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大西英樹

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大西英樹(おおにしひでき) / 社会保険労務士

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コラム

知的障害における障害年金の申請方法。診断書の書き方、受給事例、遡及請求の可能性など

2021年6月5日 公開 / 2021年7月2日更新

コラムカテゴリ:お金・保険

コラムキーワード: 障害年金 申請障害年金 金額障害年金 条件

知的障害と障害年金
知的障害における障害年金を受給につなげていくためには、障害認定基準の内容や医師による診断書のポイントなどを知っておくことが大切です。また、遡及請求の可能性、受給事例などについても紹介します。

障害年金の3要件

障害年金の3要件
障害年金の申請には「障害年金の3要件」と呼ばれる要件があります。

①初診日要件
障害の原因となった病気やケガの初診日(病気やケガで初めて医師の診察を受けた日)が証明でき、初診日に国民年金または厚生年金保険の被保険者期間中であること。

②保険料納付要件
保険料の一定の納付要件を満たしていること。20歳前で年金制度に加入していない期間に初診日がある場合は、納付要件は不要になります。

③一定の障害の状態にあること
障害の状態が「障害認定日」(障害の原因となった病気やケガについての初診日から1年6カ月をすぎた日)に、または20歳に達したときに、法令で定める障害等級(障害基礎年金は1級~2級、障害厚生年金は1級~3級)に該当していること。


上記3つの要件をすべて満たしていなければ、障害年金を受給することはできません。これは知的障害以外の障害についても同様です。

しかし、知的障害は、先天性または発達期(おおむね18歳まで)にあらわれる障害とされるため、障害年金申請上の初診日は生まれた日(出生日)になります。そのため「①初診日要件」は不要になります。また、国民年金への加入義務は20歳になって生じるものですから「②保険料納付要件」についても考えなくてよいことになります。

知的障害の障害認定基準


「③一定の障害の状態にあること」について見ていきましょう。

障害等級は、例えば「眼の障害」「肢体の障害」というように、障害ごとに「障害認定基準」が設けられています。知的障害は「精神の障害」に含まれ、認定基準は次のように示されています。

(1)知的障害は、知的機能の障害が発達期(おおむね18歳まで)にあらわれ、日常生活に持続   的な支障が生じているため、何らかの特別な援助を必要とする状態にあるものをいう

・1級
知的障害があり、食事や身のまわりのことを行うのに全面的な援助が必要であって、かつ会話による意思の疎通が不可能か著しく困難であるため、日常生活が困難で常時援助を必要とするもの

・2級
知的障害があり、食事や身のまわりのことを行うのに一部援助が必要であって、かつ、会話による意思の疎通が簡単なものに限られるため、日常生活にあたって援助が必要なもの

・3級
知的障害があり、労働が著しい制限をうけるもの

そして、障害の認定にあたって留意すべき項目が示されています。「日常生活における援助」「社会的な適応性」「就労(仕事)」が重要なワードになっています。

(2)知的障害の認定にあたっては、知能指数のみに着眼することなく、日常生活のさまざまな   場面における援助の必要性を勘案して総合的に判断する。また、知的障害とその他認定の対象となる精神疾患が併存しているときは、併合(加重)認定の取扱いは行わず、諸症状を総合的に判断して認定する。

(3)日常生活能力等の判定に当たっては、身体的機能及び精神的機能を考慮の上、社会的な適  応性の程度によって判断するように努める。

(4)就労支援施設や小規模作業所などに参加する者に限らず、雇用契約により一般就労をして  いる者であっても、援助や配慮のもとで労働に従事している。したがって、労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず、現に労働に従事している者については、その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況等を十分確認したうえで日常生活能力を判断すること。

知的障害は、知能指数(IQ)の値によってのみ判断されると思われている方が少なくありません。しかい、障害年金の認定基準においては、知能指数(IQ)だけではなく、日常生活における能力、対人関係など社会生活を営む能力があわせて判断されるわけです。

ちなみに上記(1)にある「知的機能の障害」については、客観的な指標として標準化されたテストによる知能指数(IQ)が、軽度(IQおおむね51~70)、中等度(IQおおむね50~36)、重度(IQおおむね35~21)、最重度(IQおおむね20以下)という資料があります(厚生労働省「知的障害児(者)基礎調査について」)。

