週末コラム | 第1回 再び風を感じた日 ― 30年ぶりのツーリング体験
「年に一度は阿蘇を走る」――
そう決めてから3年目の春を迎えました。
この年は、これまでと少し違う選択をしました。
いつもレンタルしていた400ccではなく、あえて250ccのバイクを選んだのです。
理由は単純でした。
もっと気軽に、もっと軽やかに走ってみたかったからです。
400ccは力強く、安定感があって頼もしいのですが、
取り回しの重さやクラッチの感触に、少し気を張るところもありました。
その点、250ccは車体も軽く、ハンドル操作に柔らかさがある。
「このくらいのほうが今の自分に合っているかもしれない」――そう感じての選択でした。
レンタルショップでバイクを受け取り、
エンジンをかけた瞬間の音は400ccよりも控えめで、どこか素直でした。
鼓動が柔らかく、心のリズムにすっと馴染んでいく。
スタートして数分で、「これはこれでいいな」と思っていました。
阿蘇へ向かう道のりでは、250ccならではの軽快さが心地よく感じられました。
カーブを抜けるたびに、体の動きにすぐ反応してくれる。
加速の勢いよりも、操作の素直さが気持ちを楽にしてくれました。
400ccで感じていた“走らせる力強さ”とは違い、
250ccには“走りと一緒に呼吸できる軽やかさ”がありました。
天気にも恵まれました。
広がる青空と、ゆるやかに続く外輪山の道。
風は少し冷たく、それがヘルメットの中の空気を心地よくしてくれました。
走りながらふと感じました。
「バイクの排気量が変わっても、阿蘇の風は同じだな」と。
途中の休憩所でバイクを止め、コーヒーを飲みながら草原を眺めました。
見慣れた風景なのに、何度見ても新鮮でした。
軽いバイクで走ってきたからか、体の疲れも少なく、
心に残るのは“走った充実感”よりも“癒された時間”でした。
若い頃は、400ccや750ccといった“大きさ”に憧れていました。
しかし今は、どれだけ遠くまで行けるかよりも、
どれだけ心地よく走れるかが大切になっていました。
250ccの軽快さは、まさにその答えをくれたように感じます。
帰り道、夕陽に照らされた外輪山の稜線を眺めながら、
「もう少し走りたいな」と思いました。
それは、バイクに乗る喜びが“義務”ではなく、“自然な欲求”になっている証拠でした。
この3年目のツーリングで、私は一つの確信を得ました。
排気量の大小ではなく、自分の体と心に合ったバイクこそが、
本当に「楽しく、無理のない」走りを生み出すということです
阿蘇の風はいつも同じように吹いていました。
変わったのは、私の走り方と、心の穏やかさでした。
そして、その違いを感じられるようになった今だからこそ、
「もう一度、ここに戻ってきてよかった」と心から思いました。
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