「20年以上前のソファのクッションって作れますか?」
「買ったお店に修理を断られたんです・・・!」
「もう40年も使っている椅子なので、これからも使いたいのです・・・。」
と、愛媛県大洲市・M様が安楽椅子をトラックに積んでご来店いただきました。
M様との打ち合わせは、NHK松山放送局の地域情報番組・ひめポン!(2021年7月14日放送分)で放送されましたので、その様子を少しだけ紹介いたします。
(2021年9月14日の19時まで見れます)
NHK松山放送局 ひめポン!「思い出を残す家具修理」
「椅子がひび割れている・・・。」
「座っていたら下に落ちた・・・。」
「接着剤(セメダイン)でひっつけたが、無理だ、それでは・・・。」
修理作業前/M様からお預かりした安楽椅子です。
約40年ものあいだ愛用されてきたM様の安楽椅子です。
この椅子は、徳島県の家具メーカー、フジファニチアさんのパーソナルチェア(PO361A)です。
私も20歳代のころお世話になった椅子の一つで、とってもなつかしいです。
肘を構成している部材の接合部が抜けてしまってました。
修理作業中①/フレームの分解作業→肘部の分解作業
M様のご依頼内容は・・・
①フレームのぐらつき修理(肘の圧着を含む)・・・末永く快適+安全に使うため!
②座面下をコンパネからクッションバンドへの交換・・・座り心地を改善させるため!
③本皮革置きクッションのメンテナンス・・・本皮革を長持ちさせ、うるおいを与えるため!
まずはじめに、置きクッションを取り外して、フレーム全体を分解していきました。
M様の椅子のように、木製フレームに置きクッションを取り付けしているようなタイプの椅子は、メンテナンス性に優れています。
買われた時に取り付けてあった座面下のクッションバンドが切れてしまったため、大工さんにコンパネを取り付けてもらってました。
コンパネとは、12mm厚の合板のため、座った時の硬すぎる座り心地と底打ち感が良くなかったようです。
M様がご自身で、セメダインを使って直したという両肘の部材です。
今回の修理作業は、この両肘の圧着が肝になります。
はじめに、肘を構成している4個の部材を分解していきました。
個々の部材には改めて圧着する時、接合ヶ所をまちがわないために、マスキングテープで墨付け(ナンバー打ち)をしています。
これは地味な作業ですが、ぐらつき修理をする時に、忘れてはいけない大切な作業なんです。
M様が付けられたセメダインがたっぷり付いていました。
また、後に倒れた時に部材が破損しているヶ所もありました。
修理作業中②/肘部の圧着作業
肘全体を圧着する前に、破損している肘部材の端材の圧着をしました。
この作業は、肘の形状に合わせて作った治具(作業を補助する道具)をバイスに固定し、
ソマックス製スナップクランプにて強力に端材を圧着しました。
下の写真は、破損していたヶ所を圧着し、セメダインや古い接着剤を取り除いた状態です。
ここまできれいになりますと、肘を構成する4個の部材がより丈夫に圧着できると想います。
次に、肘を構成する4個の部材を圧着するための準備をしました。
準備物は、肘の形状に合わせて作った治具(作業を補助する道具)と愛用のソマックス製T型クランプです。
接合ヶ所をまちがわないために、マスキングテープで墨付け(ナンバー打ち)をしていたのが、この時に役立つんです。
治具(作業を補助する道具)をはさんで圧着しました。
ここから約12時間で完全乾燥します。
修理作業中③/フレームの組立作業→本皮革のメンテナンス作業
完全乾燥した肘部をはじめ、椅子を構成するすべての部材を並べていきました。
肘部をはじめ、フレーム全体をヤマザキ製端金での圧着作業のほか、ネジ締め作業をしました。
TOKI家具館メンテナンスで永年使っている本皮革用のメンテナンスには、ユニタスファーイーストさんのレザーマスター(業務用)です。
M様の本皮革置きクッションは、約40年もお使いとのことでした。
そのため生活汚れ落としには、洗浄効果が高い “ストロングクリーナー” を使いました。
下の写真は、フレームの組み立てやメンテナンスができあがった本皮革置きクッションです。
最後の作業は、メーカーのフジファニチアさんから供給してもらった純正のクッションバンドの取り付けです。
お預かりした時は、コンパネを取り付けしていましたので、これで座り心地も格段に良くなったものと想います。
修理作業後/愛媛県大洲市・M様が引き取りにご来店いただきました。
ちょうどこの日、私は、新型コロナウイルスワクチン接種の日でしたので、スタッフさんにお願いしてこの写真を撮っていただきました。
ワクチン接種後、お店にもどりお電話したところ・・・
「今も安楽椅子に座ってますよ・・・。」
「とっても良くなった!」
「ダイニングチェアの修理もお願いしたいので、また持っていきますね・・・。」
と、ありがたいお言葉をいただきました。
M様、NHKのロケや写真撮影にご協力ごいただき、本当にありがとうございました。土岐泰弘
M様との出会いは、NHK松山・ひめポン! のロケ初日でした。
愛媛県大洲市・M様がご来店いただいたのは、2021年7月5日(月)午前9時くらいでした。
ちょうど、7月5日(月)~6日(火)は、終日、NHK松山放送局の地域情報番組「ひめポン!」のロケ日でした。
私が日ごろしている生の姿をロケしてくれる、めったにないありがたい日でもありました。
その初日のオープン前に、M様は着てくれました。
TOKI家具館メンテナンスには、ほぼ毎日3~5件くらいの家具の修理やリノベーションに関するお問い合わせをいただいています。
が、このNHKのロケ日にもお問い合わせがあるとは限りません。
こんな不安の中、M様はご来店いただきました。
私としたら、本当にありがたいお客様です。
(家具には)家族の思い出や歴史が徐々にしみていくものだと思う。
これは、ひめポン!の放送より抜粋した言葉です。
この気持ちを生涯、忘れないようにこれからも精進を続けたいと想います。
NHKスタッフのみなさま、本当にありがとうございました。土岐泰弘