくれるわけですから、保険会社は笑いが止まらないでしょう。
生命保険会社の利益は平成27年度から4期連続で伸び続けていますが、国民がたくさん保険料を支払っても、それがしっかりと国民に還元されていない構図になっているのです。

実際に(運用の一環という側面はあるにしても)日本中どこにいっても大都市の駅前の一等地には保険会社のビルが建ち並んでいますし、他の業種に比べて保険会社の職員は高い給料水準になっています。
フルコミッション型のセールスの中にはプロ野球選手並みに稼いでいる人もいます。

高い保険料を払っても、豊かになれない日本人

その一方で、保険に加入をしている国民は豊かになっているかというと、そうではありません。
米国や欧州に比べて、日本人の所得や保有金融資産の伸びが大幅に下回っていることを考えればそれは明らかで、保険はむしろ日本人の資産形成の足を引っ張っているような形になっています。

なぜなら近年は超低金利の環境が続いているため、貯蓄性の保険に加入してもほとんどお金をふやすことはできないからです。
国内の金利水準が低いため、金融機関や保険ショップなどは積極的に外貨建て保険を勧めていますが、対象となる米国(米ドル建て)やオーストラリア(豪ドル建て)も現在は過去最低レベルの金利水準にあるため、本来はこのようなタイミングで保険加入するべき商品ではありません。
もはや「保険でお金がふやせる」というのは、過去の常識なのです。



貯蓄を増やすために保険の常識の見直しを

私はけっして「保険が必要ない」と伝えたいわけではありません。
相互扶助の仕組みとして、保険は生活者にとって必要な大切な仕組みであると思います。
しかし、FPとして多くのご家庭の家計を見ている中で、保険料を払い過ぎているがために、なかなか貯蓄を増やすことができない世帯が多いことに大変疑問を感じています。

以前FinancialAdviserという金融専門誌に、「FPが家計を見直して、生命保険を中心にプランを立てているのは日本と韓国だけ」ということが書かれていました。
私のようにファイナンシャルプランナー(FP)の資格を持っている人でさえも、大半が日本の保険の常識が海外と比べて大きく異なることに気づいていないのです。

ちなみに昨年話題になった老後2000万円問題の報告書(金融庁:金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」)では、老後に向けて「保険でお金を貯めましょう」なんていうことは一切書かれていません。
報告書では生命保険料控除にさえ触れていないのです。
(老後2000万円問題を受けて、老後資金を準備するような貯蓄性のある保険に加入してしまった人も多いようですが、そのような方は一度この報告書を読まれたほうがいいと思います。)

新型コロナウイルスの影響で「ニューノーマル」という言葉をよく聞くようになりましたが、ぜひ一度ご自身が持っている保険の常識を疑って、正しいのかどうか、今の時代に合ったものなのかどうかを考えてみてください。
それはきっとあなたの貯蓄(資産)をふやすことに繋がってくるでしょう。

最後になりますが、日本では「社会人になったら、とりあえず保険に入りましょう」と勧められますが、米国などでは「株を買いなさい」と勧められるのがスタンダートです。
社会人になってとりあえず保険に入った人と、投資を始めた人では、10年後・20年後・30年後の金融資産がどれほど違ってくるか・・・
ぜひ想像してみてくださいね。


2014年6月30日 RKB毎日放送「今日感ニュース」


2007年9月1日 『マネープラス』2007年7月号
お金のプロ100人に聞いた「100万円の貯める増やすベストな預け先」アンケートに回答

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ライフプランと資産運用(投資)のエキスパートとして、全国各地で年間100回程度の講演を行ったり、数多くのテレビやマネー雑誌などに取り上げられている実力派ファイナンシャルプランナー(FP)です。

久保逸郎プロは九州朝日放送が厳正なる審査をした登録専門家です

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