離婚の準備は何から始めたらいいの?まずは、優先順位をつけましょう
親権者と監護者の違いについて~離婚後の戸籍と氏の変更~
離婚は、夫婦だけでなく、子どもにとっても大きな影響を与える出来事です。婚姻している間は父母による共同親権になりますが、離婚するときは単独親権になりますので、子どもの親権者をどちらの親にするか決める必要があります。親権者は監護者を兼ねますが、父母の合意があれば分けることもできます。しかし、親権者と監護者を分けると、将来に子どもの問題で父母が対立する可能性が高まります。そのため、離婚するときには、子どもの親権や監護についてよく考えて決めることが大切です。また、離婚後子供の戸籍や姓についても考えなくてはいけません。今回は子供の親権や戸籍、姓についてお話したいと思います。
親権とは
日本では、夫婦が結婚している間は、子供の親権を二人で共有していますが、夫婦が離婚するときは、子供の親権をどちらか一方に移す必要があります。これを単独親権制度と呼びます。単独親権制度では、親権者となった方が、子供の成長と教育に責任を持ち、子供の財産を管理する権利と義務を持ちます。親権の内容は、二つの権利に分けられます。一つは、財産管理権というもので、子供のお金や財産を適切に使ったり、貯めたりする権利です。もう一つは、身上監護権(監護権)というもので、子供の名前や住所を決めたり、教育やしつけをしたり、学校や病院に通わせたりする権利です。親権者は、子供の幸せと将来のために、これらの権利と義務を果たさなければなりません。
財産管理権:子どもの財産を保護し、子どもの法律行為(契約や相続など)に同意したり代理したりする権利と義務
身上監護権(監護権):子どもを健全に育てるために必要な措置(監護・教育・居所指定・職業許可など)を取る権利と義務
親権と監護権
協議離婚の際、夫婦で話し合って子供の親権者を決めますが、通常は一方の親だけが親権者になります。 しかし、例外的に、親権者と、監護権者(親権の中の一部)を分けて指定することがあります。例えば、親権を持つのは母親、監護権を持つのは父親と指定したとします。この場合、子供と暮らすのは監護権者である父親になります。 親権と監護権の違いを分かっていない母親は、親権を取れば子供と暮らせると勘違いしてしまうことがあります。離婚が成立してから、自分の間違いに気づいて驚くことになります。このようなトラブルを避けるためには、親権と監護権の意味をしっかり理解しておく必要があります。
親権と監護権を分けて指定するメリット・デメリット
ではなぜ親権と監護権を分けて指定する場合があるのでしょうか?以下のようなメリットがあるため、親権者と監護権者を分けて指定することがあります。しかしデメリットもあります。メリットとデメリットにについてよく理解した上で親権について考えなくてはいけません。
メリット
子供がいる夫婦が別れるとき、親権を決めることは大切な問題です。 しかし親権をどちらも譲らなくて、話し合いが進まないと、離婚が成立しません。そんなときに、親権と監護権を分けて持つことで早期に離婚を成立させることができます。これは、子供にとっても両親との関係を保ち続けやすくなり、心の安定につながるというメリットがあります。
デメリット
親権と監護権を別々にすると、離婚しても元配偶者とやりとりしなくてはいけないというのがデメリットです。子供が法的なことをするときには、親権者の承諾が必要なのですが、子供と一緒に暮らしている監護者は法的なことを代わりにできないので親権者に連絡する必要があるからです。
親権者になるということ
離婚するときに、自分が親権者になるかどうかはよく考えなければなりません。「自分の気持ち」と「子供の利益と幸せ」を最優先にして判断しましょう。その上で親権者になるという選択をしたならば、そのための準備が非常に重要です。何よりも、親権者になりたいと思っているならば、子供を相手に渡してはいけません。たとえば、離婚に向けて別居をするという段階になったときに、一時的にでも子供を残して自分だけ家を出るということはしないでください。逆に相手が家を出るときには、子供を引き渡さないように気をつけることも大切です。一度子供と離れてしまうと、後で親権者になりたいと言っても、相手に拒否されてしまう可能性が高いからです。
離婚後の見通し
