愛人の子 part3

佐藤清志

佐藤清志

前回まで,非嫡出子の相続分を嫡出子の相続分の2分の1
とする規定について,説明してきました。

この規定の合憲性について,最高裁は,
上記民法の規定は,法の下の平等を定めている憲法14条に反せず,
合憲であるとしてきました。
その理由は,つまるところ,法律婚の尊重というところにあります。
法律婚を尊重するために,
愛人の子と正妻の子を同一に扱うことは出来ないが,
かといって非嫡出子の相続分をゼロにするというのも可哀想なので,
その妥協点として非嫡出子の相続分を2分の1としたのだ
という論法です。

もっとも,非嫡出子の相続分を2分の1とするということが
男女の関係において法律婚を尊重するという目的に
つながるものでしょうか。
もし,ここで肉体関係を結んで,子供が出来ちゃったとしたら
その子が相続分で差別されるので,不貞行為をするのを止めよう
などとは中々思わないのではないでしょうか。

また,愛人あるいは内縁の妻自身についていうと,
相続分で差別されるのがイヤなら
既婚者とは交際しないようにすればいいだけです。
しかし,愛人の子については,そのようなことは言えません。
すなわち,愛人の子は,生まれたときには
既に非嫡出子であり,自己の行動や努力など
によってこれを避けることは絶対に出来ません。
このような生まれながらの事情による差別については,
その必要性が厳しく問われなければならない
と言えるのではないでしょうか。

しかも社会に与える実際上の影響という観点
からいっても,非嫡出子の相続分を2分の1とすることには
問題があります。
結果として,非嫡出子の相続分を嫡出子の相続分の
2分の1とすることは,非嫡出子が嫡出子に比べて
劣っているという社会的な風潮を生み出すことにも
つながりかねません。

以上のような理由から,最高裁判所の判決においても
非嫡出子の相続分を差別する規定は違憲である
とする反対意見が相次いで出されているのです。


皆さんはどう思われますか?

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