住宅ローンの不正利用の記事について
「頭金は2割以上必要」はもう古い
住宅購入にあたって昔は「頭金は(物件金額の)2割以上必要」と言われていました。
しかし今でも経済の専門家やファイナンシャルプランナーなどのコラムの中には、そのように主張しているものを見かけることがあります。
昔の「2割以上の頭金」という根拠は以下の2つにありました。
①住宅金融公庫(現在の住宅金融支援機構:フラット35)や銀行の住宅ローンの多くは、ローン取組可能額が購入物件金額の8割までだった。それ以上の貸付をする場合もあったが、金利が高くなったり連帯保証人が必要なこともあった。
②昔は金利が高かったため、多く借りれば借りるほど今では考えられないくらいの利息を払わなければならなかった。その頃は「住宅ローンの返済総額は借りた金額の約2倍」とも言われていた。
住宅購入にあたって頭金を多く準備することが出来るのであれば、それに越したことはありません。
ただし何かの記事やコラムで「頭金は2割以上必要」との記述を見かけても、絶対にそれに従わないといけないということはないでしょう。
頭金の割合 今のトレンドは?
では最近マイホームを購入している人は頭金をいくらほど準備しているのでしょうか?
それについては住宅金融支援機構の「住宅ローン利用者の実態調査」が参考になるでしょう。
住宅ローン利用者の実態調査(2021年4月調査)
この中で「7 融資率」を見てみましょう。
融資率とは、住宅ローンの借入金額が購入物件金額に対して何%かということです。
調査結果によると、最も多いのは「90%超100%以下」となっています。
このグラフは適用金利の種別(固定、変動など)によって分けられていますが、利用されることが最も多い変動金利で借りた方のデータを抜粋するとこのようになります。
あくまでも変動金利で借りた方のデータですが、頭金が0%~10%の傾向が高いようです。
ただしマイホーム購入には諸経費も必要なので、自己資金としては5%~15%というところでしょうか。
私がこれまで住宅ローンの事務手続に関った経験から、これは的確な調査結果だと考えられます。
頭金を貯めて買う? 頭金が少なくても早めに買う?
これについては、それぞれのメリット・デメリットを考えて比較することが大事です。
頭金を貯めて買う
メリット
・借入金額が少なくなるにあたって毎回の返済額の軽減につながる
・頭金割合に応じて金利優遇が適用される金融機関がある(例:ARUHIのスーパーフラット35)
・住宅ローンの審査をする側から見れば申込み内容の印象が良い(審査がスムーズ・早い)
・住宅ローンの返済途中でもいざという時に売却しやすい など
デメリット
・金利や税制や社会情勢の変化に対してタイミングよくマイホームが買えるとはかぎらない
・頭金を貯めるのに時間がかかれば購入時年齢が上がる(住宅ローンの完済年齢が上がる)
・頭金と貯める間も当然ながら家賃などの住居費がかかる など
頭金が少なくても早めに買う
メリット
・金利や税制や社会情勢の変化に対してタイミングよくマイホーム購入を検討できる
・若いうちに買うことで定年前に住宅ローンを完済することも可能
・若いうちから不動産の財産形成ができる など
デメリット
・頭金が少ないことで金利優遇を受けられない場合がある
・住宅ローンの審査では物件の担保評価の他に属性(勤務先の内容など)も重視して審査される場合がある
・住宅ローンの返済途中で売却を考えた時に住宅ローン残高次第ではスムーズに売却できない場合がある など
まとめ
今はフラット35はじめほとんどの金融機関で、住宅購入にかかる諸経費も含めて住宅ローンを取り組むこともできます。
しかし借入金額が増えれば当然ながら返済額や利息が増えることにつながります。
このように頭金を貯めて買う方がよいか、頭金が少なくても早めに買う方がよいか、自身の収入状況やライフプランを考えながら、そしてメリットとデメリットをよく理解して検討することが重要と言えるでしょう。