『カリモク製 ドマーニチェアの籐を張り替える』
「土岐さ~ん!籐の椅子がやぶれたんです。孫の帰郷までに直せませんか。」
4月の春休みにお孫さんが帰郷するということで、愛媛県新居浜市・O様からSOSのお電話をいただきました。
この椅子は、現在も生産されているマルニ木工さんの地中海 レティーロチェアです。
かなり以前のマルニ木工さんの椅子は、ソロモンマホガニー材という強固な材料で作られていてとても貴重な椅子です。
修理作業中①/やぶれた籐シートの剥ぎ取り+新しい籐シートの準備
やぶれた籐シートを慎重に剥ぎ取ったのちに、木製フレームには新しい籐シートを張っていくうえで基準となる位置にマスキングテープで墨付け作業をしました。
もちろん新しい籐シートはオリジナル通り “四ツ目編み” の籐シートを用意しました。
新しい籐シートは、大きく分けて3種類あります。
写真右端がカゴメ編み(亀甲・大)、右から2番目がカゴメ編み(亀甲・小)、左端がO様の作業に使用した四ツ目編みです。
TOKI家具館メンテナンスではすべての種類を15m巻きで在庫しています。
そのため、O様のご依頼のような急な作業にも対応できるんです。
修理作業中②/新しい籐シートの張り込み(前半)
三次曲面の背もたれに新しい籐シートを、なるべく水平かつ左右対称に張り込んでいくためには慎重作業が必要です。
事前に付けておいた基準を目印にして、はじめに背もたれ上下を適度なテンション(引っ張り具合)で張り込んでいきました。
続いて、左右方向も張り込んでいきました。
新しい籐シートの張り込みは、溝の中に均一のテンション(引っ張り具合)で押し込んでいきタッカー釘で仮押さえします。
修理作業中②/新しい籐シートの張り込み(後半)
引っ張り代部分をカッターナイフで切り取り、ヘラで引っ張り具合をさらに調整しました。
タッカー釘の頭が見える溝を新しい籐の丸芯で埋め込んでいきました。
籐の丸芯は、溝に接着剤を入れてから埋め込むためで強固に接着できます。
こうした作業を通して、新しい籐シートの張り込み作業ができあがりました。
修理作業中④/養生作業+ウレタン塗装作業
籐の張り替え作業で、最後の工程はウレタン塗装作業です。
ウレタン塗装作業で大切なことは2点あります。
①もとの籐シートの色にできるだけ近い色で仕上げること。
O様のレティーロチェアは、全部で6脚お持ちです。そのため、ほかの椅子の籐シートの色とあまり違いが出にくいように考えて作業しています。
もちろん、30年以上もお使いの椅子と同じ色に仕上げるのは無理ですが、できるだけ近い色を目標にするため剥ぎ取ったやぶれた籐シートも最後の工程まで利用しています。
②フレームはウレタン塗料が付かないようにしておくこと。
ウレタン塗料が木製フレームに付きますときれいにはなりますが、ツヤが違ってきます。
O様の場合、6脚お持ちのうち1脚の籐の張り替え作業をする場合、木製フレームのツヤまでが違ってくるといけません。
そのため、ウレタン塗装前に木製フレームの養生作業をすることが大切なんです。
修理作業後 / 仕上がった椅子をO様にお届けしました。
「やっと仕上がりました!」
すべての作業が終わりますと、椅子全体の水平バランス調整など基本木工作業をしてお届けしました。
O様、ご依頼いただきありがとうございました。土岐泰弘
「TOKI家具館メンテナンスは新居浜市SDGs推進企業です。」
TOKI家具館メンテナンス(会社名:有限会社土岐家具店)は、新居浜市SDGs推進企業 登録番号第38号に登録されています。
新居浜市SDGs推進企業 TOKI家具館メンテナンス
新居浜市経済部産業振興課のみなさま・新居浜商工会議所のみなさま、ご尽力いただきありがとうございます。
平成時代までは、大量生産 → 大量消費 → 大量廃棄 の時代でした。
お客様からは「家具って、使い捨てでしょ。」という言葉もまだまだ聞きます。
でも、使い捨てや大量廃棄をこのまま続けていきますと、SDGs(持続可能)になりません。
令和時代になった現在、永く使える家具を注文に応じて必要な数だけ作り、メンテナンスを繰り返し末永く使っていく!
「メンテナンスを繰り返すたびに、家具への愛着も増していくと想われます・・・。」
最後まで、お読みいただきありがとうございました。土岐泰弘