海洋散骨は違法?それとも合法?

佐々木博一

佐々木博一

「海洋散骨をしたいと思っているのですが、散骨って違法なのですか?親戚から法律上ダメなんじゃないか、と言われたのですが…。

海洋散骨のご相談やご依頼を受ける際に、時々こんなことを聞かれます。

テレビを見ていると、散骨に関する内容が放送されていたり、ドラマの場面に出てきたり、ネット上では堂々と散骨事業者が宣伝したりしています。
また、芸能人が遺言で散骨を希望して、実際に散骨をしたという報道も耳にする機会もありますよね。

では、実際には違法なのでしょうか?それとも合法なのでしょうか?
違法ならこれだけいろんなメディアに取り上げられたり、散骨事業者や散骨する方が増えるはずはありませんよね。
でも一方では、法律上はどうなのだろう?と疑問をお持ちになっている方が多いのも事実です。

それぞれの立場や考え方で意見は違うとは思いますが、私の見解はこうです。
『どちらでもない』というのが私の考えです。

そもそも違法とは、法に違反することです。合法とは法規にかなっていることです。
散骨は、法に違反しているのか、それとも法規にかなっているのか、どちらでしょう?

どちらでもないのです。なぜなら、散骨の行為について明記してある法律そのものが、現在は存在していないのです。
そして、散骨事業者においても、法令などで定められた資格や免許はありません。

実は、日本での散骨そのものの歴史は、結構古いのです。古くは「万葉集」にも散骨について詠まれた歌の記述もあるくらいです。ですが、実際には土葬や火葬が奨励され、地中に埋葬する文化ができあがりました。

では、近代社会の日本ではいつ頃から散骨をするようになったのか。
1991年10月に「葬送の自由をすすめる会」が神奈川県相模灘沖で海洋散骨を行い、それが話題となり、全国に広まっていったと言われています。

この全国に広がりを見せるのと同時に、散骨についての賛否の意見が多く出るようになってきました。

賛同する意見の多くは、「海という大自然に還る方法でもあり、後を見る家族がいない人や、家族に余計な負担をかけたくないと思っている人にとっては、最善の方法だと思う。」

否定する意見の多くは、遺骨を砕く行為に違和感をおぼえ、拝む対象のお墓がないことも、「今後の供養のあり方に疑問を感じる、法的にはどうなのだ。」

聞いていると、確かにどちらも正論のように思えます。

そこで、法律に確認をするというところまで行きつきました。
この時に法律の解釈の判断を求められた法律は二つあります。

ひとつ目は、『墓地、埋葬等に関する法律 第四条一項』(以下墓埋法)の
「埋葬又は焼骨の埋蔵は墓地以外の区域に、これを行ってはならない。」の条文です。
つまり、散骨のように海に遺骨を撒くのは、「墓地以外の区域」にあたるのでは。ということです。

これについて、厚生労働省は「墓埋法は散骨のような葬送の方法については想定しておらず、法の対象外で禁じているわけではない。」との見解を示しました。

解説すると、墓埋法では、土中への埋葬について述べたもので、散骨のような方法の想定はしていない。なので、法律の対象外になるので、散骨を禁じているわけではない。
ということのようです。

ふたつ目は、『刑法 百九十条』の
「死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、破棄し、又は、領得した者は、三年以下の懲役に処する。」という条文です。

散骨するためには、遺骨をパウダー状に粉骨する必要があります。この粉骨する行為は、損壊にあたるのではないか、海に遺骨を撒く行為は、破棄にあたるのではないか。という解釈の様です。

これに対して、法務省刑事局は「この規定は社会的風俗としての宗教的感情を保護するのが目的だから、葬送のための祭祀を、節度をもって行われる限り問題ない。」と見解を示しました。

このふたつの見解が示され、結果、法的には問題がない。という判断に至りました。
そして現在のように海洋散骨がオープンに行われるようになってきたのです。

ですが、宗教的な観点や、供養の継続、感情的な部分では、疑問を感じたり、異を唱える方もまだまだいるのも現実です。

散骨に関する法律は未だありませんが、これだけ散骨が全国に広まってくると、ルールも何もないというのも問題です。

そこで、一般社団法人日本海洋散骨協会とう団体が海洋散骨についてのガイドラインを作って、散骨事業者はそれに則って散骨を行っていることが多いようです。

そのガイドラインを一部紹介します。
・独自に散骨に関する条例を定めた自治体にはその内容に従うこと。
・遺骨を散骨するには、直径2ミリ以下の粉末にすること。
・遺骨以外の不純物は取り除くこと(入れ歯や眼鏡など)。
・岸から2km以上離れた海上で行うこと。
・航路、漁場、海水浴場を避けること。
・他の船舶の進路を妨げてはならない。
・遺灰と共に散布する物は、花などの海中で分解しやすいものを適量とし、ビニール、アルミホイル、プラスチックなどは避けること。

以上のようなガイドラインを遵守して散骨は行われています。

自治体でも、海洋散骨について、条例で禁止している自治体はありません。ただ、ガイドライン、指針といった形で散骨事業者に対しての方針を示している自治体はあります。
(熱海市や伊東市など)

このように、条例で禁止されず、指針を守って行うことを前提として散骨が行われるのは、それだけ、希望者や実際に行われる機会がふえてきているからなのではないでしょうか。

益々、海洋散骨が全国で行われるようになると、それに伴って法律ができる日も遠くないのかもしれません。

いずれにしても、海洋散骨をお考えの際には、ガイドラインを遵守して節度とマナーを守る、実績のある散骨事業者を選ぶことが大切なのだと思います。

海洋散骨って知ってますか? https://youtu.be/tyMhQb3XGvM
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