療育手帳と障害等級について


知的障害のある方が取得できる「療育手帳」などにも、障害の程度による区分(等級)があります。この区分(等級)と障害等級は、どのような関係にあるでしょう。精神の障害の等級判定において「障害認定基準」と併せて用いる「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」には、次のように記されています。

「療育手帳の判定区分が中度以上(知能指数がおおむね50以下)の場合は、1級または2級の可能性を検討する。それより軽度の判定区分である場合は、不適応行動等により日常生活に著しい制限が認められる場合は、2級の可能性を検討する」

しかし実は、療育手帳と障害年金とは別のものです。障害等級は国民年金法と厚生年金保険法に規定されていますが、療育手帳は法律で作られた制度ではありません。取得基準なども自治体ごとに異なっています。

療育手帳などの区分(等級)と障害年金の等級は、まったく関係がないということではありませんが、療育手帳などの区分(等級)と障害年金の等級は必ずしも一致しません。療育手帳などは各種の福祉サービスを受けるために必要なものであって、この点は特に注意が必要です。

申請時に提出する医師の診断書1「日常生活能力の判定」


障害年金の申請時には、申請者本人を確認するための戸籍謄本や住民票などさまざまな書類が必要になりますが、審査にあたって重要になるのは医師の「診断書」です。診断書は「精神の障害用」が用いられます。

「精神の障害用」の診断書には、「日常生活能力の判定」と「日常生活能力の程度」という欄が設けられています。そして、「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」には、「日常生活能力の程度」の評価及び「日常生活能力の判定」の評価の平均を組み合わせたものが、どの障害等級に相当するかの目安が示されています。

「日常生活能力の判定」は次の7項目によって評価されます。

(1)適切な食事
配膳などの準備も含めて適当量をバランスよく摂ることがほぼできるなど。

(2)身辺の清潔保持
洗面、洗髪、入浴等の身体の衛生保持や着替え等ができる。また、自室の清掃や片付けができるなど。

(3)金銭管理と買い物
金銭を独力で適切に管理し、やりくりがほぼできる。また、一人で買い物が可能であり、計画的な買い物がほぼできるなど。

(4)通院と服薬(要・不要)
規則的に通院や服薬を行い、症状等を主治医に伝えることができるなど。

(5)他人との意思伝達および対人関係
他人の話を聞く、自分の意思を相手に伝える、集団的行動が行えるなど。

(6)身辺の安全保持および危機対応
事故等の危険から身を守る能力がある、通常と異なる事態となった時に他人に援助を求めるなどを含めて、適正に対応することができるなど。

(7)社会性
銀行での金銭の出し入れや公共施設の利用が一人で可能。また、社会生活に必要な手続きが行えるなど。

日常生活の7つの場面における制限度合いをそれぞれ4段階で評価し、1~4の数値に置き換え、その平均を算出します。
※「数値に置き換える」とは、実質上はともあれ1~4の評価が「点数」ではないということです。

 □できる…1
 □おおむねできるが時には助言や指導を必要とする…2
 □助言や指導があればできる…3
 □助言や指導をしてもできない若しくは行わない…4

なお、これだけでは具体性に欠けるため、医師向けに作成された「障害年金の診断書(精神の障害用)記載要領」に、もう少し具体的な例が示されています。例えば「(1)適切な食事」については次のようになっています。

1:できる
栄養のバランスを考え適当量の食事を適時にとることができる(外食、自炊、家族・施設からの提供を問わない)。

2:自発的にできるが時には助言や指導を必要とする
だいたいは自主的に適当量の食事を栄養のバランスを考え適時にとることができるが、時に食事内容が貧しかったり不規則になったりするため、家族や施設からの提供、助言や指導を必要とする場合がある。

3:自発的かつ適正に行うことはできないが助言や指導があればできる
1人では、いつも同じものばかりを食べたり、食事内容が極端に貧しかったり、いつも過食になったり、不規則になったりするため、経常的な助言や指導を必要とする。

4:助言や指導をしてもできない若しくは行わない
常に食事へ目を配っておかないと不食、偏食、過食などにより健康を害するほどに適切でない食行動になるため、常時の援助が必要である。