自分の今後の生活についてしっかりと見通しを立てることが大切です。そのためには、今後の生活費について具体的に算出する必要があります。生活費とは、家賃や食費、被服費、学費など、日々の生活にかかるさまざまな費用のことです。これらの費用は、離婚後にどのように変わるのか、どのように工夫して節約できるのか、などを考えておくことが望ましいです。特に、子供がいる場合は、子供の生活費の半分は養育費をもらうことを考えなくてはいけません。養育費とは、離婚後に親権を持たない方が、親権者に対して子供の養育に必要な費用を支払うことをいうものです。養育費をいくらにするのかは、協議離婚であれば夫婦の話合いで決められますが、家庭裁判所の算出表も参考になります。家庭裁判所の算出表とは、養育費の額を決める際に、家庭裁判所が参考にする基準のことです。この算出表は、収入や子供の年齢、必要経費などに応じて、養育費の目安を示しています。また、子供の進学の際には、入学金や授業料、教科書や制服などの教材費など、様々な出費が予想されます。その際の出費をどうするかも、離婚前に話し合っておく必要があります。そして、たとえ離婚しても、今後子供をどのように育てていくかを夫婦二人で話し合う必要が出てきます。またそうした方が、子供の精神的な安定にもなりますし、金銭の負担が親権者のみにかかるということを防げます。離婚は、夫婦だけでなく、子供にとっても大きな影響を及ぼすことです。そのため、離婚を決める前に、生活費や養育費などの金銭面だけでなく、子供の心のケアや教育の方針などの育児面についても、十分に考慮することが必要です。
親権者を決める基準
親権は、夫婦で話し合って決めることができれば、そのまま離婚届を提出することができますが、親権をめぐって意見が合わない場合は、家庭裁判所に調停を申し立てる必要があります。調停とは、家庭裁判所の調停委員という専門家が、夫婦の話を聞いて、親権や養育費などの離婚条件について、双方が納得できるように仲介する手続きです。しかし、調停でも合意に至らなかった場合は、離婚裁判となり、裁判官が親権者を決定することになります。調停や裁判で親権を決めるときに、最も重要視されるのは、子供の利益と幸福です。そのため、以下のような点が判断の基準となります。まず、どちらの親が子供と同居しているかということです。子供と一緒に暮らしている親は、子供の環境や生活に影響を与えることができるので、親権者として有利になります。次に、日常的にどちらの親が主に子供の世話をしているかということです。子供の食事や着替え、学校や習い事の送り迎えなど、普段から子供の面倒を見ている親は、子供との関係が強く、親子の愛情が深いと考えられます。そのため、親権者として優先されます。また、子供の年齢も判断要素のひとつです。胎児の場合は、母親が親権者になるのが原則です。それは、胎児は母親の体の中にいるので、母親の健康や安全が胎児の利益に直結するからです。10歳以下の場合も、母親が親権者になることが多いです。それは、この年齢では、母親が主に子供の世話をしており、子供との関係が密であることが多いからです。これは一般的な傾向であり、必ずしも母親が親権者になるというわけではありませんが、離婚原因をつくったのが母親であっても、愛情を子供に注ぎ、食事など日常の世話をして子育てをしていれば、母親が優先されます。15歳以上の場合は、子供自身の意思が尊重されます。子供がどちらの親と暮らしたいかという希望は、親権者を決める際に大きな影響を与えます。
離婚後の戸籍
離婚時には親権について決定したら、戸籍や氏についても考えなくてはいけません。妻が親権者になる場合は、新たに戸籍を作らなければなりません。
戸籍とは
戸籍とは、国民の身分や家族関係を公式に証明する書類です。戸籍は、夫婦とその子どもたちで一つの家族として登録されます(戸籍法6条)。戸籍には、最初に“筆頭者”という人が書かれます。この人は、結婚したときに名字が変わらなかった方の配偶者です。日本では、結婚するときに女性が男性の名字になることが多いので、戸籍の筆頭者は男性になることがほとんどです。戸籍は、自分の本籍地がある市区町村の役場で管理されており、戸籍法に従って届け出をすると登録や変更ができます。
復籍
離婚すると原則結婚前の戸籍に戻ります。この手続きを復籍と言います。結婚した時、氏を変更しなかった方(筆頭者)は、離婚後に戸籍の移動はありません。大概は妻が戸籍から抜け、夫はそのままの戸籍になります。そして夫の戸籍の元妻の欄には、「除籍」という記載がされます。
新しく戸籍をつくる
