週末コラム | 第2回 2年目に広がった、走る楽しさと心の余裕

佐々木康仁

佐々木康仁

テーマ:バイク

5年前にバイクに“戻った”あの年は、何もかもが手探りでした。

エンジンをかけるだけで胸が高鳴り、クラッチを握る手には汗がにじんでいました。
とにかく「転ばないように」「無事に帰るように」と、それだけを考えていました。
久しぶりに走った阿蘇の道は相変わらず美しく、景色に心を奪われながらも、緊張感だけは最後まで抜けませんでした。

――そして翌年。

2年目の阿蘇は、まるで違う風景を見せてくれました。
同じ道を走っているはずなのに、目に映る景色も、心の中の感じ方もまるで違っていました。
それは“慣れ”がくれた心の余裕だったのだと思います。

レンタルショップでバイクを受け取るときも、
去年のような緊張感はどこかに消えていました。
エンジンをかけてクラッチをつなぐ動作にも、自然とリズムが生まれていました。
「さあ、行こうか」――そんな穏やかな気持ちで出発できたのを覚えています。

阿蘇へ向かう道のりでは、去年は感じられなかった“音”や“匂い”が心に残りました。
耳を澄ますと、風がヘルメットをかすめる音が心地よく、
山のふもとに近づくにつれて、草と土の匂いが混ざっていくのがわかりました。
1年目には気づけなかった、走る喜びの細部が見えてきたように思います。

そして、何より大きな違いは“景色を楽しめたこと”でした。
去年は前だけを見つめて必死に走っていましたが、
今年はカーブの先に広がる草原の緑や、遠くの山影の濃淡に自然と目が向きました。
走りながら「ああ、バイクってこういう時間だったな」と、
思わず笑みがこぼれました。

途中の休憩所では、バイクを降りてコーヒーを飲みながら、
ゆっくりと阿蘇の空を眺めていました。

去年と同じ場所に立ちながら、
「一年経って、またここに戻ってこられたんだな」と静かに嬉しくなりました。

若い頃は、どれだけ速く走れるか、そして仲間のバイクよりも速く走れるか、
そんなことばかりを競っていました。

でも今は違います。
速度を上げるよりも、風を感じ、景色を見て、心が落ち着く時間を大切にしたい。
無理をせずに走ることが、こんなにも心地よいものだとは思いませんでした。

帰り道、阿蘇の外輪山のカーブを抜けながら、
ふと、そのエンジン音が心地よく胸に染みていきました。
1年目は“挑戦”の走りでしたが、2年目は“寄り添う走り”でした。
バイクと呼吸を合わせるように、穏やかにリズムを刻みながら走る。
その感覚が、何より幸せに感じられました。

2年目の阿蘇は、“慣れ”がくれたご褒美のようなツーリングでした。
緊張が取れて初めて、本当の楽しさがやってきたのです。

そしてその楽しさは、若い頃のそれとはまったく違う――
“穏やかに満たされる時間”という、年齢を重ねたからこそ感じられる喜びでした。

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佐々木康仁
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佐々木康仁(ITコンサルタント)

株式会社CNCコンサルティング

対面と非対面を組み合わせた独自のマーケティング手法、ChatGPTを活用するための基礎的な講習、小学校などでのICT教育支援を事業の柱とする。数々の職業を経験し“現場感覚”でサポートできるのが強み。

佐々木康仁プロは九州朝日放送が厳正なる審査をした登録専門家です

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