医師は、等級判定ガイドラインや診断書の「記載要領」をもとに「(1)適切な食事」から「(7)社会性」まで7項目についての評価を行い、その平均値を出します。

申請時に提出する医師の診断書2「日常生活能力の程度」


「日常生活能力の程度」については5段階の評価になっています。

(1)知的障害を認めるが、社会生活は普通にできる。
(2)知的障害を認め、家庭内での日常生活は普通にできるが、社会生活には、援助が必要である。
(3)知的障害を認め、家庭内での単純な日常生活はできるが、時に応じて援助が必要である。
(4)知的障害を認め、日常生活における身のまわりのことも、多くの援助が必要である。
(5)知的障害を認め、身のまわりのこともほとんどできないため、常時の援助が必要である。

「日常生活能力の判定」と「日常生活能力の程度」の評価の組み合わせとは、例えば「日常生活能力の判定」の平均値が3.5以上で、「日常生活能力の程度」が5段階評価の5であれば、障害等級1級。

あるいは「日常生活能力の判定」の平均値が2.0以上2.5未満で、「日常生活能力の程度」が4の場合は障害等級2級。

また、同じく「日常生活能力の判定」の平均値が2.0以上2.5未満ではあるものの、「日常生活能力の程度」が3の場合は、障害等級2級または3級、というように、それぞれの評価の組み合わせによって等級の目安とするということです。

「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」には、縦に「日常生活能力の判定」の平均値、横に「日常生活能力の程度」を並べた表組みが用意され「障害等級の目安」となっています。
※ただし、この目安は等級判定の参考にはされますが、最終的には診断書に記載される他の要素も含めて総合的に評価されます。

病歴・就労状況等申立書について
障害年金の申請時には、申請者本人(代筆も可)が記載する「病歴・就労状況等申立書」も提出します。病気やケガの状況、治療の経過、就学・就労の状況、福祉サービスの利用状況、日常生活や職場でどのような支障が出ているのかなどを、時系列に沿って具体的に書いていくものです。

障害年金の審査にあたっては医師の診断書がもっとも重要ですが、「病歴・就労状況等申立書」も重視されます。

上に「(1)適切な食事」を例に、医師がどのように「日常生活能力」を判断するかを等級判定ガイドラインや診断書の「記載要領」から抜粋して示しましたが、診察室での面談のみで実情に即した判断を下すことは難しいとも言えます。「病歴・就労状況等申立書」はそうした面を補うものになります。

ただ、「病歴・就労状況等申立書」は、発病から初診、そして現在に至るまでの状況を3~5年ごとに区切って記載することになっています。しかし、知的障害の場合、初診日は生まれた日(出生日)になり、そこから現在まで長期間にわたる経緯を3~5年ごとに記載していくのは大変です。

そこで申請者の負担を軽減するため、令和2年(2020年)10月から「請求者の負担軽減のための障害年金に係る業務改善等について」が実施されました。

知的障害の場合「病歴・就労状況等申立書」の記入を簡素化できます。具体的には「生来性の知的障害の場合は、1つの欄の中に、特に大きな変化が生じた場合を中心に、出生時から現在までの状況をまとめて記入することが可能」となっています。

知的障害は同じ症状が長く継続することが見込まれるため、特に大きな変化があった時を捉え、その内容を中心に記載するということです。まれな例かもしれませんが、小学校の6年間を一括に記載した「病歴・就労状況等申立書」を提出したところ、3年ごとに区切るよう言われた、というケースも報告されています。

今回の簡素化によって、申請者の負担が大幅に軽減されることになったわけですが、その一方、幼少期、小学校、中学校、高校という区切りは、障害年金の審査をする側に具体的なイメージを伝えるうえで有効とも考えられます。いずれにしても「特に大きな変化」があった時を捉え、要点をおさえ、簡潔かつ具体的に書いていくことが大切です。

知的障害の障害年金申請は定期的更新が必要


ところで、老齢年金は受給が始まると生涯受給することになります。しかし、障害年金はそうではありません。障害年金の等級には「有期認定」と「永久認定」があり、有期認定の場合は障害年金の更新手続きが必要になります。

「永久認定」とは文字通り、障害等級が永続的に変わらないということです。例えば手足の欠損や失明のように障害の状態が改善されることがない場合、一度決定された障害等級は変更されず、更新手続きも必要ありません。厚生労働省の通知などでは「永久固定」という言い方になっています。そして、この「永久固定」の場合は「障害の状態についての再認定は原則として要しない」とされています。

一方、「有期認定」は、障害の程度が永続的に変わらないとは言えないため、1~5年の範囲で更新手続きが必要になります。内臓疾患や精神障害のように障害の程度が変わることがある場合は、永久認定ではなく有期認定となるケースが多いと言えるでしょう。

