イレギュラーな墓じまい

佐々木博一

佐々木博一

今回は、類のないイレギュラーな墓じまいの事例をお話させていただきます。

先日、某お寺のご住職様より相談したいことがあるとのご連絡をいただきました。
伺って話を聞いてみると、墓じまいをしてほしい墓地が境内に1ヵ所あるとのこと。
その場所を案内していただいて確認してみると、墓石は既に片付けられていて、遺骨も既に移されていたようでした。

ですが、外柵一式、灯籠などはそのまま放置されている状態でした。納骨堂からは草や細い木が生えていて、作業途中の石の残骸が散乱していました。

ずいぶんと荒れているな、だいぶ時間も経過しているようにも見えるし…。
そう思って墓地を眺めていると、住職が話し出しました。
「実はこの墓地は三年以上もこの状態なんだよ。」
「えっ!どういうことですか?」と私。

住職はことのいきさつを話してくれました。
三年以上も前に、この墓地を使用していた檀家様から、墓じまいの相談を受けたそうです。その檀家様は、他県に生活の拠点があり、遺骨も同じ宗派の近隣のお寺に頼むつもりでいる。こちらには戻ってくることもないだろうから、墓じまいを検討しているとのことでした。

住職は話を聞いて快く承諾し、墓じまいをすることになったそうです。
解体撤去工事をする業者は、こちらの地元の業者に依頼するつもりだということでした。

着工当日には、檀家様ご夫婦と、依頼された業者も参加され、抜根供養を行い、墓石は外され、中に入っていた遺骨は檀家様が預かり、その日のうちに檀家様は現在お住まいの地域に帰って行かれたそうです。

檀家様は住職に向かって、
「支払いも済ませていますし、後は石屋さんにお任せしておりますので、お世話になりました。」と言い残して、帰られたそうです。

ここまで聞くと、よくある墓じまいの風景です。

ですが、次の日からその石屋さんは姿を見せず、三年以上も経っているとのことでした。

住職に、「その石屋さんには連絡がつくのですか?」と尋ねてみた。
何度も連絡はしていたらしい。その度に「従業員が辞めたので…」「機械が故障して現場にでることが出来なくて…」奥様らしい方が電話に出た時は「社長が入院してしまい…」
などど、やれない理由ばかり並べ立てていたというのだ。
そのうち、電話をかけても電話に出なくなってしまった、とのことだった。

住職は、
「途中からの作業でやりづらいだろうが、何とか片付けてもらえないか」
ちょうど山門の入り口付近の場所で、他の檀家様からも、「どうなっているのか」聞かれるなどして、ほおってはおけなくなってしまったようだ。

作業の工程はともかく、やるからには費用が発生します。そのことについて尋ねると、
「お寺で責任を持ってお支払いします。」との回答だった。

でもそれでは…(私)
住職が言うには、手続きを踏んで司法の場に委ねるつもりだというのだ。
裁判所への書類も既に準備されているようでした。

お盆まで何度か連絡をとってみるが、回答が得られなかった時や、作業をしてくれなかった時は、どうか墓じまいの作業をしてほしい、とのことだった。

私は、住職からその石屋さんの所在地を教えていただき、その場所まで行ってみた。
確かに石屋さんのたたずまいだった。クレーンの付いたトラックと軽トラが停まっていた。
加工場らしき建物も覗いてみた。彫刻途中の墓誌が置いてあり、さっきまで稼働していたかのようにも見えた。
思い切って声をかけてみましたが、応答はありませんでした。

写真も撮り、後日住職にその時の様子を説明した。根気強く連絡を取ることを勧め、どうしてもだめな時は、弊社で墓じまいを受け賜わることを伝えておいた。

そして、お盆が過ぎ8月末の頃、住職から連絡をいただき、その墓地の墓じまいの作業をすることになりました。作業は何事もなく終了し、代金は住職からいただきました。

その後のことは、正直聞いてもいませんので分かりません。

これを読んだ方は、どう感じましたでしょうか?
墓地の返納は、使用していた檀家様の義務、最後まで見届ける必要があったのでしょうか?
理由はともかくとして、三年以上もほったらかしにした石屋さんの責任は?
墓地の所有者である、お寺の責任は?

角度を変えて考えてみれば、様々なご意見もあるのかもしれませんが、30年以上石材の業界にいる私でさえ、このような事例は初めてのことでした。

ですが、ここで言えることは、同業社である立場の私としては、しっかりと石材店を選んでほしいということです。料金や利便性だけではなく、社長さんや従業員の接客態度や人柄、今はネットでも口コミや評判をみることができるので、そういったところから情報を得るなどして、石材店を選択することが大事になるのではないかと思います。

また、石材店も、檀家様と菩提寺の間に入って、墓地という場所において作業をするということを踏まえると、しっかりとした責任を持って作業することが石材店にも求められることではないでしょうか。(ごく当たり前のことなのですが)

墓じまいをするという決断は、簡単な決断ではないことが多いように感じます。
ある意味大きな決断をした結果の行為が墓じまいなのですから、石材店選びも慎重に決断して、後悔のない今後のご供養につなげていってほしいものです。

お墓総合サポートサービス http://ohakasupport.com/

\プロのサービスをここから予約・申込みできます/

佐々木博一プロのサービスメニューを見る

リンクをコピーしました

Mybestpro Members

佐々木博一
専門家

佐々木博一(墓石・終活カウンセラー)

お墓総合サポートサービス

「後継者がいない」「遠くて墓参りに行けない」などのお墓関連をはじめ、葬儀、相続、供養etc…。墓石業界で30年のキャリアを持つ終活カウンセラーが悩みに応え、最高の人生のエンディングをともに考えます。

佐々木博一プロは青森放送が厳正なる審査をした登録専門家です

プロのおすすめするコラム

コラム一覧に戻る

プロのインタビューを読む

葬送・お墓・供養にまつわる悩みを解消する終活のプロ

佐々木博一プロへの仕事の相談・依頼

仕事の相談・依頼