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大西英樹プロは愛媛新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

脳梗塞・脳出血など脳血管疾患の障害年金請求。65歳以上などの年齢がターニングポイントに。

大西英樹

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脳梗塞や脳腫瘍といった脳血管疾患における障害年金請求では、後遺症認定を経て申請を行うことになります。「それ以上の機能回復がほとんど認められない」という診断が下った時点で各種申請を行うことになります。

脳梗塞、脳出血での障害年金認定基準

脳梗塞、脳出血は突然発症します。発症後に治療をしても後遺症が心配されるケースは少なくありません。脳の細胞がダメージを負うことで、身体の麻痺や感覚の障害、脳に障害が残る可能性があるからです。

日常生活に影響を及ぼすこともあるので、ご自身やご家族が脳梗塞、脳出血になったときには後遺症や、肢体に障害が残った場合の障害年金認定基準について知っておくことが大切です。

脳梗塞、脳出血のあと、治療を継続したにも関わらず生じやすい後遺症とは、どのようなものでしょうか。

●脳梗塞、脳出血の後遺症
・右上下肢あるいは左上下肢が動かなくなるなどの運動麻痺
・触覚や痛覚が鈍くなったり、痺れを感じるなどの感覚障害
・視野が狭くなったり、ものが二重に見えるなどの目の障害
・ろれつが回りにくくなる構音障害
・食べ物をのみ込みにくくなるなどの嚥下障害
・記憶障害や注意障害、失語症や自発性障害といった高次脳機能障害

そのほかにも、さまざまな障害が残る場合があります。

治療を行ってもそれ以上の機能回復がほとんど認められないとき、国民年金に加入していた場合は障害基礎年金、厚生年金に加入していた場合は障害厚生年金を請求することができます。

【認定基準(障害の程度と障害の状態)】
・1級
身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状により、日常生活がままならない。日常ほとんどがベッドでの生活と同程度以上と認められる状態であって日常生活が、おおむね寝たきりの程度のもの。

・2級
身体の機能の障害が、必ずしも家族の助けを借りる必要はないが、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの。
家庭内の生活でいえば、活動の範囲がおおむね家屋内に限られるもの。

・3級(厚生年金の被保険者の場合のみ)
身体の機能に、労働が著しい制限を受けるか、又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの。

【認定要項】
・1級
①一上肢及び一下肢の用を全く廃したもの
一上肢及び下肢における日常生活動作のすべてが「一人で全くできない」又はこれに近い状態のもの。

②四肢の機能に相当程度の障害を残すもの
四肢の機能における日常生活動作の多くが「一人で全くできない」または日常生活における動作のほとんどが「一人でできるが非常に不自由」であるもの。

・2級
①一上肢及び一下肢の機能に相当程度の障害を残すもの
一上肢及び下肢における日常生活動作の多くが「一人で全くできない」又は日常生活における動作のほとんどが「一人でできるが非常に不自由」であるもの。

②四肢に機能障害を残すもの
四肢における日常生活動作の一部が「一人で全くできない場合」又はほとんどが「一人でできてもやや不自由」であるもの。

・3級(障害厚生年金のみ)
一上肢及び一下肢に機能障害を残すもの
一上肢及び一下肢における日常生活動作の一部が「一人で全くできない」又はほとんどが「一人でできてもやや不自由」であるもの。

肢体の障害が上肢や下肢の範囲内である場合は、それぞれの認定基準によって審査されます。

肢体の障害が上肢及び下肢などの広範囲にわたる場合や、上肢と下肢の障害の状態が相違する場合は、障害の重い肢で障害の程度を判断されます。
肢体の機能障害の程度は、関節可動域、筋力、巧緻性、速さ、耐久性を考慮し、日常生活での動作の状態から身体機能を総合的に捉え認定されます。

手指の機能と上肢の機能は別ですが、障害の評価としては切り離すことなく、手指の機能は上肢の機能の一部として取り扱われます。

脳疾患の障害年金手続きの必要書類とポイント

脳梗塞や脳出血の後遺症による肢体の障害で、障害年金を請求(申請)する場合の手続きについてご説明します。

障害年金の請求には、初診日の証明を取ったり病歴申立書を作成したりと、時間と労力が必要になります。

①初診日の確認が重要
障害年金では「初診日」において、国民年金または厚生年金いずれの制度に加入していたかを判断し、保険料納付要件を満たしているかを確認します。

初診日とは、障害の原因となった傷病につき、初めて医師または歯科医師の診療を受けた日を指しています。つまり障害年金を請求(申請)する傷病において、初めて医療機関を受診した日が初診日であり、確定診断を受けた日ではありません。