復籍せず、新しく戸籍をつくる場合もあります。「子供がいる場合」「すでに両親が他界している場合」などはあらたに戸籍をつくります。なぜ「子供がいる場合」にも新たに戸籍を作らなければならないのかというと、法律上、戸籍には2代(親と子)しか入れないからです。手続きとしては離婚届の「婚姻前の氏に戻る者の本籍」欄で「新しい戸籍を作る」にチェックします。
子供の戸籍と氏
離婚すると子供の戸籍と氏はどうなるのでしょうか?親権者になった方の戸籍と氏に自動的に変わるわけではありません。これは、日本の戸籍法によると、離婚した場合でも、子供は夫婦の婚姻時の戸籍に属し続けると定められているからです。つまり、母親が親権者になった場合でも、子供の戸籍は結婚前の夫の戸籍に入ったままで、氏も夫と同じ氏になります。例えば、山田太郎さんと鈴木花子さんが結婚して、山田太郎さんの戸籍に入り、山田花子さんとなりました。そして、山田太郎さんと山田花子さんの間に子供が生まれ、山田一郎さんと名付けられました。このとき、山田一郎さんの戸籍は山田太郎さんの戸籍に入り、氏も山田になります。その後、山田太郎さんと山田花子さんが離婚し、親権は山田花子さんが持ちました。しかし、この場合でも、山田一郎さんの戸籍は山田太郎さんの戸籍に入ったままで、氏も山田のままです。山田花子さんは、自分の戸籍に戻り、鈴木花子さんとなりますが、子供の戸籍と氏は変わりません。子供の戸籍と氏を変更するには手続きが必要になるので注意しましょう。
子供の戸籍と氏を変更する手続き
母親が親権者であっても、子どもの氏は変わらず、母親と同じになりません。母親の戸籍に子どもを入れるには、法律に基づいて「子の氏の変更許可」の申し立て”をしなければなりません(民法第791条)
「子の氏の変更許可」は、子どもの住所地を管轄する家庭裁判所に、以下の必要書類を用意して申し立てます。
- 子の氏の変更許可の申立書(15歳以上・15歳未満の2種類あり)
- 子どもの戸籍謄本(全部事項証明書)
- 父母の戸籍謄本(全部事項証明書)
- 子ども1名あたり収入印紙800円
- 連絡用の郵便切手
- 印鑑
子の氏の変更許可の申立書は、家庭裁判所のホームページからダウンロードすることができます。
- 申立人の氏名、住所、電話番号
- 子の氏の変更をする理由・動機
- 子の氏の変更を希望する子の氏名、生年月日
申立人の署名と押印 申立書と必要書類を家庭裁判所に提出したら、あとは待つだけです。家庭裁判所は、申し立てを審査し、子の氏の変更を許可するかどうかを決めます。申し立てが認められたら、審判書謄本が自宅に郵送されます。審判書謄本は、子の氏の変更が正式に認められたことを証明する重要な書類です。審判書謄本が届くまでには、1週間程度かかります。家庭裁判所の許可を得て、市区町村役場で入籍の手続きをすれば、子供の戸籍と氏が変更されます。子どもが15歳未満であれば親権者が、または15歳以上であれば子供が直接家庭裁判所に申し立てをできます。子どもの氏をどうするべきかは、子どもが中学生以上の場合は、子供の意見も聞きながら考える必要があるでしょう。
婚氏続称
結婚したときに変えた姓は、離婚してもそのまま利用したいという方がいます。仕事や子育てで築いた人間関係は、その姓のままの方が都合がよかったりします。そんな人には「婚氏続称(こんしぞくしょう)」という選択肢があります。離婚しても、結婚時の姓を名乗り続けることができるのです。
手続き
手続きは、届出人の本籍又は所在地の役所に「離婚の際に称していた氏を称する届」を提出して行います。これは役所でもらうことができます。本人確認書類や戸籍謄本などが必要になるので用意しましょう。
期限
離婚届を提出する際に、婚姻時の姓をそのまま使用することが決まっているのならば、離婚届と同時に出すことで出し忘れなどを防げます。しかし、まだその時点で決まっていないのであれば、離婚の日から3か月以内に提出する必要がありますので注意しましょう。
戸籍
「婚氏続称」を選択した場合でも、妻は戸籍からでて、新しい戸籍を作る必要があります。「婚氏続称」をして、子供の戸籍と氏を変更しなかった場合、母親は子供と同じ氏ですが、戸籍は違います。日常生活に問題はありませんが、父親が再婚したりした場合、再婚相手と子供の戸籍が同じになります。
もちろん子供の戸籍を母親の戸籍に移動させることもできます。この場合、家庭裁判所で「子の氏の変更」の手続きをすることになります。「子の氏の変更」手続きという名称ですが戸籍だけ変更する際も「子の氏の変更」手続きになりますので注意しましょう。
離婚後、子供の姓や戸籍の手続きは?詳しく解説します!
