「スマホ禁止」で育つデジタル市民? 〜使わせないことが、本当に守ること?〜

大江香織

大江香織

テーマ:デジタル・シティズンシップ

「うちはスマホ禁止です」
「まだ早いから、持たせないつもりです」
保護者の方からそう聞くことは珍しくありません。先生方からも周囲のママ友からも聞くことがあります。

トラブルに巻き込まれるニュースを見れば、当然の判断です。
実際、小学生の間でのSNSトラブル、誹謗中傷、ゲーム依存――心配になるような出来事はたくさん起きています。
だからこそ、「使わせない」という選択が「守ること」だと思いたくなりますね。

でも、ここで少し立ち止まって考えてみませんか?
スマホを持たないまま成長した子は、スマホを正しく使えるようになるでしょうか?

現実には、子どもたちは中学生・高校生になると、遅かれ早かれスマホに触れることになります。
そして「スマホ禁止」の家庭では、「親の目がないところ」で使うようになるのです。
その結果、「初めての自由」が一気に押し寄せ、ルールも感覚も持たないまま、大きなトラブルに巻き込まれることも少なくありません。

ICT支援員として、学校現場を見ていて感じるのは、「スマホ禁止」の結果、「学ぶ機会のないまま大人になる」ことの方がリスクだということです。

ある学校では、小学生のうちに「安全な使い方」「困ったときの相談先」「ネット上での言葉の責任」を学ぶプログラムを組んでいます。
端末の使い方そのものよりも、「どう付き合うか」を考える力=デジタル・シティズンシップの力のうちの一つ、を育てることを重視しているのです。
大人の目のあるところで、小さなトラブルを「みんなでどうすればいいか考える」訓練を積むことが、適切なリテラシーを育成します。
炎上事件が起こるたびに「どうして」と思う方も少なくないでしょうけれど、「突然手に入れた自由」「普段何を投稿しても反応されないから何を投稿しても見られることはない」という誤った学習など、スマホは「力の増幅器」であるという自覚が育成されないまま使っていることが一因だとも考えられます。

家庭でも、ルールを作るだけでなく、「なんでこのアプリが気になるの?」「使うとどんな気分になる?」と親子で話す時間をつくることが大切です。
「禁止」ではなく、「一緒に考える」ことが、信頼と理解の土台になります。

もちろん、年齢や発達段階によって判断は異なります。
ですが、「見せない・触らせない」という選択を続けるだけでは、子どもたちは「考える力」を育てるチャンスを失ってしまうのです。

これからの社会を生きる子どもたちに必要なのは、「スマホから離れて育つこと」ではなく、
「スマホとどう向き合うか」を学びながら育つことだと思いませんか?

ハイパーブレインでは、ご要望に応じて保護者対象の研修も承っています。お気軽にお問い合わせください。

リンクをコピーしました

Mybestpro Members

大江香織
専門家

大江香織(教育情報化コーディネータ)

株式会社ハイパーブレイン

教育用AIチャットボットや、教育委員会と学校の情報共有をスムーズにするダッシュボードなどのICTツール開発。教師本来の業務である授業の充実や子どもとの触れ合いに専念できるようサポートします。

関連するコラム

プロのおすすめするコラム

コラムテーマ

コラム一覧に戻る

プロのインタビューを読む

学校教育のICT支援で子どもが笑顔で学ぶ環境を創出する専門家

  1. マイベストプロ TOP
  2. マイベストプロ愛知
  3. 愛知のビジネス
  4. 愛知のシステム開発・業務システム
  5. 大江香織
  6. コラム一覧
  7. 「スマホ禁止」で育つデジタル市民? 〜使わせないことが、本当に守ること?〜

大江香織プロへの仕事の相談・依頼

仕事の相談・依頼