有期認定の場合、1~5年ごとに日本年金機構から「障害状態確認届」(診断書)が送付されます。引き続き障害年金を受ける権利があるかどうか、障害の状態を確認するためのものです。
障害状態確認届が届いたなら、「診断書」欄を医師に記載してもらい、日本年金機構に提出期限(誕生月の末日)までに到着するよう提出します。提出が遅れると、年金が一時差し止めになる場合があるので注意が必要です。

知的障害は、永久認定となるケースもあり、また有期認定となるケースもあります。

知的障害は先天性の障害とされているにもかかわらず、永久認定にならないケースがあることについてはさまざまな議論がありますが、「障害年金及び障害福祉年金受給権者等にかかる障害状態の再認定について」(厚生労働省)には、「更新期間を5年と設定することが妥当と考えられる症例」として知的障害もあげられ「指導・訓練によって日常生活能力の著しい向上が期待できるもの」と示されています。

障害年金の申請時に提出する医師の診断書においても、「日常生活の能力」が重視されていることをお話ししましたが、現在のところ知的障害による障害年金は有期認定となるケースが多いと言えるでしょう。

なお、永久認定の場合、更新手続きは必要ありませんが、もし障害が重くなってきた場合は障害年金額の改定請求が可能です。障害の状態が重くなっても自ら改定請求をしなければ、等級と年金額はそのままということになってしまいます。注意しましょう。

遡及請求と知的障害での可能性について


障害年金には遡及請求(そきゅうせいきゅう)と言われる請求方法があります。文字通り、過去にさかのぼって請求する方法で、正式には「認定日請求」と言います。この「認定日」は、初診日から1年6カ月を経過した日=「障害認定日」のことです。

障害を持つAさんがいるとしましょう。そして、Aさんの障害認定日は8年前であり、8年前の障害認定日時点でAさんは障害等級2級に該当していたとします。つまり、本来であればAさんは8年前に障害年金を請求し、受給することもできていたということです。

しかし、Aさんは障害年金の制度を知らず、あるいは、他の事情で障害年金の請求を行いませんでした。ところが最近になり障害年金の請求を検討することになりました。こうした場合に検討されるのが遡及請求です。

この場合、Aさんはいま受診している病院で現在の診断書を作成してもらうと共に、障害認定日時点に受診していた病院における診断書も作成してもらう必要があります。そして、この「障害認定日時点の診断書」と「現在の診断書」、2つの診断書を添付して障害年金の遡及請求を行うことになります。

Aさんの「障害認定日時点の診断書」が障害等級2級以上、「現在の診断書」も障害等級2級以上に該当し、「障害認定日」から「現在」まで継続して障害等級2級以上の状態であったと認められたとしましょう。この場合、Aさんは8年前に障害年金の受給権(年金を受け取れる権利)が発生していたと認められたことになります。

ただし、受給していなかった8年分の障害年金を全額もらえるわけではありません。というのも、障害年金には5年の時効があるからです。遡及請求が認められてもAさんは、8年分の障害年金を受給できるわけではなく、最高で5年分の年金を受給することになります。この場合、5年分が一括で支給されます。


知的障害の遡及請求についてはどうなるでしょう。知的障害は生まれた日(出生日)が初診日になります。そして、障害認定日は20歳の誕生日の前日です。初診日の証明や保険料納付要件は不要であり、20歳になったらすぐに障害年金を申請(請求)することができます。

しかし、20歳になってから何年も障害年金というものがあることを知らなかった、あるいは、成人後しばらくしてから知的障害であることが明らかになったというケースもあり、障害年金の請求が遅れることも少なくありません。遡及請求が検討されることになります。

この場合もAさんのケースと同じく「現在の診断書」と「障害認定日時点の診断書」が必要になります。つまり、「現在の診断書」と、障害認定日である20歳の誕生日前後3カ月以内の診断書が必要になるということです。

そして知的障害の場合、障害年金は障害基礎年金になりますから、「現在の診断書」「障害認定日時点の診断書」ともに障害等級2級以上であることが要件になります。

厚労省の通達には「現症状から障害認定日の障害の状態等が明らかに判断できる場合にあっては、遡及してさしつかえない」とされています。しかし実際には、20歳の誕生日前後3カ月以内の診断書がない場合、遡及請求(認定日請求)によって障害年金を受給するのは難しいのが現状です。

