終活セミナーを終えて
墓じまいという言葉をよく耳にするようになりましたが、「仏壇じまい」という言葉を聞かれたことはありますでしょうか?別に、「供養じまい」と言ったりすることもあるようですが。
墓じまいの相談をさせていただいた時に、仏壇についてお聞きすると、「あっ」と声を出してしまう方が結構いらっしゃいます。
お墓を片付けること、遺骨を改葬されることに意識が集中してしまい、仏壇の存在にまで、頭が回らない方が結構いらっしゃるようです。仕方のないことではありますよね。
お墓を守っていらっしゃる方は、おそらく同時に仏壇もご自宅で管理されているのではないでしょうか。
必ずしも墓じまいをされる時に同時に仏壇じまいをしなければならないということではありませんから、お墓を整理された後、しばらく経ってから仏壇のことを考えても何の問題もありません。ですが、墓じまいをされる理由がお墓の承継者の不在が理由になっているのであれば、いずれは仏壇も処分することになる可能性が高いわけですので、墓じまいをお考えの時には、仏壇のことについても考える必要があるといえます。
ここでちょっと、宗教的な考え方をお話したいと思います。
中国で生まれた道教という宗教があります。この道教の考え方では、魂(こん)と魄(はく)という二つの異なる存在があると考えられ、魂は精神を支える気、魄は肉体を支える気を指しているとされ、魂は陽に属して天に帰し、魄は陰に属して地に帰すと考えられていました。
お位牌には精神の魂が宿り、お墓には肉体の魂が宿ると考えられています。
このような宗教的な考え方からも、お墓と位牌は肉体と精神のそれぞれが宿る場所と考えられていた為、切っても切り離せない存在であることが分かると思います。
なので、同時に行う必要はないと思いますが、墓じまいを考える時には、仏壇(位牌)じまいについても考えておく必要があるように思います。
墓じまいを考えられる時に、仏壇のことをうっかり忘れてしまったりすることには、こんな理由があるように思います。お墓は、墓地という特別な場所にあり、墓地は返納しなければならない、墓石の解体は業者に依頼しなければできないし、遺骨を改葬しなければならない、などの日常とはかけ離れた様々なことを考え行わなければならない為、仏壇はついうっかり、ということになってしまうことが起きてしまったりするのですね。
確かに、お墓に比べると仏壇は家の中に置いてあることが普通ですので、日常的に接していることも多く特別なモノという意識は薄いのかもしれません。
繰り返しになりますが、お墓をどうするのか、ということを考えるうえで仏壇についても一緒に考えておく必要があると思います。
仮に墓じまいと仏壇じまいを一緒に行った時のメリットは何かあるのでしょうか。
大きなメリットではないかもしれませんが、位牌(仏像)からも魂抜きということを住職に依頼してやっていただく必要があります。お墓と一緒にやっていただくことで、2回行わず、1回で済む、またお布施も2回お渡しするよりも、まとめて1回にすることで、金額的に若干お得になるかもしれません。
それでは、具体的に仏壇はどのように処分、片付けを行うのか。
最初に行うことは魂抜きです。これは菩提寺の住職に依頼してください。
では、何から魂を抜くのか?それは、位牌または仏像(掛け軸)になります。お寺や住職、宗教宗派によって異なることがありますので、菩提寺の住職にここは聞いて確認してください。
ではいよいよ物理的なモノの処分になりますが、仏壇の構成を大きく三つに分類します。
①仏壇本体
②仏具類
③仏像・掛け軸・お位牌
この①の仏壇本体は大きさやデザインなども様々あると思いますが、法律上は一般廃棄物という扱いになります。つまりは、解体して燃えるゴミとして出す、またはそのまま粗大ごみとして扱われます。ごみの収集場に出すということになりますね。
この場合、ご近所の目が気になる、気持ちの上で罪悪感のようなものを感じる方もいらっしゃいます。そういう方は費用も若干かかりますが仏壇の販売店や生前整理の専門業者などに相談して引き取っていただくこともできます。
続いては②の仏具類ですが、これも宗教宗派、地域性によって多様にあります。また仏具の素材も、木だけではなく、金属や陶器でできている物も数多くありますよね。
一般的に仏具と言ってポピュラーな物は、線香立て、ローソク立て、高月、花瓶、お膳、火消し、リン(鐘)リン棒などでしょうか。
これら仏具類も法律上は仏壇同様に一般廃棄物となりますので、可燃物の分別をした上でごみとして処分可能です。これも仏壇同様に業者に依頼することも可能です。
そして最後に③の仏像・掛け軸・お位牌ですが、魂抜きをした後で菩提寺の住職に依頼をして、お寺に置いてくることを一番にお薦めします。
お寺で預かった仏像やお位牌は、決まった日などにお経を唱えて、(又は唱えながら)燃やします。焼却処分するという形をとります。これをお焚き上げといいます。
お位牌に限っては、親族や身内の方が、供養だけでも続けたいからという理由で、お位牌を引き取りたいというケースもまれにあるようです。その時は感謝の思いで、お渡ししていただければ良いと思います。
ちなみにですが、仏像や掛け軸、お位牌などは素材としては可燃物となるものが多いので、燃えるごみとして処分することは可能ではあります。
ですがやはり今まで手を掌わせてきた対象であり、魂が入っていたものだという認識があると、ごみとして出すのには正直抵抗があります。
今までお世話になってきた菩提寺でお焚き上げをしていただく。菩提寺でお焚き上げを行っていない時には、仏壇の販売店や整理業者(生前整理・遺品整理)などに相談してみると、お焚き上げをしてくれる寺院を紹介してくれたり、直接持って行ってくれる業者もあるようですので、ぜひ相談してみて下さいね。
墓じまいや仏壇じまいは、先祖供養をしたくても今後できない、また困難だと思われる方にとって、別の供養の方法で今後供養をするため、お寺などの第三者に先祖供養を託すため、親類縁者に迷惑をかけないため、そしてご先祖様を無縁仏にしないための、ある意味通過儀礼のようなことなのかもしれませんね。
お墓総合サポートサービス http://ohakasupport.com/