『カリモク製 ドマーニチェアの籐を張り替える』

「永年使ってきて愛着ある椅子の籐がやぶれたんです。」

愛媛県新居浜市・T様から4脚お持ちのうち、背もたれの籐シートがやぶれた2脚をお預かりしました。

T様の椅子は、カリモクさんの上級ブランド『ドマーニ』の椅子です。
カリモクさんの上級ブランド『ドマーニ』は、TOKI家具館メンテナンスも約30年前にご紹介していたなつかしい椅子です。

修理作業中①/やぶれた籐シートの剥ぎ取り＋新しい籐シートの準備

籐シートの張り替え作業は、木製フレームをキズつけないようにやぶれた籐シートの剥ぎ取りはカンタンそうに見えてけっこうむつかしい・・・。
技術と経験が必要な作業なんです。
慎重に進めていかないと、お客様の大切な椅子の木製フレームにキズを増やしてしまう可能性があるんです。


籐シートの種類は3～4種類ありますが、もともと張っていたオリジナル通りの『カゴメ編み』の籐シートを準備しました。

また、この椅子はカリモクさんの上級ブランド『ドマーニ』らしく、背中を包み込むように三次曲面加工しているため、すべての作業は慎重を期して取り組みました。

修理作業中②/籐シートの張り込み作業

TOKI家具館メンテナンスの籐の張り込みは、すべての椅子の張り込み具合をできるだけ近くなるように工夫しています。

そのため、張り込みのスタート位置は、背もたれ上部の中央当りを基準としています。

続いて、背もたれ上部と下部を適度なテンション（引っ張り具合）で溝に差し込んでいきタッカー釘で固定しました。

背もたれ左右方向も上下方向と同じように、中央部を基準に固定しました。

溝からはみ出している引っ張り代は切り取り、籐の丸芯を用意して溝を埋めていきます。
籐の丸芯を埋め込む時は、背もたれ角の曲面部に注意してゆっくりと型を付けながら作業を進めていきました。

こういった手順で作業を進めることにより、椅子2脚の張り込み具合をできるだけ近くできたと想います。

修理作業中③/養生作業＋ウレタン塗装作業

永年使っている椅子の籐を張り替える場合、木製フレームに塗料が付かないように養生する必要があります。
TOKI家具館メンテナンスでは、古新聞を利用して養生作業をし、張り替えた籐シートに下地着色していく準備をしていきます。


オリジナル状態のようにウレタン塗装をするため、椅子2脚を塗装室に移動させました。

TOKI家具館メンテナンスのウレタン塗装は、親父の代から大谷塗料さんの環境配慮型塗料セーフティワルツを愛用しています。

ウレタン塗装は、ウッドシーラー（下塗り）→サンディングシーラー（中塗り）→ウレタンフラット（上塗り）と各工程2回塗りを基本としています。

1回の吹き付け作業が終わると、乾燥まで1時間くらい椅子を寝かして養生しておきます。

修理作業後 / T様のドマーニチェアが完成しました。

すべての籐の張り替え作業ができますと、座面を取り付けたのち基本木工作業としてフレームの水平バランス調整や脚先調整をすれば完成です。

TOKI家具館メンテナンスのような木工中心の家具店としたら、最後の基本調整作業がとても大切な作業だと思っています。
T様、ご依頼いただきありがとうございました。土岐泰弘

【お願い】複数の椅子をお持ちの内、すべての椅子の籐張り替えをしない場合のお願いです。

椅子の籐張り替え修理や塗装修理などでお使いの数脚の椅子の内、すべての椅子を修理しない場合に必ずお伝えしている大切なことです。

籐シートは自然素材のため経年変化していきます。
そのため、新しく張り込んだ状態と、10～20年お使いいただいた状態で、どうしても違いが出てしまうのです。

①色合いや艶の違いが出ます。
特に、今回ご紹介のカリモク製ドマーニチェアのように、生地色から着色塗装している場合、できるだけ近い色または純正ステイン（着色剤）で塗装しますが、微妙な色違いが出てしまいます。

生地色（ナチュラル色）仕上げの場合も、10～20年使っていますと日焼けや経年変化で “あめ色” になっているため、色違いが出てしまいます。
　生地色（ナチュラル色）仕上げの場合は、張り替え後 しばらく使ってますと日焼けして少しづつ近くなっていきます。

②肌触りの違いが出ます。
ほぼ毎日、椅子に座わってますと背中で「スリスリ」しています。
籐シートを背中で「スリスリ」してますと研磨効果があり、10～20年お使いいただくと籐シートの表面は「ツルツル」になってきます。

新しく張り込んだ籐シートは、自然素材のため「イガイガ」しているものです。
張り替え修理中、表面研磨やささくれを整えるなどの調整作業をしていますが、どうしても肌触りの違いが出てしまいます。

③籐の丸芯の直径サイズや打ち込み深さが違うことがあります。
張り替えた籐シートを押さえるために溝に打ち込む籐の丸芯は、4mm・4,5mm・5mmが代表的なサイズで、特によく使うのが4,5mmサイズです。

できるだけ同じサイズの籐芯を使ってますが、溝の幅や深さ、角のアール形状によって籐芯が折れたり割けたりしないように臨機応変に選んでいますので、オリジナルと違う場合もございます。

籐芯の打ち込み深さは、接着剤の効きなど耐久性を重視して作業していますので、微妙に深く打ち込むことがあります。

この3点の微妙な違いが出てしまうことは、ご依頼いただくみなさまにお伝えしていることです。
ご理解いただけますようお願いします。土岐泰弘