第2回:Raspberry Piって何? ― 小さなPCの仕組み

佐々木康仁

佐々木康仁

テーマ:電子工作

■ 手のひらサイズの「本物のコンピューター」

前回のコラムでは、思わずアマゾンで“ポチッ”と買ってしまったRaspberry Pi(ラズベリーパイ)を組み立てるまでの話をしました。
「基板のようなものを買ってしまったけど、これって一体なに?」と疑問に思う方も多いでしょう。

Raspberry Piは、イギリスのRaspberry Pi財団という教育団体が開発した「シングルボードコンピューター(Single Board Computer=SBC)」です。
名刺サイズの小さな基板の上に、パソコンに必要な主要パーツ――CPU、メモリ、USBポート、HDMI端子、LANポート、GPIO(入出力ピン)――がすべて載っています。

つまりRaspberry Piは、“小さくて安いけれど、れっきとしたパソコン”なのです。

■ 普通のパソコンとどう違うの?

見た目はまったく違いますが、Raspberry Piもパソコンも「コンピューターの仕組み」は同じです。
OS(オペレーティングシステム)をインストールし、モニターとキーボード・マウスをつなげば、インターネットも使えるし、アプリも動きます。

ただし、大きな違いは「自分で環境を作る」ことを前提にしている点です。
通常のパソコンは電源を入れればすぐ使えますが、Raspberry Piは、まず自分でOSをmicroSDカードに書き込み、起動するところから始まります。

この「自分でセットアップして動かす」体験が、まさに学びの第一歩なのです。

さらに、Raspberry PiにはGPIO(General Purpose Input/Output)という“電子工作用の端子”が搭載されています。
これを使えば、LEDを光らせたり、スイッチやセンサーを接続したり、モーターを動かしたりと、パソコンではできない「ものを動かす体験」ができます。

■ Raspberry Piが生まれた理由

Raspberry Piが誕生したのは、もともと「子どもたちにコンピューターの仕組みを学んでほしい」という教育目的からでした。
開発したのは、ケンブリッジ大学の技術者たち。

当時、学生たちは“スマホやタブレットでアプリを使うこと”には慣れていても、
“コンピューターを自分で動かす”経験が圧倒的に減っていたそうです。

そこで、「安くて手軽に触れるコンピューターを作ろう」として生まれたのがRaspberry Piです。
価格はモデルによりますが、おおよそ1万円前後。
誰でも気軽に“自分の手で仕組みを理解できる”環境を提供したのです。

■ 教育からIoT、AIまで広がる活用シーン

最初は教育用として誕生したRaspberry Piですが、今ではその用途は大きく広がっています。
・センサーを使った温度・湿度のモニタリング
・防犯カメラやペット見守りカメラ
・スマート家電の自作コントローラー
・音楽再生機、家庭用サーバー
・AIカメラや音声認識デバイスの試作機

特にRaspberry Pi 5は処理能力が高く、画像認識やAIとの連携も可能です。
つまり、「電子工作」「プログラミング」「AI学習」「IoT開発」のすべての入り口になりうる存在なのです。

■ “触ってみる”ことが最高の学び

私自身、教育現場でICT支援員として活動する中で感じるのは、「触って学ぶ」ことの大切さです。
Raspberry Piのような実体を前にすると、子どもも大人も自然と質問が出てきます。
「これ、どうやって光るの?」「なんでここに線をつなぐの?」
それが思考のはじまりであり、創造の第一歩です。

仕事や生活の中でAIやデジタルの話題が増える今こそ、
“仕組みを理解するための小さな実験”をしてみるのも面白いと思います。
Raspberry Piは、まさにその最適なツールです。

■ 次回予告

次回は、いよいよRaspberry Piを実際に動かしてみます。
「OSをインストールして起動する」――その瞬間に、小さな基板が本物のコンピューターとして立ち上がります。
第3回では、そのセットアップ手順と、初心者でもつまずかないポイントを詳しく紹介します。

このコラムは、日々の教育支援の中で感じたことや学んだことをもとに書いています。
Raspberry Piは私の大切な趣味のひとつで、作りながら学べるこの面白さを、皆さんにもぜひ体験してほしいと思っています。

■Raspberry Piで広がる電子工作の世界

これまでの回や今後の更新予定は、こちらのまとめページでご覧いただけます。
Raspberry Piで広がる電子工作の世界|特集ページ(更新中)
教育・IoT・AIなど、Raspberry Piがもたらす新しい可能性を引き続き紹介していきます。

このコラムは、連載「Raspberry Piで広がる電子工作の世界」シリーズの一部です。

これまでの回や今後の更新予定は、こちらのまとめページでご覧いただけます。
Raspberry Piで広がる電子工作の世界|連載まとめ
趣味としての電子工作から、教育や実践に活かせるヒントまで、“作ること”の楽しさをこれからもお届けします。

■ すべてのコラムはこちら
https://mbp-japan.com/fukuoka/cncconsultingpro/service1/

\プロのサービスをここから予約・申込みできます/

佐々木康仁プロのサービスメニューを見る

リンクをコピーしました

Mybestpro Members

佐々木康仁
専門家

佐々木康仁(ITコンサルタント)

株式会社CNCコンサルティング

対面と非対面を組み合わせた独自のマーケティング手法、ChatGPTを活用するための基礎的な講習、小学校などでのICT教育支援を事業の柱とする。数々の職業を経験し“現場感覚”でサポートできるのが強み。

佐々木康仁プロは九州朝日放送が厳正なる審査をした登録専門家です

関連するコラム

プロのおすすめするコラム

コラムテーマ

コラム一覧に戻る

プロのインタビューを読む

マーケティング、生成AI、ICT教育のコンサルを手掛けるプロ

佐々木康仁プロへの仕事の相談・依頼

仕事の相談・依頼