離婚すると、離婚届を出せば手続きが終了と考える方もいるかもしれませんが、実はそうではありません。子供がいる場合、子供の戸籍や氏についても考えなくてはなりません。これは、離婚する際、親権者になったからと役所の方で自動的に子供の戸籍や氏までも変更してくれるものではありません。では、どのような仕組みになっているのか、今回は戸籍と氏について詳しく解説したいと思います。
戸籍について
戸籍とは、日本の国民であることを証明するための公式な書類です。戸籍は、夫婦とその子どもたちで一つの家族として登録されます(戸籍法6条)。戸籍には、最初に“筆頭者”という人が書かれます。この人は、結婚したときに名字が変わらなかった方の配偶者です。日本では、結婚するときに女性が男性の名字になることが多いので、戸籍の筆頭者は男性になることがほとんどです。戸籍には、人の生まれた日や場所、両親や配偶者などの親族の名前や関係、死んだ日や場所などの情報が記録されています。戸籍は、結婚や離婚、養子縁組などの出来事があったときに変更されます。戸籍は、市町村の役場に保管されており、戸籍法に従って届け出をすると登録や変更ができます。必要なときに戸籍謄本や戸籍抄本というコピーを取ることができます。戸籍は、日本国民の権利や義務を守るために重要なものです 。
離婚すると戸籍はどうなるの?
復籍
離婚すると戸籍はどうなるのでしょうか。離婚すると原則結婚前の戸籍に戻ります。この手続きを復籍と言います。戸籍の筆頭者(戸籍の最初に記載されている人)は、そのままの戸籍に残りますが、身分事項欄に離婚の日付と理由が記載されます。そして元妻の欄には、「除籍」という記載がされます。筆頭者でない方(婚姻時に姓を変えた方)は、その戸籍から抜けて、原則元の戸籍戻ります。大概、筆頭者が夫である場合が多いため、夫が戸籍に残り、妻が元の戸籍に戻ります。その際、子供の戸籍は夫の戸籍のままになります。
新しく戸籍を作る
復籍すると、子供の戸籍は元夫の戸籍に入ったままになります。子供を自分の戸籍に入れたい場合は、新しく戸籍を作ります。
妻が実家の戸籍に戻った場合、妻は実父の戸籍に入るため子供(孫)はその戸籍に入れません。戸籍制度では親子2代までしか、戸籍に入れないからです。そこで、自分を筆頭者とする新戸籍をつくります。これは、離婚届を出す際「婚姻前の氏にもどる者の本籍」欄で「新しい戸籍をつくる」にチェックすれば大丈夫です。
そして、子供の住所地の家庭裁判所に「子の氏の変更許可」の申し立てをします。許可を得て、市町村役場で入籍の手続きをすれば、子供の戸籍が変更されます。この手続きは、子供の親権者でなければできません。相手が親権者の場合は相手に申し立ててもらいます。また、子供が15歳であれば、子供自ら氏の変更申し立てをすることができます。
例えば
田中太郎さんと山田花子さんが結婚して、田中太郎さんの戸籍に入り、田中花子さんとなりました。そして、田中太郎さんと田中花子さんの間に子供が生まれ、田中一郎さんと名付けられました。このとき、田中一郎さんの戸籍は田中太郎さんの戸籍に入り、氏も田中になります。その後、田中太郎さんと田中花子さんが離婚し、親権は山田花子さんが持ちました。しかし、この場合でも、田中一郎さんの戸籍は田中太郎さんの戸籍に入ったままで、氏も田中のままです。山田花子さんは、自分の戸籍に戻り、山田花子さんとなりますが、子供の戸籍と氏は変わりません。
子の氏の変更許可
「子の氏の変更許可」は、子どもの住所地を管轄する家庭裁判所に、以下の必要書類を用意して申し立てます。
- 子の氏の変更許可の申立書(15歳以上・15歳未満の2種類あり)
- 子どもの戸籍謄本(全部事項証明書)
- 父母の戸籍謄本(全部事項証明書)
- 子ども1名あたり収入印紙800円
- 連絡用の郵便切手
- 印鑑
子の氏の変更許可の申立書は、家庭裁判所のホームページからダウンロードすることができます。
- 申立人の氏名、住所、電話番号
- 子の氏の変更をする理由・動機
- 子の氏の変更を希望する子の氏名、生年月日
