「椅子のぐらつき修理は家具修理の基本だと思う。」
「リビングドアの角が割れたんです・・・。」
「家具屋さんに聞くのもどうかと思いましたが、他に聞くお店がわからなくて・・・。」
愛媛県西条市・A様からお問い合わせをいただきました。
修理作業前/リビングドアの “めしあわせ” が割れてました。
A様と打ち合わせをしてますと、
「ドアごとすべてを交換しないといけませんか?」
という言葉もお聞ききしましたが、ドアを確認しますと、割れてしまっている “めしあわせ” 部分だけを新しく作り取り付けし直すことをご提案!
割れてしまっている “めしあわせ” 部分です。
このドアは、親子ドアの子供側で、親側のドアを閉める時に、勢いよく「バタッ!」と開け閉めしていたことが理由の一つと想像します。
「室内のドアや建具、家具の扉はやさしく開け閉めしてくださるようお願いします!」
修理作業中①/割れた “めしあわせ” の切り取り+下地調整
まず初めに、割れた “めしあわせ” の切り取り作業を進めていきます。
リビングドア本体をキズ付けてはいけないため、アサリが無い横切りのこぎりを使い手作業で切りました。
続いて、リビングドアの “めしあわせ” 取り付け部分の割れていた部分の圧着作業など下地調整作業をしました。
やっぱり、下地がしっかりしてないと、いくら良い “めしあわせ" を作っても強固に取り付けすることはできませんから・・・。
小さい力で圧着したい時に便利なのが、真鍮端金です。
この写真は、真鍮端金の収納箱です。真鍮端金の長さ別に、取り出しや収納が便利で使いやすく作りました。
修理作業中②/ “めしあわせ” のトリマー加工作業!
「トリマーは、私が大好きな木工道具の一つです!」
トリマーは、とても小さい電動工具ですが、いろいろな定規や治具(補助的な道具)を取り付けることで、応用範囲がある道具です。
A様のリビングドアのように、完成している家具や建具に手を加える場合は、動力機械の定盤に乗せることができないことも多いため、小さな電動工具が便利なんです。
この写真は、“めしあわせ” を作るために木工加工したオーク材の桟木(リビングドアの上)と、木製定規を取り付けたマキタ製トリマーです。
木製定規の取り付け部分の写真を紹介します。今回のビット(刃物)は、直径6mmのストレートビットです。
木製定規の奥行調整は、蝶ネジを緩めて行います。
“雇いさね接合” で取り付けするためのトリマー加工ができました。
リビングドアと “めしあわせ” を “雇いさね接合” するための掘り込み(写真右の溝)と、親子ドアのすき間用ブラシの貼り付け部の掘り込み(写真左の溝)です。
修理作業中③/ “めしあわせ” の塗装作業
続いての作業は、 “めしあわせ” の塗装作業です。リビングドア本体に、できるだけ近い色でウレタン塗装をしていきます。
塗装作業をしていく時に大切なことは「塗装部分は、接着できない」ということ!
準備として、“雇いさね接合” で接着する部分には、マスキングテープを貼り塗料が付かないようにしました。
キャピタルペイントさんのピュアPGステイン(油性)を刷毛塗りして、下地着色したした状態です。
ピュアPGステイン(油性)は、専用シンナーで希釈することで、出したい色が出やすい、お気に入りの塗料です。
塗装室に移り、ウレタン塗装をしました。右側に置いている元々の “めしあわせ” と近い色に仕上がりました。
下地着色後のウレタン塗装は、サンディングシーラー→ケバ取り研磨×3工程→調色作業→ウレタンフラット→ケバ取り研磨×3工程を基本としています。
修理作業中④/ “めしあわせ” の“やといざね接合”
“雇いさね接合”とは、接着したい双方の材料に一定の溝堀りをし、溝の厚みに応じた板を差し込み強度を得ようとする接合方法です。
リビングドア本体の溝と新しく作った “めしあわせ” の間に置いているのが、やといざねです。
やといざねは、溝に対して少しきつめに作るようにしています。この写真は、仮合わせした時のものです。
私は、どんな家具を圧着する時も仮合わせ作業や仮組み作業をするように心がけています。家具修理の仕事は、一期一会の仕事で、いつも違う家具と向き合っています。仮合わせ作業や仮組み作業などの準備作業をしておくと安心なんです。
そして大量のクランプを使い、“めしあわせ” をリビングドア本体に圧着していきました。
修理作業後/こうしてリビングドアの修理ができ上がりました。
最後に、取り外しておいた建具用金具を取り付け、すき間ブラシを貼り付けて完成しました。
このリビングドアは、親子ドアです。
2枚のドアのすき間に、ブラシを貼り付けておきますとすき間風の防止や親側のドアを静かに閉めることができます。
愛媛県西条市・A様、ご依頼いただきありがとうございました。