20歳を過ぎて何年もたってしまった場合、当時の診断書が手に入らないというケースは少なくなりません。実際に40代になって知的障害が明らかになる、また、50代になって明らかになるというケースもあります。

20歳の誕生日前後3カ月以内(障害認定日時点)の診断書の取得が難しい場合、遡及請求(認定日請求)ではなく事後重症請求を検討することになります。ただ事後重症請求の場合は、支給が決定しても障害年金の支給は請求日の翌月分からになります。

知的障害の遡及請求は難しいですが、遡及請求で年金を受給できる可能性は残されています。知的障害での遡及請求を検討される方は、社会保険労務士に相談されることをおすすめします。

事例:うつ病での相談から知的障害での障害基礎年金2級の決定


Tさんのお母さまから、電話で「実家で静養している娘が“うつ”を患っているけれども、障害年金を受給できだろうか」とのご相談がありました。長く主治医をされていた方が病気でお辞めになり、Tさんは転院されてまだ日が浅いということでした。診断書を作成できるかどうかが問題になりましたが、その点はクリアできそうでした。

相談会を行い当方でサポートさせていただくことになりましたが、その後、心理テストの結果、知的障害・発達障害が見つかりました。そこで当方も柔軟に大きく方向転換して対応し、サポートにあたりました。障害年金申請後、障害基礎2級受給の運びとなり、Tさんとお母さまに大変喜んでいただきました。

事例:知的障害での障害年金2級受給のケース


20歳の女性のお父さまから相談をいただきました。知的障害をお持ちの娘さんの今後を考え、障害年金の申請を検討しましたが、「不安や迷いで前に進めなかった」とのこと。当方のホームページをご覧になり、相談件数と実績を見てサポートを依頼されました。

娘さんは乳児期から発達の遅れが見られ、小学校から特別支援学級に在籍していました。療育手帳をお持ちで、判定区分は「B」、田中ビネー知能検査では知能指数(IQ)=43でした。診断書の障害の状態は「抑うつ状態、てんかん発作あり、発作のタイプA(年1回)」。

知的障害による障害年金の審査では、日常生活能力の判定と共に知能指数(IQ)が重要ポイントです。一般的に知能指数50がボーダーラインと言われ、50以上の場合、知的障害でも不支給になる可能性があります。

お父さまとの面談時に、出生から現在までの発育状態、日常生活状態、労働能力などについて詳しいヒアリングを行い、これまでの経過と現状がよく伝わるよう当方で病歴・就労状況等申立書を作成し、医師への診断書依頼文も丁寧に作成しました。初診日を証明する受診状況等証明書は、先天性疾患である知的障害の申請ため提出はしませんでした。

審査の結果、障害基礎年金2級受給が決定し、お父さまに喜んでいただきました。医師への診断書依頼文、病歴・就労状況等申立書の文章の組み立てについて「上手にまとめてくれた」と感謝してくださいました。

まとめ


障害年金の申請には「①初診日要件」「②保険料納付要件」「③一定の障害の状態にあること」の3つの要件を満たしている必要があります。

しかし、知的障害は先天性の障害とされるため、「①初診日要件」「②保険料納付要件」は不要になります。「③一定の障害の状態にあること」については、医師の「診断書」と障害年金の申請者本人が記載(代筆も可)する「病歴・就労状況等申立書」が重要になります。

知的障害については、知的障害が障害年金の対象になっていることを知らない、あるいは、20歳を過ぎてからしばらくして知的障害があることが明らかになり、障害年金の請求が遅れるというケースも少なくありません。

この場合、遡及請求という方法があります。20歳到達時点の診断書と現在の診断書があれば、5年の時効はありますが、遡って障害年金を受給することができます。
しかし、現状では知的障害での遡及請求は簡単ではないのも事実です。遡及請求が難しい場合は事後重症請求という方法があります。

知的障害による障害年金の受給は、他の障害に比べ難しさが伴います。病歴や就労状況を記載する「病歴・就労状況等申立書」の作成もその一つです。
令和2年(2020年)10月から簡素化が図られてはいますが、審査員に状況を簡潔に伝える申立書を作成することは簡単ではありません。また、申請時に必要な書類に不備があると窓口で受け付けてもらえないこともあります。知的障害で障害年金の申請をお考えの場合、社会保険労務士にご相談いただくことをおすすめします。

この記事を書いたプロ

大西英樹

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大西英樹(一般社団法人愛媛障害年金相談センター)

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