申立人の署名と押印 申立書と必要書類を家庭裁判所に提出したら、あとは待つだけです。家庭裁判所は、申し立てを審査し、子の氏の変更を許可するかどうかを決めます。申し立てが認められたら、審判書謄本が自宅に郵送されます。審判書謄本は、子の氏の変更が正式に認められたことを証明する重要な書類です。審判書謄本が届くまでには、1週間程度かかります。家庭裁判所の許可を得て、市区町村役場で入籍の手続きをすれば、子供の戸籍と氏が変更されます。子どもが15歳未満であれば親権者が、または15歳以上であれば子供が直接家庭裁判所に申し立てをできます。子どもの氏をどうするべきかは、子どもが中学生以上の場合は、子供の意見も聞きながら考える必要があるでしょう。
離婚後に新しい戸籍を作るメリット・デメリット
メリット
①本籍地を好きなところにできる
離婚時に新しい戸籍を作くれば、現在の住所地などに本籍地を定めれば、戸籍謄本の取得など何かと都合が良いでしょう。戸籍地が遠方であったりすると、戸籍謄本を取りたいとなった場合に、わざわざ取得に行くことも大変ですし、郵送で戸籍謄本を取得しようとすると時間と手間がかかります。また郵送請求する際には現金を郵便で送るわけにはいきませんから、定額小為替を同封する必要がありますがその準備も意外に面倒だったりします。
②子供と戸籍を同じにできる
新しい戸籍を作ることで、子供と同じ戸籍になります。大概、結婚により氏が変わるのは女性の方です。前述したとおり、離婚が成立すると、結婚に際して氏を変更した人は原則として元の氏に戻り、結婚前の戸籍に復帰します。子どもがいる場合、離婚して母親が親権を持つとしても、自動的に同じ戸籍になるわけではありません。法律上、母親が元々属していた両親の戸籍に母親と子どもが戻ることは想定されていません。母親と子どもが同じ戸籍に入るためには、新しい戸籍を設立する必要があります。
③周囲に離婚が気づかれない
新しい戸籍を作って婚姻時の姓を使いつづける手続きをとれば、名前が変更になりませんので離婚を周囲に知られたくない人には気づかれません。婚姻時の姓を使い続ける手続きを「婚氏続称」といいます。
④元夫に新しい住所が知られずに済む
DVが離婚の理由である場合、元配偶者に現在の住所を知られることは避けたいものです。子どもが元夫と同じ戸籍に残っていると、戸籍の附票を通じて住所が判明してしまう恐れがあります。戸籍の附票(ふひょう)には過去の住所が記録されており、子どもの戸籍情報から現在の住所を容易に知ることができます。元夫による無断の住所調査を防ぐためには、新たな戸籍を作成し、子どもをその戸籍に入れることで、元夫の戸籍から完全に分離させることが重要です。これにより、離婚後は法的に他人となるため、元夫が戸籍の附票を取得し、住所を調べることは困難になります。
デメリット
①氏が変わることで周囲との関係がストレスになることがある
新たな戸籍を作成し、離婚によって婚姻前の氏に戻ることは、成人間では、この変化について質問されることなく関係が継続することも多いですが、子供たちの間では必ずしもそうではありません。子供たちの社会的なつながりにおいて、離婚が影響を及ぼす可能性があることを理解し、適切に対応することが重要です。親としては、子供たちがこの変化を理解し、受け入れられるよう支援する責任があります。また、子供たちが他の子供たちからの質問や好奇の目にさらされたときに、どのように対処すればよいかを伝えることも大切です。このような家庭の事情は、子供の成長において敏感な問題となり得るため、慎重な配慮が求められます。
②元夫の住所を簡単に知ることができなくなる
自身が新しい戸籍を作り、子どもをその戸籍に入籍させると、元夫とは当然別の戸籍になるわけですから、元夫の戸籍の附票を取得することは簡単にはできなくなります。取得できないわけではないですが、役所にどうして元夫の附票が必要なのかを説明し正当な理由がないと発行してもらえなくなります。養育費の不払い、離婚後に財産分与や慰謝料を改めて請求するなどで元夫の住所を知りたい場合などは少し手間がかかることになります。
離婚後の面会交流の意義と必要性ついて~再婚したら面会交流はど
