連載第7回 威張らない

城戸景子

城戸景子

テーマ:経営者のためのビジネスマナー

経営者のためのビジネスマナー第7回は、「威張らない」と題してお伝えします。

威張る人

外国の寓話に、“王様が小さい子供を背に乗せて馬になっている姿は微笑ましいが、

小さい子供の背に乗っている王様は見苦しい”というお話があります。

権力を笠に着て周囲の人間を見下し威張り散らす人を時折お見かけします。

このような人は、経営者としても上司としても失格と言わざるを得ません。

お話の王様のように見苦しいからです。

そもそも威張る人は、なぜ威張るのでしょうか?

自分は他の人よりも偉い
自分には特別な能力がある
自分は優秀だ

と示したいために、威張ると考えられます。

本当にその通りであれば、何も声高に主張する必要はありません。

『弱い犬ほどよく吠える』ということわざがありますが、威張るのは、強い劣等感の裏返しとも言えます。

尚悪いことに、威張る人は自分より下だとみなした人間には威張るのですが、

明らかに自分よりも権力がある、優秀だという人に対しては、逆に媚びへつらう傾向にあります。

これも又、見苦しいことです。
                                    研修・セミナーの概要                          

実るほど頭を垂れる稲穂かな

もしもこのように威張るタイプの人がいると、周囲はみな非常に不快です。

経営者や上司は、社員や部下からの人望があってこそ、ビジネスを円滑に進めることができるのです。

しかしながら、威張る人は尊敬も信頼も勝ち得ることはできません。

昔の人は『実るほど頭を垂れる稲穂かな』と諌めました。

ご承知のとおり、稲穂は実れば実るほど穂先が下がることから、

人格の高い人ほど相手に対して謙虚な姿勢を忘れないという意味です。

未だ多くのビジネスマンに熱烈支持される松下幸之助氏もこの格言を信条にしていたと言われます。

経営者は、威張ってはいけないのです。

威張らなくても、本当に実力があれば周囲の人は理解しています。

偉くなっても謙虚に振る舞う姿が、その人の評価を上げるのです。
                                    研修・セミナーの概要 

「威張る理由がない」とおっしゃった方

威張らないというビジネスマナーについてお話するといつも思い出す経営者の方がいます。

その方は大企業に長年勤務されていたのですが、一念発起して起業されました。

とても真面目な方で、会社を軌道に乗せるまでの10年間ゴルフクラブを封印して仕事に集中したそうです。

その結果、約10年で社員数300名を数える企業に成長させました。

そのような成功を収めたにもかかわらず、いつもどの社員に対しても名前を「さん付け」で呼び、

「です、ます」調の丁寧語でお話されていました。

当時新人の営業として訪問させて頂いている私に対しても、とても丁寧に応対してくださいました。

ある時思い切って「社長はなぜいつも社員の方に、そのように丁寧にお話されるのですか?」と

伺いました。最初は何を聞かれているかわからなかったご様子でしたが、

しばらく考えたのちにおっしゃったのは、次の言葉でした。

「社員もお付き合いいただいている業者さんも皆さん、私の会社の為に働いてくれています。

その人たちに私が威張る理由がありません。」

数年後、その方は突然の病でお亡くなりになりました。

社葬は1000人を超す弔問客が訪れる大規模なものでした。

多くの社員が、大人であるにもかかわらず号泣されている様子は、

その経営者がどれほど慕われていたのかを表していました。

威張ることで、人の心をつかむことはできません。

威張ることで、良い社員は育たないのです。

そして良い社員が育たなければ、会社は成功しません。
                                    研修・セミナーの概要                          

社内だけの話ではない

さらに威張る人に共通していることは、出入りの業者に対しても威張るということです。

「うちが仕事をあげているのだから」
「うちの会社のほうが大きいのだから」

という気持ちが透けて見えるように威張るのです。

権力を手にした人たちは、自分という人間の価値までもが上がったように勘違いしてしまいがちです。

しかし決してそうではありません。

むしろその権威や権力に釣り合うよう、ご自身の格を上げる努力が必要だと言えるのです。

ありがとうの回数

ここで、経営者が自分の格を上げるために必要なビジネスマナーのひとつとして、

「ありがとう」という言葉をお勧めしたいと思います。

まずは、自分が1日に何回「ありがとう」と言ったかを数えてみてください。

朝、コンビニで何かを買った時
社員がコーヒーを入れてくれた時
頼んだ仕事の報告が入った時
電話をもらった時

どんなことに対してでもいいのです。

1日にどれだけ「ありがとう」と言っているかを数えましょう。

そして毎日、その回数を増やすようにしてください。

「ありがとう」という言葉は、人に感謝を伝える言葉です。

言葉にして口に出すことで、気持ちもついてくるものです。

人への感謝の気持ちがあれば、謙虚さを身に付けることができます。

毎回お伝えしていますが、経営者のイメージは会社のイメージです。

人としての格を下げるような言動は即、会社の格を落とすことを忘れずに、

周囲の人に対して決して威張らず謙虚であることを心がけましょう。


さて、次回の経営者のためのビジネスマナーは「任せること、そして責任をとること」について

お伝えする予定です。

お楽しみに!


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(社)ジャパン・パーソナル・ブランディング協会認定イメージコンサルタント、ビジネスマナー講師
ミューズ・ブランディング・アカデミー(株)千葉校 校長

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城戸景子(マナー講師)

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ソフトウエア会社でトップ営業ウーマンとして活躍。その実績に裏打ちされた「見た目づくり」、「ビジネスマナー」は、ビジネスツールとして翌日から仕事に生かせる即効性が強み。

城戸景子プロは朝日新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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