終活セミナーを終えて
ここ数年、お墓に関するご相談で最も多くなってきている内容は、墓じまいに関する内容です。
費用について、手続きや手順について、墓じまい後のお遺骨の対応についてなど。
これらのご相談のほとんどは、これから墓じまいをしようとお考えの方からのご相談です。
ですが、最近は墓じまいの最中や、墓じまいが終わってからご相談に来られる方が見受けられるようになりました。
ご相談の詳細は人さまざまですが、つまりは、トラブルが発生して作業が進められない、トラブルが原因で料金の支払いができていない等、トラブルが原因で作業やお支払いに支障がでたり、人間関係がおかしくなってきたり、今後どのように進めていったらいいのか、このまま進めてもいいものなのか、悩んだ末にご相談に来られる方がいらっしゃいます。
そこで今回は、墓じまいでよくあるトラブルのご紹介と、トラブルにならない為には事前に何をしておいたらいいのか、ということについてお話させていただきます。
このトラブルですが、必ず「相手」がいます。この「相手」とは、『身内・親族』『菩提寺』『業者(石材店など)』の三者のケースがほとんどです。
では、どういったケースで誰がトラブルの相手となっているのか、私が経験し、お話を伺った実例を交えながらお伝えしていきたいと思います。
それでは最初に、『身内・親族』が関係するトラブルについてお話します。トラブルが生じてしまうと、後々までしこりが残ることが多いようなので、最初に取り上げたいと思います。
では、実際に住職から聞いたトラブルになった実例をご紹介いたします。
ある時、手桶と供花を持った女性の方が住職を訪ねて来たそうです。
その女性は「○○家のお墓が無くなっている。和尚様どこにいったのですか。お墓参りに来てみたら無くなっていた。」と興奮気味に強い口調で訊ねてきたそうです。
住職はどこのお墓のことを言っているのか困惑して、その女性からその墓地まで案内してもらったそうです。
墓地を見て住職はすぐにどこの家のお墓か思い出し「ここのお墓なら墓じまいされましたよ。」と伝えたところ、その女性は「私はここの娘です。墓じまいのことなんて聞いてない。私の両親や祖父母の遺骨はどこにあるのですか。」と怒りをあらわにしたそうです。
よくよく事情を聞いてみると、その女性は、兄、自分、妹の三人兄妹で、兄がお墓を守っていた。妹は結婚し地方で暮らしている。自分も結婚しているが地元で暮らしていて、命日やお盆など妹の分も併せて時々お墓参りにきていた、とのことでした。
兄は離婚をして、子供がいなかったから、墓じまいは考えられることではあるが、一言の連絡も、うけていないとのこと。後日、妹に確認したら、妹も全く知らなかったらしい。お墓以外にも仏壇やお位牌も供養してお焚き上げをしていたそうです。
この実例の結末はどうなったのか。
仏壇が無くなった為、姉妹は実家に行くことが無くなり、お墓参りもできなくなったため、兄とは喧嘩になりその後は実家に行くことは全くなくなってしまったそうです。
極端な実例かもしれませんが、こんなことが本当に起きているのです。
では、逆にトラブルにならなかった実例です。
ある老夫婦がご相談に来られました。こちらの方々も墓じまいについてのご相談でした。
「30年ほど前に墓石を建てました。仏様はなかったけれど、将来の自分たちのためにと思いお墓を建てました。現在も仏様は入っていません。一人娘を県外に嫁に出したので、将来お墓をみる人がいません。墓じまいをして、自分たちは永代供養にでも、と考えています。永代供養をしているお寺を教えてほしい。」というご相談でした。
もちろん、永代供養についての情報は提供させていただきましたが、私からひとつ質問をさせていただきました。
それは、「娘さんに墓じまいのことや、今後のお考えについては、お話されていますか。」
答えは、「話していません。墓じまいしてから話そうと思っています。」とのことでした。
なぜ、まだ話していないのか訊ねてみると、「話しをしたところで、みてもらえるわけじゃないだろうし、縁起でもないから話しにくい。」とのお答えでした。
そのお気持ち、ものすご~く分かります。そうお考えになる方はとても多いのではないでしょうか。
私は老夫婦にこう伝えました。「墓じまいはいつでもできますから、まず私に話したように娘さんに気持ちを伝えてみて下さい。」それで老夫婦は帰られました。
その年のお盆が過ぎた頃、この老夫婦から連絡をいただきました。
その時のお話は、「墓じまいをすることにしました。お盆に娘夫婦が帰省した際に気持ちを伝えました。娘の嫁いだ先のお墓の敷地内に私たち夫婦を埋葬してくれることになりました。安心して墓じまいができます。話してよかった。」と弾んだ声で話されました。
実は、娘夫婦の間でも老夫婦が亡くなった後のことについて話をされていたようでした。
ですが、娘から両親の死について話を切り出すことについて抵抗があった。
でもその時が来たら、嫁ぎ先の墓地の敷地内に埋葬してあげたいと、嫁ぎ先のご両親からも了解を得ていたのだそうです。
これもまた、極端な実例かもしれませんが、実際にあったお話です。
ふたつの実例を紹介いたしましたが、もうお気づきでしょうか。
一方は、身内の方に何も報告も相談もせず墓じまいを行いました。
もう一方は事前に身内の方に思いを伝えてから墓じまいを行いました。
トラブルを未然に防ぐ方法は、事前にお墓や埋葬されている仏様に関係があるであろう『身内・親族』の方々に報告、相談、連絡をすること。これに尽きると思います。
一度こういったトラブルが発生してしまうと、お互いに感情的になってしまい、今後のおつきあいに大きな障害となってしまいます。
お墓を今後どう守っていくか、守っていけなければどう対処するのか。その決定権は、お墓を守っている方が最終的に決めることになりますし、また決めて良いことだと思います。
ただ、決めて良いことではあっても、埋葬されている仏様の親族にしてみれば、供養の対象であるお墓の存在が失われることに抵抗を感じる方も確かにいらっしゃいます。
じゃぁ、墓守をしている方に代わって誰か墓守をしてくれるのか、お遺骨は誰が引き取ってくれるのか、その後の管理は?ほとんどのケースでは、自分がやる!と手を挙げてくれるケースは、まずありません。あったとしたら超レアケースだと思ってもよいでしょう。
なので、最終的に墓じまいをする方向で同意が得られることがほとんどです。
ただ、いつ頃墓じまいをするのか、その後のお遺骨はどんな形の供養(永代供養・海洋散骨・樹木葬など)をするのかなど、親族の方から意見がでることもありますので、そこは皆さんの今後の対応を聞きながら判断しても良いと思います。
また、事前に相談することによって、かかる費用の一部を負担してくれる、見積や当日の行動に協力してくれるなどの支援もいただけることもあるようです。
墓じまいを自分だけで決めて進めるより、報告、相談、連絡だけでもすることによって、トラブルを生じさせないだけではなく、親族と一緒になって、先祖供養ができたという、満足感を得られると同時に親族との円満な関係を築くことにも繋がるのではないかと思います。
これから墓じまいをお考えの皆様、よろしければ参考にしていただき、『身内・親族』の方々とトラブルになりませんように進めていただけたら幸いです。
次回は、『菩提寺』『業者』編についてお話したいと思います。
「墓じまい」ってどうしたらいいの? https://youtu.be/Toz52JX5BDQ
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