第4回:スタッフが辞めない職場をつくる
— 数字と人を両立させる“現場のリーダーシップ” —

「店長って大変そう」「責任ばかり重くて、割に合わない」
現場でよく耳にする言葉です。
確かに、店長の仕事は決して楽ではありません。
売上、人件費、スタッフ教育、シフト管理、クレーム対応――。
毎日が判断と対応の連続で、気づけば一日があっという間に終わります。
しかし、私は20年以上の店舗運営を通じて、こう確信しています。
店長とは、“利益をつくる職業”である。
そしてその利益とは、単にお金のことではなく、
「お客様・スタッフ・お店」の三者すべてに喜びを生む“人の利益”でもあるのです。
■「数字」と「人」のバランスが店を強くする
店長が目指すべきは、売上を伸ばすことだけではありません。
お客様に喜ばれ、スタッフが成長し、結果としてお店が繁盛する。
このサイクルを生み出すことこそが、店長の最大の使命です。
私がモスバーガーで働いていた頃、オーナーからこう教わりました。
「売上が悪い時だけでなく、“なぜ売上が良いのか”も考えなさい」
これは今でも大切にしている言葉です。
売上が良い時ほど、その理由を分析し、再現できる仕組みにする。
それができれば、安定的に成果を出し続ける「強い店」になります。
■「たらいの水の原理」が教えてくれたこと
もう一つ、忘れられない教えがあります。
オーナーがよく言っていた「たらいの水の原理」です。
「手前にかき寄せようとすると逃げていき、相手に押し出せば戻ってくる」
つまり、自分の利益だけを求めて動くと人も成果も離れていく。
逆に、相手(お客様・スタッフ)のために行動すれば、結果として自分に返ってくる――。
現場でお客様の笑顔を見て、「また来たい」と言ってもらえたとき、
その言葉が何よりの報酬でした。
“与えることが、最も大きな利益を生む”というこの原理は、
今も私のマネジメントの中心にあります。
■利益とは「感謝の総量」である
売上・粗利・人件費といった数字はもちろん重要です。
ですが、数字はあくまで結果です。
その前にあるのは、「お客様からのありがとう」「スタッフからの信頼」「地域からの応援」。
これらが積み重なるほど、自然と数字もついてきます。
だからこそ、店長は「感謝の総量を増やす仕事人」であるべきです。
お客様に喜ばれ、スタッフに慕われ、会社に信頼される。
それができた時、店長の仕事は“単なる管理職”ではなく、“価値を生み出す職業”になります。
■今日からできる実践ポイント
売上が良い理由を3つ書き出してみる。
成功の要因を言葉にすることが再現の第一歩。
「誰のためにこの仕事をしているか」を明確にする。
数字より先に“人”を見る。
1日1回、「ありがとう」を伝える。
チームの空気が変わり、結果的に利益もついてくる。
次回は第2回、
「なぜ売上が良い時こそ分析すべきなのか」
をテーマにお届けします。
数字の裏にある「人の動き」をどう読み解くか――、
16年の現場経験から具体的に解説します。
おまとめコラムはこちら
本連載「現場で磨く!マネジメントとマーケティングのリアル」では、
20年にわたる店舗運営の経験から、“人と数字を動かす力”の本質をお届けしています
これまでの回をまとめて読みたい方は、下記のおまとめページをご覧ください。
[現場で磨く!マネジメントとマーケティングのリアル(まとめページ)]
現場の知恵を次の世代へ――
マネジメントとマーケティングの“リアル”を、ぜひ感じてください。
著書紹介
このコラムの内容は、著書
『新米店長の道しるべ:16年の失敗と成功から学ぶ 』
(著:佐々木 康仁/出版社:CNCコンサルティング出版)
をもとにしています。
20年にわたり飲食・小売・サービス業の現場で店長として学んだ「リアルな経験」と、
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