離婚というのは、夫婦間の関係が修復不可能なほどに悪化してしまったときに、法的に結婚関係を解消することです。離婚するときには、夫婦の財産や収入、養育費や慰謝料など、これまでの生活を清算するために様々な問題を解決しなければなりません。しかし、それだけではありません。もし夫婦に子供がいる場合には、子供のことも考慮しなくてはいけません。子供は、離婚によって父母の一方と離れて暮らすことになる可能性が高く、その場合には、親子関係がどのように維持されるかということが重要になります。夫婦関係が破綻しても、子供にとっては父母は変わらない存在です。子供の心の安定や健全な成長を考えたとき、離れて暮らす親(非監護親)との関係も大切にしなければなりません。そのために、離婚後も非監護親と子供が定期的に会ったり、連絡を取り合ったりすることを面会交流と呼びます。面会交流は、子供の権利として保障されているものであり、非監護親の権利でもあります。今回は、面会交流について、その意義や方法、離婚時の取り決めやトラブルの対処などについて詳しく解説します。
面会交流とは
面会交流とは、離婚後に子どもと離れて暮らすことになった親(非監護親)が、子どもとの関係を維持するために行う活動です。面会交流は、子どもの健やかな成長にとって重要なものであり、特別な事情がない限り、実施するべきだと考えられています。面会交流には、直接会って一緒に過ごすことや、手紙や電話などで連絡を取ることなどが含まれます。面会交流は、民法によって親の権利として認められているものではありませんが、離婚時に協議で定めるべき子どもの監護に関する必要な事項として規定されています。面会交流については、離婚時に取り決めておくことが望ましいですが、法律で決められた時期はありません。離婚時に取り決めておかないと、後になってトラブルが起こる可能性があります。また、離婚前に子どもに会えない状況にある場合には、家庭裁判所に面会交流調停を申し立てることができます。面会交流を考える際には、子どもの福祉・利益に資するのは何かという視点で、感情的な対立に陥らないように注意することが必要です。
面会交流の条件や頻度
面会交流の頻度や条件は、基本的には父母間で話し合って決めます。面会交流は、子どもの権利として実施すべきものであり、子どもの利益を最優先に考えることが重要です。面会交流の方法には、対面で会うことや、電話やメールなどで連絡を取ることなどがあります。面会交流の頻度には、週1回や月1回など様々なパターンがありますが、子どもの年齢や性格、親子関係などによって異なります。面会交流の時間は様々ですが、離婚時に詳細を決めておくこともできます。(午後1時から午後4時など)宿泊の有無も決める事ができますが、ほとんどの場合は宿泊なしで数時間程度という傾向があります。面会交流に関する連絡や待ち合わせ場所や実施場所なども、事前に話し合っておくことと離婚後スムーズに面会交流が実施されます。しかしあまり詳細に決めてしまうと柔軟性に欠けてしまします。話し合いで合意できた場合は、合意内容を離婚協議書または公正証書にしておくことがおすすめです。
決める内容
- 面会交流の頻度
- 面会交流の時間
- 面会交流の場所
- 面会交流時の連絡手段
- 普段の連絡手段
- 宿泊の有無
- 行事の参加
- プレゼントの受け渡しについて
- 親戚との関わり方について
これらすべてを詳細に決めるかどうかは夫婦の関係性にもよると思います。詳細に決めておくことがかえってスムーズの面会交流の実施を阻害してしまうこともあります。双方当事者にとってどのような規定が有用がよく考えて決めましょう。
面会交流と養育費の関係
面会交流と養育費は、どちらも子供のことに関係することですが、それぞれ異なる性質を持っています。面会交流は、子供の権利として保障されているものであり、非監護親との親子関係を維持するために必要なものです。養育費は、子供の生活費や教育費などを支払うために必要なものです。面会交流と養育費は、子供の福祉や利益に資するものですが、面会交流と養育費は別に考えなくてはいけません。つまり元配偶者が養育費を支払わないからといって、面会交流をやめたりしてはいけません。逆に、面会交流ができないからと、養育費の支払いを拒むこともしてはいけません。養育費の支払いの有無が面会交流の実施に影響を与えるべきではありません。それは、面会交流は子供の権利だからです。感情的なことで子供の権利を侵してはいけません。もし、話し合いで合意できない場合は、家庭裁判所に面会交流調停を申し立てることができます。
面会交流は義務なのか?