また障害年金制度では、前発の病気と後発の病気の間に相当因果関係がある場合は、前発の病気で初めて病院などを受診した日が初診日とされています。
脳梗塞や脳出血の場合、脳梗塞や脳出血を起こした原因は、高血圧だとされることが多くありますが、障害年金の認定においては、原則として脳梗塞や脳出血と高血圧に因果関係はないものとされています。

高血圧が原因で脳梗塞や脳出血となった場合でも、高血圧で病院を受診した日が初診日ということではありません。あくまで脳梗塞や脳出血で受診した日が初診日です。
このように障害年金請求(申請)では、初診日が非常に重要となります。

②受診状況等証明書
障害年金を請求(申請)する際は、脳梗塞や脳出血で初めて受診した医療機関で「受診状況等証明書」を取得することが必要です。

③病歴・就労状況等申立書
初診日から6カ月経過時に障害年金を請求(申請)する場合、「病歴・就労状況等申立書」も重要です。現在に至るまでの通院歴や病歴、脳梗塞や脳出血の後遺症による日常生活での支障、上下肢の状態について記載します。

初診日から6カ月経過しており、症状固定されている場合の請求では、リハビリの経過についての記載が特に重要です。機能回復の目的ではなく、機能の維持のためのリハビリであることを明確にする必要があります。

請求する病気やケガが複数ある場合は、それぞれ用紙を分けて記入します。

④診断書
病院で作成した肢体障害用の診断書が必要です。診断書の重要な項目を確認しておきましょう。肢体障害用の診断書は記載項目が多く、記入漏れや誤記入がないか確認する必要があります。

初診日から6カ月経過した時点で障害年金を請求(申請)する場合、「症状が固定されている」ことを明確にした診断書であるかどうかが重要です。予後として、症状の改善が見込めないという記載も必要です。

日常生活における動作の障害は、杖などの補助用具を使用しない状態で判断されるなど、適正な評価が必要です。

また、障害年金制度では脳梗塞、脳出血などの脳疾患により、肢体の障害に加えて器質的な精神の障害が併存する場合があります。言語障害や記憶障害などの後遺症がある場合は、精神の障害用の診断書を加えた2つの診断書が必要になります。

障害年金はどの時点で請求(申請)できるのか?

障害認定基準では「脳血管障害により機能障害を残しているときは、初診日から6カ月経過した日以後に医学的観点から、それ以上の機能回復がほとんど認められないとされた場合、その時を障害認定日とする」となっています。

初診日から6カ月経過時点で症状が固定されていると認められたら、その時点で障害年金の請求(申請)ができます。また、脳梗塞や脳卒中での障害年金を請求(申請)する場合、障害認定日の原則とは異なった取り扱いが可能となることがあります。

初診日から1年6カ月を経過していなくても、6カ月を超えた時点で症状が固定されていれば、その時点で障害年金を請求(申請)することができます。

例えば脳梗塞の後遺症で身体に麻痺が残り、リハビリなどを行っている間に治療内容などに変化が出てきた場合です。

・当初は毎週の通院が必要だったところが、月に1度の検査だけになった。
・リハビリが終了したため、他の施設への転院を勧められた。

上記のようなケースでは、それ以上の機能回復がほとんど認められない可能性があるので、医師に診断書の作成を依頼する際に確認する必要があります。

65歳以降で発症した脳梗塞の場合

脳梗塞や脳出血の障害年金は65歳を過ぎていても請求できるのでしょうか?

