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マイナス金利導入で資産全体の運用見直しが求められている

2016年2月10日 公開 / 2018年4月17日更新

コラムカテゴリ:お金・保険

ファイナンシャルプランナーの久保逸郎です。
週末2月7・8日に息子と宮崎までプロ野球のキャンプ見学に行ってきました。
オリックスとソフトバンクの2球団のキャンプを見ましたが、プロの練習といえども基本練習をしっかりと行っていたことが印象に残りました。
何事も基本が大切だということですね。

さて、日本銀行が1月28日・29日に行われた金融政策決定会合で、我が国では初めてマイナス金利の導入を決めたことはご存知だと思います。
これは金融機関が日銀当座預金(金融機関が日本銀行に預ける口座)に預けているお金の一部に対して、付利として0.1%の利息をつけていたものを、2月16日以降はマイナス0.1%にするということです。
ECBのマイナス金利と違って銀行のショックを和らげるために、日銀当座預金の基礎残高はこれまで通り0.1%の付利を適用、マクロ加算残高はゼロ%、そして政策金利残高に対して-0.1%のマイナス金利を適用という3段階の形のため、その効果の波及には少し時間がかかるものと思います。

足元ではマイナス金利のサプライズ効果は数日で失われ、円高・株安が急速に進んでいますが、2月16日から開始される制度であること、もともと効果が出てくるまで時間がかかる仕組みであることを踏まえれば、やや長い目で考えたほうがよいものと思われます。

マイナス金利の導入で融資の増加を狙う

このマイナス金利が導入された背景としては、日本銀行は黒田総裁就任直後の「異次元緩和」とも言われた金融緩和策実施以降、国債を大量購入して年間80兆円のペースで市場に供給する資金を増やしてきました。
しかし、その一方で民間の少子高齢化で市場の縮小が見込まれる日本国内での企業の資金需要は弱く、また、リスクを取れない銀行の融資姿勢などもあって、銀行の貸出等はそれほど伸びていませんでした。
結果的に市場に資金を送り込んでも日銀当座預金のほうに戻ってきてしまう傾向が見られました。

銀行側からしてみれば日銀当座預金に預けていればリスクを取ることなく0.1%の利息がもらえたので、現在の0.02%(三菱東京UFJ銀行、2016年2月1日現在)との差で一定の利ザヤを稼ぐことができました。
だからリスクを大きくとってまで貸出を行わなくていい環境にあったのです。
しかし、今回2月16日から預け入れる資金に対してはマイナス金利(-0.1%)が適用されてしまうので、金融機関としてはむしろ日本銀行に対して手数料を払うことになってしまいます。
今回日本銀行がマイナス金利の政策を導入することによって、金融機関がこれまでの姿勢を改めて融資などのほうに積極的に動くように仕掛けたのです。

個人の預金がマイナス金利になるわけではない

それではマイナス金利は私達の生活にはどのように影響が出てくるのか?
マイナス金利は日本銀行と金融機関の間の金利なので、けっして個人が銀行に預けた時の金利がマイナスになるというわけではありません。
2015年1月にマイナス金利(-0.75%、中銀預金金利)を導入したスイスにおいても、顧客の預金にマイナス金利を適用した銀行はごく一部に限られています。
個人の預金にマイナス金利が適用されるとタンス預金などの方向にいってしまう可能性があるので、日本でも顧客の預金をマイナス金利にすることは考え難いと思います。

しかし、マイナス金利の導入を受けて早速長期金利がマイナスになるなど金利が大きく下落し始めています。
今後さらに低金利化が進み、しばらくの間はこれが定着する可能性が高いでしょう。
住宅ローンなどの借入金利が下がるので、生活者はまずはそれらの借換を考えてマイナス金利のメリットを享受してもらいたいですね。
その一方で、金利低下の影響で終身保険や養老保険・学資保険などの予定利率が下がるなど、元本確保型などの貯蓄性の金融商品の魅力は大きく失われていくことになります。

株式やREIT(リート)市場にとっては追い風

また、マイナス金利の導入を受けて銀行以外のセクターの株価が急上昇したように、株式市場やREIT(リート)市場などにとっては今回の決定は大きなプラス材料であるはずです。
金融機関が民間企業に対して積極的に融資を行うことは景気の上昇につながりますし、また、金融機関が自らリスクをとって資産運用を行うことは株式市場やREIT市場などに向か資金量の増加につながります。
中長期的にはバブルを引き起こす危険性も含んでいると考えていますが、当面はこれらにとっては大変な追い風であることは間違いありません。

このようにマイナス金利の導入で債券の金利水準の低下が進むことが予想される一方で、株価やREITのようなリスク資産にとって追い風である状況です。
その一方で、円建てで元本確保型のような商品の魅力が急激に失われています。
足元の株式市場の急落などで先行きへの不安が先行している状態ではあると思いますが、実体経済よりも下がり過ぎているところです。

個人投資家の皆さんは過度の不安に陥らないで、少しずつリスク資産のウエイトを上げていくなど、長期的な視点で今回のマイナス金利の導入を踏まえた資産全体の配分(アセットアロケーション)の見直しを行ってみてはいかがでしょうか?

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