私がICT教育に携わった理由(わけ)
ICT支援員は“パソコンの先生”ではありません。

「ICT支援員って、パソコンに詳しい人でしょ?」
学校現場で、これまで何度もこう言われてきました。
久留米で2年間、他の自治体で1年半、
そして会社(株式会社CNCコンサルティング)の再始動を経て、
再び久留米に戻ってきた今——
やはりこの言葉を耳にします。
けれど、現場に立つとすぐに気づくのです。
そのイメージは、現場の実態とは大きく違う。
◆ 誤解① ICT支援員=“パソコンに強い人”
もちろん知識は必要です。
タブレットの基本操作、ネットワーク、アプリ、設定……。
けれど実際の現場では、それだけでは足りません。
授業の5分前に突然起こるトラブル。
先生の「今日はうまくいくだろうか…」という不安。
タブレットを手に戸惑う子どもたち。
そんな場面で必要なのは、
知識よりも、安心を提供する力です。
「大丈夫ですよ。すぐ対処できます。」
そう声をかけるだけで、先生の表情が変わります。
空気が、ふっと軽くなるんです。
ICT支援員に求められているのは、
“技術者”というより 信頼を届ける存在 なのだと感じています。
◆ 誤解② ICT支援員は“教えに行く人”
これは大きな誤解です。
ICT支援員は、
授業の主役ではありません。
教えるのは先生であり、
学びをつくるのは子どもたち。
支援員は、
その舞台がスムーズに進むように
影で支える黒子(くろこ) のような存在です。
支援員が目立ちすぎると、授業は崩れます。
「先生ではなく支援員に聞けばいいや」という流れが生まれ、
指示系統が乱れてしまうのです。
ICT支援員に必要なのは、
控えめさと存在感のバランス。
決して前に出すぎず、
でも、必要な瞬間にはすぐ動く。
その立ち位置こそが“現場力”だと感じています。
◆ 誤解③ ICTを使えば授業は自然と良くなる
これは、3年半の支援経験で最も強く感じてきた誤解です。
「とりあえずタブレットを使ってみる」
「とりあえずアプリを開いてみる」
「とりあえず持たせておく」
——この“とりあえず”が、授業を混乱させます。
ICTは魔法ではありません。
目的が無いまま使うと、負担と混乱だけが増える。
大切なのは、
「何のために使うのか?」
「どんな学びを生みたいのか?」
ここを先生と一緒に考えることなのです。
◆ ICT支援員に必要なものは“スキル”だけではない

3年半の現場経験、
そして1年間の会社再始動を経て見えてきたのは、
ICT支援員に本当に必要なものは
“立ち回り力”と“人間力” だということ。
・先生の気持ちに寄り添う
・子どもたちを不安にさせない
・トラブル時に冷静さを保つ
・余計な一言を言わない
・でも、必要な支援は一歩前へ
この“距離感”こそが、
支援員の価値を左右します。
技術よりも、
人としてどうそこに立つか。
それが現場で最も問われる力です。
◆ ICT支援員の価値は「目に見えないところ」にある
授業がスムーズに進んだとき、
その裏には支援員の存在があります。
・通らなかったWi-Fiを事前に整えていた
・教材がどこにあるか先生に事前に共有した
・子どもの“わからない”を静かにサポートした
・エラーが出る端末を前日に交換しておいた
これは全部、表には出ません。
でも、授業がうまく進んだ日は、
「やってよかった」
そう思える仕事です。
ブランクを経て、再び現場に戻ってきて強く感じるのは、
この仕事はやっぱり、誰かの役に立てる仕事だ
ということです。
◆ 次回予告
第2回|先生方が本当に困っていることベスト5
久留米でも他自治体でも、何百回と目にしてきた
“先生のリアルな困りごと”をお伝えします。
■ すべてのコラムはこちら
https://mbp-japan.com/fukuoka/cncconsultingpro/service1/