障害年金は原則として65歳までに請求(申請)する必要があります。ただし一定の場合において、65歳を過ぎても請求(申請)可能な場合があります。

【65歳を過ぎても障害年金を請求(申請)可能な条件】
①初診日が原則として65歳の誕生日の2日前であること。

②障害認定日(初診日)より、1年6カ月後または症状の固定日において、一定の障害が認められる状態であること。

障害年金の制度を知らず、あとから障害年金の請求(申請)をした場合でも、障害認定日時点での障害の状態が確認できれば、請求(申請)することができます。この場合、さかのぼって支給される期間は5年間までとなります。

また、ほかの年金(老齢年金や遺族年金)との調整が生じます。 老齢基礎年金を繰り上げていた場合には、初診日時点で65歳未満であったとしても、繰り上げた時点で65歳と見なされ、障害年金の請求(申請)はできません。繰り上げ請求日前に、障害認定日が来ている必要もあるので注意が必要です。

脳梗塞等でもらえる障害年金額

障害年金の受給が決定した後、実際にいくら受け取ることができるのかは、気になるところです。障害年金の金額は年度ごとに変わります。2021年度は2020年より0.1%引き下げとなっています。障害年金は非課税であり、老齢年金のように所得税や住民然の控除はありません。

障害基礎年金・障害厚生年金それぞれについて説明します。

【障害基礎年金】
・障害基礎年金を受給できる方
①国民年金加入中に初診日がある人(自営業者、無職の人、学生、厚生年金保険に加入している会社員の配偶者などに扶養されていた人など)

②20歳前や、60歳以上65歳未満(年金制度に加入していない期間)で、日本国内に住んでいる間に初診日がある人

・障害基礎年金の金額
障害基礎年金の等級は1級と2級があります。障害の程度が重い方から1級、2級となります。
・障害基礎年金 1級97万6125円/年(月額8万1343円)+子の加算
・障害基礎年金 2級78万900円/年(月額6万5075円)+子の加算
※1級の年金額は2級の1.25倍です。

・子の加算額とは?
①18歳到達年度末(高校卒業時)までの子がいる場合に加算
②子どもが障害等級1級または2級であるときは、子の加算は18歳年度末から20歳まで延長して支給(子どもの障害等級は障害年金と同じ基準で判断)
※子どもが一定の年収基準(前年の年収が850万円未満など)を満たしていることが条件です。
※子の加算は扶養手当の意味合いになります。

・子1人に付き(2人目まで) 22万4700円/年(月額1万8725円)
・3人目以降1人に付き     74万900円/年(月額6241円)

【障害厚生年金】
・障害厚生年金を受給できる方
厚生年金保険加入中に初診日がある人(会社員など)が、受給できる障害年金です。

・障害厚生年金の金額
障害厚生年金の等級は、障害の程度が重い方から1級、2級、3級、障害手当金となります。障害手当金は一時金です。

障害厚生年金(報酬比例の年金)は、人によって金額が異なります。いくらもらえるかの計算は、個人の平均標準報酬額や厚生年金保険に加入していた期間などによって変わります。

一般的には収入が多く、勤務期間が長い人ほど年金額は多くなります。
例えば給与25万円と50万円の方、厚生年金を10年かけた方と20年かけた方では、もらえる金額が倍ほど違ってきます。また毎年、物価による調整なども入ります。
1級と2級は、障害厚生年金と同時に障害基礎年金も支給され、子の加算も含まれます。

(1級)
報酬比例の年金額×1.25
※年金加入の被保険者期間が300月未満の場合、300月にみなして計算。
※プラス障害基礎年金1級(97万6125円)
※一定の要件を満たす配偶者がいる場合、配偶者加給年金額の加算もあり。
※一定の要件を満たす子がいる場合、子の加算もあり。

(2級)
報酬比例の年金額×1.0
※年金加入の被保険者期間が300月未満の場合、300月にみなして計算。
※プラス障害基礎年金2級(78万900円)
※一定の要件を満たす配偶者がいる場合、配偶者加給年金額の加算もあり。
※一定の要件を満たす子がいる場合、子の加算もあり。

(3級)
※報酬比例の年金のみです(最低保証58万5700円)。

(障害手当金)
※一時金として、報酬比例の年金額×2.0(最低保証117万1400円)。
※これは年金ではなく一時金になります。

・配偶者加給年金
障害厚生年金の1級又は2級に該当し、一定の要件を満たした配偶者がいる場合、年金額に配偶者加給年金額が加算されます。

金額は年間22万4700円で以下の要件が必要となります。
①配偶者は65才未満であること。
②年金加入者と同一の世帯で生計を共にしており、配偶者の年収が850万円未満であること。
③配偶者が、退職共済年金、障害基礎年金、障害厚生年金を受け取っていないこと。

事例:脳梗塞での障害年金請求サポート(40代・男性)