面会交流とは、離婚や別居によって子どもと離れて暮らすことになった親が、子どもとの親子関係を維持するために行う活動です。面会交流は、子どもの権利として保障されているものであり、子どもの心の安定や健全な成長にとって有益なものです。そのため、特別な事情がない限り、面会交流は実施されなければなりません。面会交流に応じる義務があるかどうかという問題は、子どもの利益を最優先に考えるべきです。離婚や別居を決意する状況では、相手に対して悪感情を持っている場合が多いかもしれませんが、それは子どもと親の関係ではありません。子どもは、離婚や別居によって父母の一方と離れて暮らすことになっても、どちらの親からも愛され、大切にされていることを実感して成長するべきです。面会交流を通して、そのことを子どもに伝えることが、親の責任です。もちろん、面会交流を行うことが子どもの利益にかなわない場合もあります。その場合は、面会交流を認めない、もしくは一定の制限を付ける必要があるかもしれません。しかし、その判断は、感情的なものではなく、客観的なものでなければなりません。
面会交流を行わないやむを得ない事情
面会交流は実施されなければならないと上記でお話しましたが、場合によっては、面会交流を行わないという、やむを得ない判断をすることもあります。例えば、次のような場合には面会交流の実施に慎重に対応すべきでしょう。
子どもを虐待する、子どもの心を動揺させるなど悪影響を与える場合
母に対して暴力をふるい、面会交流をスムーズに実施できない場合
非監護親に薬物使用の疑いやアルコール依存等がある場合
非監護親が子どもを連れ去るリスクがある場合
これらの場合は、面会交流を行うことが子どもの利益にかなわないと判断される可能性があります。
子供自身が面会交流したがらない
面会交流を実施する上で、子供が非監護親に会いたがらない場合はどのように考えたらいいのでしょうか?面会交流は子ども自身が面会交流に対してどのような意思を持っているかが、重要な要素となります。子どもが本心から「会いたくない」と言っている場合は、その意思を尊重する必要がありますが、子どもの年齢や同居親の影響なども考慮する必要があります。子どもがある程度の年齢になると、自分の意見を言えるようになりますが、それが必ずしも本心であるとは限りません。例えば、同居親が面会交流に反対していたり、相手親に対して持っている悪い感情を子供に伝えている場合、子どもは同居親の考えに影響を受けて、面会交流に消極的になってしまうことがあります。このような場合、面会交流を制限するのではなく、同居親に面会交流の基本的なルールを守ってもらうなどの対応が必要となります。家庭裁判所の実務では、10歳前後を目安に直接に意思の確認をし、意思を重視する傾向にありますが、その他の事情から、面会交流を実施することが子どもの利益にかなうと判断される場合には、面会交流を認める審判がなされることもあります。子どもが高校生くらいになって、自らの考えとして、「会いたくない」と言っているようであれば、その考えを尊重すべきであり、無理矢理会わせることはできないでしょう。
面会交流について話がまとまらない場合
面会交流について相手と合意できない場合、家庭裁判所に面会交流の調停で調停委員を介して話し合いをして決めるか、または審判を申し立てて裁判所に決めてもらうことができます。面会交流の調停申し立てには、①離婚調停を申し立てて、その中で面会交流についても話し合う方法と、②面会交流調停を別に申し立てる方法があります。すでに離婚が成立している方は、②のみとなります。
調停と審判
