法定相続情報証明制度がスタートしました!
みなさん、こんばんは!
コラムをご覧いただきありがとうございます。
シリーズ「相続のキホン④遺産分割ってどうやるの?」をはじめます。
遺産分割とは?
遺産分割とは、亡くなられた方(被相続人)に複数の相続人(共同相続人)がいる場合において、相続財産を各共同相続人に割り当てることです。
遺産分割は、被相続人が遺言で定める場合(遺言で遺産分割の方法を第三者に委託することもできます)と共同相続人の協議でする場合があります。また、協議が整わない場合は家庭裁判所へ調停の申立てをしたり、審判を求めたりする場合もあります。
今日は、協議による場合について説明します。
なぜ遺産分割協議をするの?
適法な遺言がない場合の相続財産全て、または、適法な遺言があってもそれに遺産分割の方法が定められていない相続財産は、相続の開始(被相続人の死亡)と同時に、民法に定められた相続分で共同相続人に帰属します。
この相続財産の持ち合いの状態を変えたいとき、または、変えないと不都合が生じるときに遺産分割協議をします。
たとえば、預貯金者が死亡したことを金融機関が知った場合は、通常はその預貯金者の口座が凍結されます。その凍結を解除するためには、金融機関からその預貯金についての遺産分割協議書の提出を求められることが通常です。なお、遺産分割協議書に加えてその金融機関の任意の書類に相続人全員の署名、実印による押印が求められる場合もありますので、金融機関にあらかじめ確認しておくと良いです。
遺産分割協議をするのはだれ?
遺産分割協議は共同相続人全員で行い、全員の合意で成立するのが原則です。
だれが相続人になるかお知りになりたい方は、下記のコラムをご覧ください。
相続のキホン①相続人はだれ?
例外的に、相続人以外が遺産分割協議の当事者になりうる代表的なケースとして、未成年者や成年被後見人(*1)が相続人に含まれている場合があります。
共同相続人のうちに未成年者がいる場合は、その親権者である親が遺産分割協議をします。ただし、親権者である親が未成年の子と共同相続人である場合は、遺産分割をすることは親と子の利益が相反する関係になりますので、その子のために特別代理人の選任を家庭裁判所に申立て、その子に代って特別代理人が子の親や他の共同相続人と遺産分割協議をします。
共同相続人のうちに成年被後見人がいる場合は、成年後見人(*2)が遺産分割協議をします。成年被後見人と成年後見人が共同相続人である場合は、遺産分割に際して、成年被後見人のために特別代理人の選任を家庭裁判所に申立てるのが原則ですが、成年後見監督人(*3)がいるならば成年後見監督人が成年被後見人を代理して、成年後見人や他の共同相続人と遺産分割協議をします。なお、法定後見制度の類型として他に、保佐と補助がありますが、ここでは省略します。
また、民法において定める、相続放棄(*4)、相続欠格事由(*5)および相続人の廃除(*6)の規定にあたる人は相続人となりません。ただし、(*5)と(*6)にあたる人に子供がいて、その子が被相続人の直系卑属(*7)にあたる場合は(*5)や(*6)の人の代わりに相続人になります。
(*1)成年被後見人
精神上の障害により、事理弁識能力(物事の道理を理解して有効に意思表示をする能力)を欠く状態にあるとして、家庭裁判所により後見開始の審判を受けた方が成年被後見人です。
(*2)成年後見人
後見開始の審判で、成年被後見人のサポートのために選任される方が成年後見人です。
成年被後見人に代って法律行為や財産管理をします。
(*3)成年後見監督人
主に成年後見人の事務を監督する人です。
(*4)相続放棄
相続開始を知ったときから3カ月以内に相続しない旨を家庭裁判所に申し述べて、それが受理されることにより、はじめから相続人でなかったとみなされる制度です。
詳しくお知りになりたい方は、下記コラムをご覧ください。
相続のキホン③相続しないといけないの?
(*5)相続欠格事由
被相続人を死亡するにいたらせて刑に処せられた人や詐欺、強迫によって被相続人に遺言をさせた人など、民法の一定の要件(欠格事由)にあたる人は相続人にはならないとされています。
(*6)相続人の廃除
将来相続人になる予定の人のうち、被相続人に対して虐待などをする人がいる場合で、被相続人がその人を相続人から廃除したい旨の請求が家庭裁判所にあったとき、または、被相続人が遺言でその人を相続人から廃除したい意思を表示している場合で、相続開始後に遺言執行者から家庭裁判所に申立があったとき、家庭裁判所がその人を相続人から廃除するか否かを審判する制度です。
(*7)直系卑属
被相続人からみて後の世代で、直系の親族のこと、子や孫がこれにあたります。
いつまでに協議するの?
遺産分割協議自体に法律上の期限は定められていません。ただし、相続税法では、相続人が相続開始を知った日の翌日から10カ月以内に相続税の申告と納税をしなければなりませんので、相続税が課税される相続の場合は、原則としてこの期間内に遺産分割協議をすることになります。
なお、被相続人は遺言で相続開始から5年を超えない期間を定めて、その間は遺産分割を禁ずることが出来ます。
遺産分割協議の方法は?
遺産分割協議の方法には、以下の3つがあります。
①現物分割
各相続財産につき、誰が何をどのような割合で引き継ぐかを定める方法です。
最もわかりやすく、よくあるやり方です。
(例)土地と建物は長女が単独で、A銀行の預金は長男と次男が各1/2ずつ相続する。
②代償分割
ある財産を相続する代わりに、自分の財産から代償を支払う方法です。
(例)長女がマンションを相続する代わりに、自分の預金から次女にお金を払う。
③換価分割
相続財産を売却して、お金に換えて分配する方法です。
(例)被相続人が住んでいた家と敷地を売って、お金を法定相続分で分け合う。
②については、贈与税が懸案になります。
(例)の場合でいうと、長女が次女にお金をあげたとみられると贈与税が課税されてしまう虞があるということです。
遺産分割協議書に相続の代償として自分の財産を支払う旨や支払う財産の内容を記載することはもちろん、支払と受領の記録をしっかり残しておくなど、贈与とみなされないように、遺産分割にもとづき行ったという趣旨を明確にしておくことが大事になります。
③については、換価により売却益が出たときに、譲渡所得税が懸案になります。
たとえば、被相続人が取得したときよりも、土地の価格がかなり値上がりしている状態でその土地を相続のうえ売却して利益を得た場合などに問題になります。
なお、空き家の増加を防止するための措置として、相続財産が被相続人のみが住んでいた不動産で、それを相続人が売却して売却益が発生しても、一定の要件を満たす場合は、譲渡所得税が3000万円まで控除になる特例が新設されています。
特に②と③については税務的に慎重な検討が必要になってきますので、税理士に相談することをおすすめします。
今日は、ここまでにします!
次回は、「相続のキホン⑤遺産分割協議書のつくり方」を予定しています。
では、また!