●傷病名:「脳梗塞」(40代・男性)
【相談内容】
長年、糖尿病と脳梗塞の後遺症に悩まされています。仕事に支障をきたすことがしばしばあり、将来に関して不安を感じています。インターネット検索で障害年金を知り、もしかしたら受給できるのではないかと期待を抱き、相談をしました。

【サポート&結果】
初回面接で、障害年金制度の説明や手続きに必要な注意事項などを説明し、まずは概略を理解していただきました。初診日認定の診断書はすんなり作成できました。

障害認定日と現病状の診断書の作成には、担当医師が週1回の非常勤だったことなどから少し時間を要しましたが、受給決定通知書が届き「障害厚生年金1級」を受給することができました。

【相談者の感想】
何度も親切で的確なアドバイスを頂戴し、時には直接病院の担当者ともお話していただきました。終始、親身な対応をしてもらい、念願の受給決定には家族全員で喜んでいます。本当に助かりました。

事例:右被殻出血での障害年金サポート(50代・男性)

●傷病名:「右被殻出血」(50代・男性)
【相談内容】
一昨年秋に右被殻出血を発症し、左半身麻痺のため日常生活に支障をきてしています。元の身体に戻らないのは仕方ありませんが、障害年金制度を利用できるのであれば申請したい。
休職後、現在は仕事に復職していますが、就労中でも障害年金受給は可能でしょうか?管理職であり給料も高額であることも気がかりです。

【サポート&結果】
仕事に復帰しており、管理職で給料も高額であるという2つの懸念点がありましたが、職場での配慮の有無などをさらにヒアリングし、詳細な申立書を作成しました。
また、追加で陳述書を作成して提出し、日常生活に支障をきてしていることを、診断書依頼文書で詳細に説明しました。
主治医の診断書にも記載いただいた結果、懸念点もクリアして「障害厚生年金2級」の受給決定がおりました(年額228万5354円)。

【相談者の感想】
再び就労できていることから、障害厚生年金の受給は難しいと思っていたので、2級の受給は大変うれしかったです。脳疾患空の肢体障害というアプローチが決め手になったようで、障害年金のプロにお任せしてよかったです。

事例:脳梗塞での障害年金サポート(50代・男性)

●傷病名:「脳梗塞」(55歳・男性)
【相談内容】
職場で休憩中に脳梗塞を発症し、現在は傷病手当を取得中ですが、その切れ目を考慮し、障害年金について相談します。現在、妻もうつ状態にあり物忘れがひどく、書類の紛失、遂行機能が困難な症状が見られます。

【サポート&結果】
診断書依頼状・申立書の作成前に、本人の肢体状況などを視認し、チェックシートに記入しました。日常生活において困難であることを、奥さまから聞き取るのは難しく、気付いた点をその都度ノートへ箇条書きにしていただきました。
物忘れが多いことを配慮し、また書類の紛失防止のために、診断書は病院より当センターに直接郵送をお願いしました。
整合性を取りながら書類を再校正し提出し「肢体2級」を取得しました。

【相談の感想】
請求者本人や家族の状況に合わせた対応をしていただき、今後の生活不安を解消することができて、経済的にも精神的にも安心を得ることができました。

事例:脳出血での障害年金サポート(50代・男性)

●傷病:「脳出血」(55歳・男性)
【相談内容】
脳梗塞で半身麻痺になり、現在は仕事も休職中です。障害年金を受給できるかどうか?また、会社を退職するにあたっての手続きについてご相談したい。

【サポート&結果】
退職後の傷病手当や任意継続手続きと、国民健康保険加入の選択方法について説明しました。
リハビリ終了直後の脳血管疾患は、症状固定の状況が診断書にきちんと記されていないと、症状固定されていないものと判断され不支給となってしまうので、担当医への診断書の依頼時には、その点を注意しました。
「障害厚生年金2級」の受給が決定、初年度約257万円の障害年金の受給が決定しました。

【相談者の感想】
障害年金受給のための要件など、素人には分からないことも多いです。受給の壁と想定される問題に、あらかじめ手を打っていただき、スムーズに申請手続きを終えることができました。

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大西英樹
専門家

大西英樹(社会保険労務士)

一般社団法人愛媛障害年金相談センター

 わたしたちの障害年金申請サポート:【3つの特徴】①大切な書類もお任せ。特に大事な「申立書」も作成代行。②正しい診断書作成を助ける「お願い状」を作成。③「併合認定」などの特殊な制度ににも精通。

大西英樹プロは愛媛新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

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