週末コラム | 第1回 再び風を感じた日 ― 30年ぶりのツーリング体験

佐々木康仁

佐々木康仁

テーマ:バイク

若い頃、10年間ほど400ccのバイクに乗っていました。

休みの日には仲間と集まり、峠を走ったり、海沿いを流したり。
ただ走るだけで楽しかったあの頃、バイクは私にとって“自由”そのものでした。

でも、仕事に就き、結婚し、子どもが生まれ、
生活の中心が変わっていくうちに、バイクは少しずつ私の日常から離れていきました。
「またいつか乗れたらいいな」と思いながらも、
その“いつか”は訪れないまま、年月だけが過ぎていきました。

そして気がつけば60代になっていました。
そんなある日、なぜかふと心の奥でスイッチが入ったのです。
――もう一度、バイクに乗ってみたい。

思い立つと早く、ホンダのバイクショップへ足を運びました。
レンタルしたのは、昔と同じ400ccのバイク。

行き先は、若い頃にも何度も走った熊本・阿蘇。
あの頃の思い出が詰まった場所でした。

エンジンをかけた瞬間、胸の奥に響く音に懐かしさがこみ上げました。
ただ同時に、正直に言うと怖さもありました。
30年ぶりですから、手も少し震えていました。
クラッチの重さ、ハンドルの感触、停止からの発進。
頭では覚えているつもりでも、体がついてくるかどうか不安でした。

けれど、走り出して30分ほど経った頃でしょうか。
不思議と体が少しずつ昔の感覚を取り戻していきました。
クラッチをつなぐタイミング、カーブの入り方、風の流れ。
それらが自然と馴染んでいくのを感じたとき、
ヘルメットの中で思わず笑っていました。

阿蘇の道はいつも雄大でした。
広い空と、どこまでも続く草原。

走りながら、30年前の自分にまた出会えたような気がしました。
スピードを出すわけでもなく、ただ“風の中にいる”ことが嬉しかったのです。

ツーリングの途中で休憩を取り、山の上から阿蘇の大地を見渡しました。
風が頬をなで、草の匂いがかすかに漂ってきました。
その瞬間、心の底から思いました。
「やっぱりバイクっていいな」と。

それが、私の“再び風を感じた日”でした。

そしてこの体験が、また私の人生の小さな目標を作りました。
「年に一度は、阿蘇を走ろう」――
そんな自分との約束を胸に、再びバイクと向き合う日々が始まったのです。

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佐々木康仁
専門家

佐々木康仁(ITコンサルタント)

株式会社CNCコンサルティング

対面と非対面を組み合わせた独自のマーケティング手法、ChatGPTを活用するための基礎的な講習、小学校などでのICT教育支援を事業の柱とする。数々の職業を経験し“現場感覚”でサポートできるのが強み。

佐々木康仁プロは九州朝日放送が厳正なる審査をした登録専門家です

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