子の監護に関する処分、面会交流調停とは、子どもとの面会交流について合意ができない場合に、裁判所に申し立てる事件です。離婚前や別居中でも、この事件を申し立てることができます。裁判所では、調停委員という専門家が、両親の間に入って話し合いを進めます。調停委員や裁判官は、面会交流の内容や条件を決めるために、家庭裁判所調査官という職員に子どもの状況を調べてもらったり、子どもとの面会交流を試みたりします。調停委員は、子どもの年齢や性格や生活などに配慮して、子どもの負担を減らし、子どもの気持ちを尊重した話し合いを行います。また、両親に、子どもとの面会交流の際に守るべきことをアドバイスしたりします。しかし、話し合いが成立しない場合は、調停が終わり、審判という手続きに移ります。審判では、裁判官が、すべての事情を考慮して、面会交流の内容や条件を決めます。
再婚と養子縁組
離婚や別居によって、子どもと離れて暮らすことになった親が、子どもとの面会交流を行うことは、原則として実施すべきです。しかし、場合によっては、面会交流を行わないという、やむを得ない判断をすることもあります。例えば再婚するとき、子どものことを考えて、今後の面会交流をどうするか決めます。子供が小さいうちに再婚する場合には、再婚相手が子どもを養子にすることもあります。これを養子縁組と言います。養子縁組は、夫婦と子どもの関係を法律的にも実質的にも強くすることができます。養子縁組をすると、子どもは新しい親の名字や戸籍に入ります。そして、新しい親は子どもの面倒を見たり、お金を出したりする義務ができます。小さい子どもは、時間がたてば、新しい親になれることができます。養子縁組は、子どもにとって安定した家庭を作ることになります。結果、子供は養親と新しい親子関係を築くようになっていきます。そのことを考えた上で面会交流を行わないという判断もあります。
再婚と養育費の見直し
再婚するときは、養育費についても改めて考えなければいけません。養育費とは、子どもの教育や生活に必要な費用のことで、離婚した親は、子どもと同居していない方が、子どもに対して養育費を支払う義務があります。養育費の支払いは、子どもが成人するまで続きますが親が再婚すると、養育費の支払いが変わることがあります。養子縁組とは、法律上の親子関係を変更することで、養子縁組をした子どもは、新しい親と同じ姓や戸籍に入ります。そして、新しい親は子どもの養育や財産の管理などの権利と義務を持ちます。そのため、養子縁組をした子どもに対しては、元の親は養育費を支払わなくてもよいとされることが多いです。養子縁組をすると、元の親との親子関係は消滅し、新しい親との親子関係が成立します。ただし、新しい親が経済的に困難であったり、元の親が子どもとの面会交流を希望したりする場合は、養育費の支払いを続けることもあります。再婚するときは、面会交流と一緒に、養育費の支払いについても元配偶者と話し合って決めることが大切です。
再婚禁止期間の見直し
ところで、男性は離婚後すぐに再婚できますが、女性は離婚から100日以内の再婚が法律で禁止されていました。この規定は、女性が前夫の子を妊娠している可能性がある場合に、子の父親が誰であるかを明確にするために設けられたものです。しかし、この規定は、女性の再婚の自由を制限し、男女間の平等を損なうものとして、長年にわたって批判されてきました。そして、令和4年12月10日、民法の嫡出推定制度の見直し等を内容とする民法等の一部を改正する法律が成立し、令和6年4月から施行されます。この改正により、再婚禁止期間は廃止され、女性は離婚後すぐに再婚できるようになります。また、嫡出推定制度も変更され、婚姻中に妊娠した子を夫の子と推定する期間は、婚姻の成立の日から200日を経過した後から離婚の日までとなります。これにより、子の父親の判定がより正確になり、子の利益も保護されます。女性だけ再婚禁止期間があるのは不合理ですし、先進国の多くでは再婚禁止期間は廃止されています。そもそも、この法律ができたのは明治時代です。今は令和です。時代に合った考え方に法律も変えていかなければなりません。
明るい未来のための第一歩
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